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拙ブログより転載
2009年2月10日(火)PM20時を回った頃
東京、築地の某老舗料亭の一室
こういう場所には、似つかわしくない一人の男が、胡坐をかいて貧乏ゆすりをしながら約束の相手を待っていた。
外資系企業の上級社員のように、如何にも派手で高価そうなブランド製の背広を着ていた。
顔は真っ黒にゴルフ焼けして、眼はぎょろりとして眼光鋭かった。
年の頃は50歳前後に見えたが、見るからに引き締まった体躯で、腹も出ていなかった。
せっかちそうな目で、何度も腕時計を確認した。
約束の時間は、7時30分である、もう30分以上オーバーしていた。
男は、ゴールドマンサックス証券東京支社長の持山昌典であった。
ワイドショーには決して出演しないので、知名度は全国区ではないが、その正体は、
小泉構造改革以来、泣く子も黙るハゲタカファンドの英雄であり、金融界のみならず政財界では知らぬ者のない超有名人である。
持山は、幼稚舎(慶応の付属小学校)からの慶応ボーイで大学時代は慶應ラグビー部の副将として鳴らした。
慶應大学経済学部を卒業後、第一勧業銀行に入行したが、東大出でなければ出世できない都市銀行に見切りをつけて、当時はまだマイナーだったゴールドマンサックス証券東京支社に転職した。
その後は、ビッグディール(100億以上の取引)を獲得するためには、手段を選ばず、政財界の要人、大蔵省(現財務省)の官僚に夜討朝駆け(ようちあさがけ)して次々と手柄を立てて、あっという間に東京支社のトップまで上り詰めた。
そのビジネス手法は、政官財のあらゆるところに人脈を築き、違法と合法の際どい境界を走り抜けていくアメリカ投資銀行伝統の阿漕な商売であり、週末の土日はすべて、政官財のキーマン達との接待ゴルフに費やすと言った、日本流の“猛烈サラリーマン”を彷彿させるものであった。
彼は言わば、エイリアンとプレデターを合体させたような、米国投資銀行の日本侵攻のための最強の特殊部隊の隊長であった。
既に年収6千万円は軽く超え、北軽井沢には主に接待用の豪華別荘を持ち、小泉政権時代の2006年には横浜に100億円の豪邸を建築したことでも週刊誌を賑わした。
持山が手持無沙汰にipodをいじり始めたときに、襖が開き待たされた相手が部屋に入ってきた。
「待たせてすまなかったね〜」
今、「カンポの宿汚職」で連日国会に呼び出され、すっかり全国的に顔の知られた日本郵政社長の西川善文であった。
持「いえいえ、何か不都合でもあったのですか?」
西「いやいや、最近マスコミの監視が厳しくて・・・おまけに今日は裏口にも写真誌と思しきカメラマンが何人も待ち構えているのが見えたので、運転手に上手くまかせるのに手間取ったんだ。この時期、俺があんたと会っていたとなりゃ、それこそ、恰好のマスコミの餌食になるからな(笑)」
西川は、心なしか痩せて一回り小さくなったような印象を受けた。
持「大部、お痩せになりましたか?」
西「ああ、見ての通りだ。毎日国会に呼び出されて、あの怖い男(鳩山総務大臣)に絞られて生きた心地がしないよ(笑)」
二人が最後に会ったのは、もう4年前の夏、北軽の、持山の別荘での恒例の政財官の大パーティー以来であった。
持「電話以外で直にお会いするのは4年ぶりですね」
西「そうか?もうそんなになるかな〜」
持「あの時は、逮捕される前の村上(注;村上ファンドの村上世彰(よしあき))も堀江(注;ホリエモン)もいて本当に賑やかだっだですね!」
西「ああ、丁度、小泉が郵政選挙で大勝した直後で、あの頃は我が世の春だったよな〜永遠に俺たちの時代が続くと思ったんだが・・・それがたった4年そこらで、こうも急展開するとはな・・・」
二人の間に、しばし沈黙が流れた。
西「ところで、今日の重大な要件って何だ?」
持「実は、“カンポの宿のオリックスへの一括譲渡”の件で、今、アメリカの本社が大変な大騒ぎになってるんですよ・・・」
西「大騒ぎって?」
持「宮内さんから、聞いてませんか?実は、アメリカのポールソンが、例のかんぽの宿の109億円は確実にオリックスに譲渡されると信じて疑わなかったので、もうそれを見越して、アラブ首長国連邦のドバイ投資庁に日本円で100兆円で転売契約を調印しちゃったんですよ。」
西「何だと〜」
西川は驚愕し、凄い形相になった。
持「何でも、年末に宮内さんに念を押したら100%大丈夫だ!との確約貰っていたらしいんです。もう先方から手付金として半額の50兆円を入金してしまったらしくて、お分かりだと思いますが、訴訟社会のアメリカでは、このメガディール(1兆円以上の取引)をゴールドマンのほうのミスでキャンセルするとなったら、違約金、損害賠償金は200兆で済まない恐れがあります。おまけに、先方のアブドラ投資庁長官は、国家予算ですから国会の認可も得ているらしくって、下手をするとアメリカとアラブ首長国連邦の外交問題にさえ発展しかねません。ポールソンは先日、宮内さんと電話で掛け合ったらしいんですが、言ってることがわからない!裏切りやがった!ともう逆上しているんですよ。」
西「それで、君の所に圧力をかけてきたわけか?」
持「そうです!宮内では話にならないから、お前が直接ミスターニシカワと話せ!と言うんです。」
西「君もニュースを見ているからわかるだろう?もうどうにもならないんだよ」
持「鳩山大臣から指示された16日までの入札資料の提出は大丈夫なんですか?」
西「大丈夫なわけないだろう(笑)元々偽装入札なのに(怒)、俺はいま、顧問弁護士とどうやったら逃れられるか相談中なんだ。ポールソンなんか知ったことか(怒)」
持「そんな事を言っていいんですか?奴は、2005年の密約を世界中にバラス!と言ってるんですよ」
西「その時は、その時さ」
西川は開き直った。
持「世間の非難はしょうがないとしても、我々はCIAから消されるかもしれないんですよ!わかってるんですか?」
西「出世と引き換えにアメリカに魂を売った男は、用済みになったら、CIAから消されるんだよ!それくらい君はわかって今までゴールドマンで働いてきたんだろう?それに俺は、住友銀行の支店長時代以来、何度も日本のヤクザに命を狙われて殺されかかっている。1986年からのバブルは我々都市銀行が率先して、暴力団を使って“地上げ”して地価を高騰させたんだ。それを都市銀行の中でもっとも、あこぎなやり方で推進したのが私のいた住友銀行だ。バブルが崩壊したら、情け容赦なく“地上げ屋”達から“貸しはがし”をして彼らを倒産させた。当然連中の恨みを買う。現に1992年に住友銀行の副頭取で名古屋支店長が射殺された事件が起きただろう。真犯人は逮捕されぬまま時効を迎えたがあれは暴力団の住友銀行に対する報復だよ。殺されるなら、CIAでも日本のヤクザでも同じことだ!私は今さら怯えない!!」
西川の腹の据わり方に感心して、持山は説得を諦めた。
持「ハハハ!さすが西川さんだ(笑)脱帽です!説得は諦めましたよ。しゃあね〜な〜
俺もお迎えが来たらお縄を頂戴しようかな。日本の刑務所の中のほうが安全かもしれないし」
持山は、両手を後ろの畳について腹の底から笑った。
相場師だけに、勝ち目がないことを悟ると頭の切り替えが早かった。
持「まあまあ・・折角の再開ですから、一杯やりましょう」
持山は、ビールを西川のグラスに勢いよく注いだ。
西「もう、俺達の祭りは終わったんだ。楽しかったじゃないか(笑)良い機会だから、お前が、郵政民営化までに暗躍した対日工作、対政界工作、対マスコミ工作の裏話をしてくれよ」
持山は、やおら、背広の内ポケットから、分厚い手帳を取り出してめくり始めた。
持「あ〜あ、この事実が世間に知られたら、日本中が騒然となるだろうな〜」
西「何だそりゃ?ちょっと見せてくれ」
メモには、書きなぐったようなアルファベットでこう書かれてあった。
Koizumi 50cakes
Takenaka 30cakes
Iijima 5cakes
Souichirou Tahara 5 sweets
Kouichi Hamada 3sweets
Hisayuki Miyake 1sweets
・・・・・・・
西「人名は見当がつくけど、ケーキやスィーツって何だ?」
持「単位は億円、ケーキは政府高官用、スィーツはTV、MC評論家用の工作資金です。」
西「お前!こんなもの残しといて大丈夫か?」
持「ポールソンから残しておくように言われたんです。このメモのコピーは奴も持ってますよ。上の政府高官3人からは、領収書にサインと花押までさせてあります。報酬を渡した以上ちゃんと結果を出せよ!と言う念書でもあるんです(笑)」
噂には聞いていたが、その実物を目にすると、一種異様な凄まじい迫力を感じるメモであった。
後に、検察側の決定的な資料となる「持山メモ」である。
西「お前が運んだのか?」
持「私と、アイバンの二人で運びました。」
西「アイバンって?」
持「ほら!東京支社の債券担当副社長のアイバン・ボウスキーですよ。」
西「ああああ〜あのジャンク債担当のロシア人ね、しかし、天下のゴールドマンの東京支社長自ら“運び屋”とはご苦労なことだな(笑)」
持「他に適任者がいないんだから仕方ないじゃないですか(笑)」
西「どうやって運んだの?」
持「アイバンと二人で、日曜にランドクルーザーを運転して、それぞれの御自宅までお届けにあがりましたよ。小泉さんは横須賀の実家まで・・・でも笑っちゃったよな〜」
西「どうしたんだ?」
持「50億円受け取った時の小泉さんなんだけど、その時のセリフが「感動した!!」だって(笑)言語能力のない人だとはわかってたけど・・・」
西「どっかで聞いたセリフだな(笑)おい、ところで、ここのIoujima Operation(硫黄島作戦)って何だ?」
持「ああ、それですか?それは、話せば長い話なんですけどね〜」
持山がおもむろに話し始めた。
(続く)
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