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http://www.nikkei-science.com/page/magazine/1001/201001_022.html
温暖化ガスの排出を削減する最も効果的な手段は,化石燃料からクリーンな再生可能エネルギーへの大規模なシフトだろう。風(wind)と水(water)と太陽光(sunlight)の「WWS」によって,化石燃料の利用を全廃することが可能だ。世界の全エネルギーを2030年までにWWS によって供給するにはどうすればよいか,以下に私たちの計画を示す。 米エネルギー情報局(EIA)によれば,現在,ある瞬間に全世界で同時に消費されているエネルギーは最大で約12.5テラワット(TW:1TWは1兆ワット=10億kW)だ。そして世界的な人口増と生活水準の向上に伴い2030年には世界で16.9TWのエネルギーが必要になるとみている。これはエネルギー源が現在と同じく化石燃料に大きく依存している場合の予測だ。 しかし,世界が化石燃料やバイオマスを燃やさずに全エネルギーをWWSに求めた場合には,興味深い節減効果が生じるだろう。世界のエネルギー需要は 11.5TWですむ。電化によってほとんどの場合,エネルギーの利用効率が上がるからだ。 世界需要が16.9TWに増えたとしても,WWS資源はそれをはるかに上回るエネルギーを供給できるだろう。風力は全世界で約1700TW,太陽光は 6500TWに上ることがわかっている。もちろん,外洋や高山,自然保護地域などでは風力や太陽光は利用できないだろう。しかし,これらと風力開発に向かない弱風地域を差し引いても,40〜85TWの風力と580TWの太陽光エネルギーが残る。いずれも将来の人類のエネルギー需要をはるかに上回る量だ。なのに現在の風力発電はわずか0.02TW,太陽エネルギー発電はたったの0.008TWだ。これらはとてつもなく巨大な未利用エネルギー資源といえる。 では,世界に11.5TWを供給する新基盤へとどのようにして移行するか? 私たちの計画では,風力と太陽光に重点を置きつつ,技術的に成熟した水力関連によって需要の約9%をまかなう組み合わせを選んだ。 電力の51%は風力で供給する。世界に設けた380万基の大型風力タービン(各5MW)による発電だ。380万基という数は莫大に聞こえるかもしれないが,乗用車と小型トラックが世界で毎年7300万台も作られていることを考えてみよう。 もう40%は太陽光発電と太陽熱発電が供給し,太陽光発電の30%は一般家屋やビルの屋上に設置した太陽電池パネルによる。集中的な太陽光発電所と太陽熱発電所(いずれも出力は平均300MW)が合わせて8万9000カ所必要になるだろう。このほか世界で900カ所の水力発電所が必要だが,その70%はすでに存在し稼働中だ。 こうした大規模な発電インフラを築くには時間がかかるだろう。しかし,電力量あたりの発電・送電コストは,化石燃料や原子力に頼った場合に比べて安くなる。そして,化石燃料に固執した場合,2030年の需要16.9TWをまかなうために約1万3000の大型石炭火力発電所の新設が必要となることを忘れてはいけない。 最大の障壁は,いくつかの特殊金属材料の不足と,政治的意思の欠如だ。賢明な政策をもってすれば,各国は10〜15年後に新規エネルギー供給の25%を,20〜30年後にはほぼ100%をWWSでまかなうという目標を設定可能だろう。極めて果敢な政策を取れば,同様の期間で既存の化石燃料をすべて再生可能エネルギーに置き換えることも理論的に可能だ。より穏当で実現見通しの高い政策を取った場合,全面置き換えには40〜50年かかるだろう。いずれにしろ明確なリーダーシップが必要だ。
原題名 |