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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2009121702000080.html
布川事件再審 誤判防ぐ手だてを急げ
2009年12月17日
四十二年前の強盗殺人事件で、犯人とされた二人に「無罪」の扉が開かれた。最高裁が再審の決定をしたのだ。自白強要や証拠隠しなどを許さぬ仕組みづくりを急がないと、誤判や冤罪(えんざい)は絶えない。
犯人だと目を付けて、見込み捜査をする。別件で逮捕する。そして、自白を迫る−。一九六七年に茨城県で大工の男性が殺された「布川事件」には、そのような冤罪を生む図式があてはまる。
犯人とされた二人の男性は、ズボンの盗みなどで逮捕が繰り返された。強盗殺人罪で起訴されたのは、二カ月以上後のことだ。
むろん否認した。だが、捜査官から「自白しないと死刑になる」などと迫られ、“自白”に至ったという。裁判では一貫して「無罪」を主張したが、七八年に無期懲役刑が確定、服役した。
再審が決定したのは、無罪を示す新証拠が次々と出たからだ。犯行現場近くで目撃された男が、この二人とは別人だという証言や、殺害方法が供述と矛盾する鑑定書、さらに現場から採取された毛髪も二人のものとは異なっていた。指紋もなかった。
取り調べ段階で、自白した録音テープがあった。だが、音声分析をした結果、「重ねどり」の編集痕跡が明らかになった。二人を有罪とする中核部分が崩れるのは、当然といえよう。
問題なのは、これらは検察側が再審請求の過程で開示した証拠だったことだ。被告人に有利な証拠を検察側は長く隠していたわけで、見逃すわけにはいかない。
公判前整理手続きで証拠開示が広がっているが、証拠隠しがあれば、弁護側は手も足も出ない。全面開示を検討するときだ。また、来春に再審無罪となる見通しの足利事件でも、取り調べの全過程録画の必要性は痛感された。可視化は当然の流れといえよう。
布川事件の再審では、検察側は有罪立証をするという。これで無罪となれば、恥の上塗りではないか。むしろ、誤判に導いた検証をすべきだ。それが二十九年間も獄中生活を強いられた二人へのせめてもの償いにもなろう。
裁判員裁判への教訓でもある。無実の人を罰するのは重大な不正義だが、真犯人を取り逃がす意味でも不正義だ。「疑わしきは被告人の利益に」の原則を徹底したい。名張毒ぶどう酒事件など再審を求める事件はいくつもある。冤罪が潜んでいないか、総点検することが司法の信頼を高める。