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Vol.11 地球温暖化防止に向け炭の機能に新たな期待(毎日新聞)
http://www.asyura2.com/09/nature4/msg/229.html
投稿者 賢者の石 日時 2009 年 10 月 20 日 02:59:29: Qf5ShLuWtoZHs
 

http://mainichi.jp/life/ecology/myeco/report/
(リンク先に画像有)

ゴルフ場の土壌改良などにさかんに活用されたものの、最近は需要が下り坂の炭に、新たな期待が寄せられています。炭の二酸化炭素(CO2)の固定機能を実証し、温室効果ガス削減による地球温暖化防止と農作物の増収に役立てようと、農林水産省の初のモデル事業で、農家も参加した実証実験が各地で始まりました。一方で、二酸化炭素の排出権取引の仕組みづくりまで視野に入れ、研究者や企業が普及組織を設立するなど炭の機能に注目した動きも広がっています。【文と写真・山本悟】

予備実験の畑で、炭入り堆肥を施用した場所一面に広がるカボチャ=あきる野市五日市で

 ◇炭と堆肥を混ぜて微生物の増殖効果を実験

直径25センチを超える青々とした丸葉が、重なり合うように広がるカボチャ畑。足を踏み入れると、スズメやバッタが一斉に飛び立ちます。東京都あきる野市五日市の小庄地区。川べりの、この畑はほぼ収穫を終えていましたが、カボチャのツルは川岸に向かって勢いよく伸び、葉を茂らせていました。

「炭と堆肥(たいひ)による微生物効果が十分現れていると思う」。炭の新しい用途と大量に使う方法について研究する吉澤秀治・明星大教授(エコマテリアル学)は満足そうです。堆肥メーカーとともに同市の農家からこの畑(約500平方メートル)を借り、炭と堆肥を混ぜて微生物の増殖効果を調べる予備実験を4月から共同で実施。農家や行政などが参加して実際に農地を使って10月から本格実施する実証実験に備えています。

吉澤教授によると、多孔質の炭は、微細な穴の表面に水分や化学物質などが付着するため吸湿・吸着性能が高いといいます。自身の実験では、炭と米ぬか、微生物を混合し2週間置いて観察した結果、炭の穴の表面で菌や微生物が付着、増殖しているのが確認されました。

水はけの悪い畑や田んぼは、腐敗菌などの嫌気性菌が増えて、温室効果機能が強いメタンガスが発生します。そこに通気性に優れる炭を堆肥と混ぜて投入すると、好気性菌が増殖し、メタンガスの発生を抑えられるほか、炭や堆肥自体が二酸化炭素を炭素に換えて固定しているため、温室効果ガスの削減に役立つと予想されます。

予備実験では、食品廃棄物に粉炭を混ぜて堆肥にした炭入り堆肥を用意。山側から川に向かって畑を5区画に分け、山側の区画から順番に炭入り堆肥の量を少しずつ減らして土に混ぜ、川に一番近い区画には何も混ぜませんでした。

炭入り堆肥を混ぜた山側のトウモロコシ(写真上)と何も混ぜなかった川側のトウモロコシ(同下)。幹や葉の茂り具合の差が顕著だ=明星大吉澤研究室提供 そこへ、カボチャとサトイモ、トウモロコシの3種類の苗を、それぞれ5区画を横断する形で列状に植えました。その結果、8月下旬には、炭入り堆肥が一番多い山側の区画は全面にカボチャのツルと葉が広がり、川の方向に伸びて畑全体を覆う勢いでした。なかでもトウモロコシは顕著で、山側と川側の両区画では、成長度合いに大きな差が生じ、豊作だった山側では、30を超える大物が収穫できました。

微生物の繁殖濃度を示すアデノシン三リン酸(ATP)濃度については、実験開始から1カ月後、山側の区画では川側の約50倍の数値を示し、「炭入り堆肥の量が多くなるに従って、微生物が増殖すると考えられる」(吉澤教授)といいます。

協議会の設立総会では農家などから積極的な発言が目立った=あきる野市内で 

◇五日市炭素貯留協議会が実施母体に

実証実験の開始を10月に控え、あきる野市で9月10日、実験の実施母体の総会が開かれました。その名も「五日市炭素貯留協議会(代表・吉澤教授)」。同市環境農政部や農家3戸、JAあきがわの代表をはじめ、関連研究機関などから計12人が参加しました。

実証実験は、1カ所5アールずつで計3カ所(計15アール)の各農地を(1)化学肥料の慣行栽培(2)堆肥投入(3)炭入り堆肥投入−−  に分け、3年間に渡って、土壌分析や温室効果ガスの測定、炭素、窒素の定量測定を行うほか、栽培の収益性、労働時間などを調べます。

実証実験にかける総会参加者の期待も大きく、「周辺のヤマも荒れているので、間伐材を炭にして使えばいい」「市の給食センターの生ごみを堆肥にして使えないだろうか」などの提案が出されました。

表土が流出し荒廃した人工林。地球温暖化防止策として、間伐推進が叫ばれている=三重県内で 

◇農水省が初のモデル事業をスタート農家の土づくりを応援

農水省は、農地に固定される炭素について実証する初のモデル事業を今年度からスタート。五日市炭素貯留協議会も採択団体の一つです。土壌のほか、炭も二酸化炭素を固定していますが、「炭の先進国」である日本でさえ、炭や農地の炭素固定機能についての実証データがありません。

そこで、二酸化炭素を中心に、土壌がもつ温室効果ガスの削減効果や農作物の増収など営農効果について、実際に効果の有無や経年変化などを3年間の実験で明らかにするのが、モデル事業の狙いです。同省は効果を実証し、森林など温室効果ガスの吸収源として農地が認められるよう、各実験の成果に期待します。

モデル事業には、これまで全国8カ所の団体が採択され、さらに8団体が申請中。いずれも、堆肥、炭、土壌改良資材などを組み合わせた実験で、採択団体の一部ではすでに実施しています。採択8団体のうち、木炭を活用するのが半数を占め、炭の注目度が高いと言えます。

炭のほか堆肥も二酸化炭素を固定していますが、一方、土壌中で堆肥の有機物が微生物によって分解される際に、逆に温室効果ガスが発生、空気中に放出されます。この発生量を測定するのは高度な技術と分析を要することから、炭入り堆肥の微生物の増殖効果について実験するのは、同協議会だけです。

同省農業環境対策課によると、農地をはじめ耕作、資材運搬の機械やチェーンソーなど農林業全体の温室効果ガスは国内排出量の4%を占め、他産業と同様に排出源となっています。しかし、森林など吸収源も抱えていることを同課は強調しています。

炭入り堆肥の活用については、炭も堆肥も日本は先進国だけに、注目が集まります。同課は「温室効果ガス削減など、栽培のほかにも土壌は高い公益性をもっている。この点を実証し、農家が改めて土づくりに励んでもらえるよう取り組みたい」と話しています。


小川真さん 

◇民間普及組織が発足、国際的な研究集会も

一方、民間でも炭の新たな機能に注目した動きが広がり始め、日本バイオ炭普及会(会長、小川真・大阪工業大客員教授)が4月に発足しました。研究者や企業、炭焼きの関連団体などが参加し、現在、会員は220の団体と個人。炭の効能に関する実証データを集めて研究を進め、農業の生産性向上と地球温暖化対策に役立てます。

バイオ炭とは、生物資源を材料にした炭化物のことです。小川会長によると、欧米で炭が注目され出したのは約10年前。ブラジルのアマゾン川流域で、かつて原住民の繁栄を支えた「テラプレタ(黒い土)」が炭化物を多く含むことが判明しました。同時期に、ユーカリの天然木伐採と地下水のくみ上げで農地の塩害が深刻だったオーストラリアの西部地域で、小川会長がワラやもみ殻の炭化物を農地に投入し成果を挙げました。

アメリカとフランスで04年、炭の農業利用に関する研究集会が開かれました。各国の研究者が集まった国際的な研究集会も07年にオーストラリア、08年はイギリスで開催。世界的な広がりは、トウモロコシの芯やもみ殻、農業廃材など各国が大量の余剰資源の有効利用に迫られていたことが背景にあります。

「炭の先進国」の日本が世界に後れを取らないよう、小川会長や吉澤教授らが普及会の設立発起人となりました。

二酸化炭素を元々固定している炭と堆肥によって微生物が増殖し、農作物の増収とともにメタンガスの発生を抑えることが実証されれば、「化石燃料によって製造された化学肥料の使用を控えることにもなり、より温室効果ガス削減になる」と小川会長は注目しています。

普及会は将来的には、実証データをそろえ、炭による温室効果ガスの排出権取引のシステムづくりについても政府に働きかけていく予定です。

斜面にたまった間伐材を運ぶ時ノ寿の森クラブの会員。間伐材の木炭に新たな需要が期待される=静岡県掛川市で 

◇粉炭と腐葉土でポット苗づくり

農作物のほか、樹木についても、炭の微生物効果に対する試みがスタート。毎日新聞の「つながる森づくりプロジェクト」を推進し、間伐に取り組む「時ノ寿の森クラブ」(静岡県掛川市)が8月、粉炭と腐葉土を混ぜたポット苗づくりの実験を始めました。

実験は、間伐材を自ら焼いた炭を使い、自然再生事業に取り組む造園会社の吉野知明さん(学術博士)と共同で実施。地元で採取したアカガシとウラジオガシの実生苗計200本を、人工林の土(40%)と川沿いの腐葉土(50%)、粉炭(10%)を混ぜたポットに植えました。

間伐材を焼いた炭を袋詰めする時ノ寿の森クラブの会員たち=静岡県掛川市で

苗木を人工林の間伐跡に植樹するまでの2年間、苗木の成長具合や微生物の繁殖の様子を調べます。
 

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