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http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0909/200909_060.html
C. A. ドリスコル(オックスフォード大学/米国立がん研究所) J. クラットン=ブロック(大英自然史博物館) A. C. キチナー(スコットランド国立博物館) S. J. オブライエン(米国立がん研究所) ネコ(イエネコ)の魅力は,クールでいて人懐こい性格,かわいらしい顔立ち,しなやかな体型……など,いくらでもありそうだ。ところが,人間の生活の役に立っているかと言われると,そうとは言い難い。人間がほかの有用な動物を家畜として飼いならしてきた理由は理解できても,ネコをペットにした理由については首をかしげてしまう。どうしてネコは私たち人間と生活をともにするようになったのだろうか。 ネコをペットとして最初に飼い始めたのは,約3600年前の古代エジプト人だったというのが長い間研究者の通説だった。確かにエジプトには人間とネコとの深い関係を示す証拠がたくさんある。絵画にネコが頻繁に描かれているだけでなく,「バステト女神」として崇められてもいた。 一方,生物学的なルーツについては,イエネコの祖先はヤマネコ(Felis silvestris)にあると疑われていたものの,確かな証拠もなかった。 そこで,イエネコのルーツを明らかにしようと試みたのは,著者の1人ドリスコルだ。ドリスコルはオブライエン(著者の1人)らとともに,アフリカとユーラシア中の合計1000匹近いヤマネコとイエネコからDNAを集めて系統樹を作成し,すべてのイエネコが中東にすむリビアヤマネコ(F. s. lybica)から進化したことを明らかにした。 この結果は考古学的な資料からも裏打ちされている。地中海に浮かぶキプロス島で,約9500年前の墓に成人とネコが一緒に埋葬されているのが見つかっている。地中海のほとんどの島に野生のネコはいないので,このネコは近くの地中海東部の沿岸地方から人間によって運ばれてきたことになる。 すると1つのシナリオが見えてくる。約1万年前,地中海の東,メソポタミア周辺の地域で人類が農耕と定住生活を始めた頃,ネコはそこで人間に飼いならされたようだ。おそらく最初は穀物貯蔵庫に現れるネズミに引きよせられ,人間の居住地周辺にすみ始めたと思われる。 そして,農耕がエジプトなど世界各地に広がっていくと,イエネコもまた世界へ広がっていった。ある時はローマ帝国の拡大に伴いローマ人とともにヨーロッパへ,またある時は大航海時代の船乗りとともに新大陸へと渡っていった。イエネコは人間とともに歴史を歩み,世界を旅してきたのだ。
ドリスコルはオックスフォード大学野生動物保護研究ユニットと米国立がん研究所(NCI)のゲノム多様性研究室のメンバー。2007年に発表した論文で,DNAに基づいたヤマネコの系統樹を初めて作成し,イエネコの起源を明らかにした。クラットン=ブロックは国際動物考古学会の創立者で,家畜化と初期農耕に関する研究の第一人者として知られる。長年にわたり,大英自然史博物館の哺乳類部門の主任として研究活動を続けてきた。キチナーはスコットランド国立博物館の哺乳類および鳥類分野の主任学芸員。オブライエンはNCIのゲノム多様性研究室の室長で,チーター,ライオン,オランウータン,パンダ,ザトウクジラ,エイズウイルスの遺伝学を研究してきた。これまでSCIENTIFIC AMERICANに,この記事を含めて5編の記事を執筆した。 |
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