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http://www.news.janjan.jp/media/0911/0910302455/1.php
「記者クラブ最後の悪あがき」フリーライターたちの証言
大泉千路2009/11/23
丸山昇・上杉隆両氏の記事が掲載された月刊『創』2009年12月号(筆者撮影) 9月16日に行われた鳩山首相初会見以降、記者会見の開放を求める記事が雑誌やネットなどに多く登場するようになった。それは、『Grazia』や『女性自身』などの女性誌でも取り上げられるようになったことからも分かるだろう。
なかでも、フリーランスで活躍するライターやジャーナリストが書いた論考は、特に興味深いものがある。それは、記者クラブや官僚などと闘う彼ら彼女らが伝える真実から、「記者クラブ最後の悪あがき」が我々の目に見えてくるからだ。ここでは、まず中央省庁での会見開放をめぐる攻防を目の当たりにした記者の証言をいくつか紹介する。その上で、記者クラブ廃止論が広がりつつある今、クラブメディアの記者にクラブ自体と記者会見などの自主開放を求めたい。
まず紹介するのは、霞が関の中央省庁のなかで真っ先に記者会見を開放した外務省の岡田克也外相に対する悪あがきである。メディア批評誌『創』2009年12月号で、フリーライターの丸山昇氏が外務省の会見開放をめぐる経緯について述べている。いささか長くはなるが、重要な証言のひとつであるため、要点を抜粋してここに引用したい。
〈岡田大臣は、就任2日後の9月18日に行った外務省に足場を置く記者クラブ「霞クラブ」との記者会見で、「大臣会見に関する基本的な方針について」と題する文書を配布した。そこには《原則として毎週2回、外務省内で定例記者会見を開催する》としたうえで、《大臣会見は、外務省記者会(「霞クラブ」)所属メディアに限らず、原則として、全てのメディアに開放する》と、明示されていた。大臣主導で、会見開放を表明したのである。同時に閣議後の会見(ぶら下がり会見)の方は、行わない意向を示した。(中略)それでも霞クラブ側は、外務省主催という形態を全面的には受け入れていないとしてきたこともあり、その日のうちに「大臣会見に関する基本的な方針についての要望」をまとめ、岡田大臣側に示した。会見開放については「各社で検討中」などとし、閣議後の取材機会の確保を求めていた。
これに対し岡田大臣側は、閣議後の「ぶら下がり(囲み取材)」は認め、当面は副大臣の会見も従来どおり霞クラブと行うという柔軟な姿勢を見せた。しかし、大臣会見の開放については、まったく譲る気配を見せなかった。そこで霞クラブ側は、9月25日に「記者会見等に関する見解」という文書を、再び岡田大臣側に示す。そこには《クラブ加盟社や上位組織との話し合いを見守りながら、検討していくとした》(「新聞協会報」09年10月6日号)などとし、結論を先送りして抵抗を続けた。(中略)
岡田大臣側は、「大臣会見に関する基本的な方針について」の内容を一部改定し、9月29日の記者会見で配布した。そして岡田大臣は、こう通告した。
「18日に一旦方針をお示ししましたが、外務省記者会霞クラブから様々なご意見をいただき、この間その実施を見合わせてきたわけですが、霞クラブから記者会見の開放そのものについての明確な見解は、示されませんでした。従って、あれから時間も10日以上経ったということで、『(配布した)基本方針』に基づいて、今日から大臣、副大臣の記者会見を全てのメディアに公開することにしたいと考えています」
18日の方針より一歩踏み込み、大臣会見だけでなく副大臣の会見も、全メディアに開放するとしたのだ。〉
(丸山昇「もう『NO』とは言えない『会見開放』の奔流」『創』2009年12月号)
9月29日の記者会見に出席したジャーナリストの田中龍作氏は、自身のブログのなかで「記者会見に臨んでいた筆者は、岡田大臣はごく常識的なことを言っているもので、記者クラブなる組織がそれに異論を唱えることの方が不可解でならなかった」と語っているが、この田中氏の意見には私も同感である。後述する上杉隆氏の言葉を借りて言えば、「きっと意味不明の詭弁を弄して、自らのつまらない既得権益を守ろうとしているのだろう」(「亀井大臣に同じ会見を2度行わせる、記者クラブの呆れた抵抗」『ダイヤモンド・オンライン』2009年10月15日付)。丸山氏が証言した内容こそ、まさに文字通り最後の悪あがきであり、これには記者クラブに対して怒りを通り越して呆れ果ててしまった。
次に、外務省に続いて記者会見を開放した金融庁の亀井静香金融担当相への悪あがきを紹介したい。記者クラブ問題で孤軍奮闘するジャーナリストの上杉隆氏は、前述した『創』12月号のなかで金融庁の会見開放までの内幕を次のように証言している。
〈(引用者注.テレビ番組出演の際、偶然隣り合わせた亀井担当相に記者会見の開放を求めた)その後、亀井さんや秘書官からも電話を貰って「会見に出てもらうから、何時何分に金融庁に来てくれ」と言うので、「ああ、これはオープンになったんだな」と思い、金融庁に行ったんです。そうしたらオープンになっていたのは私だけで、相変わらず記者クラブ主催だったわけです。だから質疑応答の冒頭でトップバッターとして、岡田さんのときと全く同じ質問をしました。
「大臣、私の他にフリーランス記者が見当たらないのですが、これは大臣の主催なのですか、記者クラブの主催なんですか。仮に記者クラブの主催だったら、法的根拠を示して下さい」と言ったところ、亀井さんが「上杉さん、恥ずかしながら私は知らなかったんですが、これは記者クラブの主催らしいんだ。代表者会議を今日、明日でやるので、その代表者会議で許可が出たら、上杉さんも正式に入れる。今日は私の招待ということで入っているんだ」と答えた。(中略)
次の日くらいにまた亀井さんサイドから「大臣会見にあなたは入れないと言われた」という電話が掛かってきた。代表会議の結果、いつものことながらフリーランスの私の入場は記者クラブから拒否されたんです。(中略)そうしたら次の亀井さんの会見から前半は記者クラブ主催、後半は海外メディア、フリーランス、雑誌、ネットのメディアが入れる大臣主催会見を開くようになったんです。
驚くのはその結果、亀井さんに対して「話がおかしい。記者クラブの運営の問題として支障が出る」という不満が記者クラブから出たことです。すると亀井さんが逆に激怒して、「運営に支障が出るのは記者クラブの連中が仲間を入れないからで、国民の知る権利や情報公開を逆行するようなことをするからだ。だから結局運営に支障が出るように、1時間の会見が30分になって、しかも後半は連中は入れない。私は後半で本当のことを全部言うから。前半では絶対に言わないから」と(笑)なってしまったわけです。〉
(上杉隆「民主党政権誕生下での記者会見開放をめぐる攻防」『創』2009年12月号)
亀井担当相はこうした事情があって、前半は記者クラブメディアの記者のみが出席できるクラブ主催の会見を、後半は海外メディアやフリーランス、ネットメディアの記者が出席する大臣主催の会見を開くようになった。前記した「亀井大臣に同じ会見を2度行わせる、記者クラブの呆れた抵抗」のなかで、上杉氏はこの形式による会見を「亀井大臣による世にも奇妙な1日2回の同じ内容での記者会見」と評している。確かに氏の言う通り、同じ内容が複数回に渡って報告される会見は世にも奇妙だ。多忙な大臣に同じ会見を2度も行わせてまで守りたい既得権益とは一体何なのか、私としては強い疑問を抱いてならない。
上杉氏や私などと同様、この奇妙な現象に疑問を抱いた『ニューヨーク・タイムズ』東京支局長のマーティン・ファクラー氏は、11月10日の記者会見のなかで次のように質問した。「記者会見について聞きたいんですけども、あの、毎日、毎回、2回記者会見をやらなければならないという異常な状態で、まあ大臣にとっても面倒臭いと思いますけど(笑)。大変ですよね。時間もかかるし。貴重な時間ですし。この異常な状態をどのくらい続けるつもりであるかということと、あとこういうふうに、二つの記者会見をしないと駄目だという異常な状態についてのご見解を……」(「『記者クラブに入っている人たちだけがジャーナリストじゃないんです。彼らは思い上がったらいけません』〜11月10日亀井大臣オープン記者会見3」『Web Iwakami』)。
当の亀井担当相は、ファクラー氏の質問に対して次のように答えている。なお、この回答の一部は、今月20日に掲載された氏の執筆記事でも紹介されていることを付記しておきたい(Martin Fackler, "New Leaders in Japan Seek to End Cozy Ties to Press Clubs", The New York Times, November 20, 2009)。
〈これはね、原因がマスコミのね、閉鎖性って言うしかないです。共同で、認めりゃ良いんですよ、この記者クラブが。だから、記者クラブ主体になってるからね、私が一緒にすると言っても『嫌だ』ってものはやりようがない。だからそれなら、ね、あなた方との時間を半分にして、ここであとやるよと言ってやってるわけなんだよね。だから彼らがいつまでも閉鎖的でわからずやであれば、続けて行きますよ。こういう状況。何もね、あの記者クラブ側に入ってる人たちだけがジャーナリストじゃないんです。ね、彼らは思いがあったらいけません〉(「記者クラブに入っている人たちだけがジャーナリストじゃないんです。彼らは思い上がったらいけません」〜11月10日亀井大臣オープン記者会見3」、原文ママ)
ファクラー氏とのやり取りのなかで語られた「何もね、あの記者クラブ側に入ってる人たちだけがジャーナリストじゃないんです。ね、彼らは思いがあったらいけません」との指摘は、けだし至言であろう。「記者クラブに属する記者こそがジャーナリストだ」などという考えを持っている(と推察できる)記者クラブには、甘ったれるのもいい加減にしろと言いたくなる。事実、クラブメディアの記者が知っているかは分からないが、鳩山首相初会見後から記者クラブ廃止論が広がりを見せている。あくまでクラブ開放論者の私の感覚であるが、それゆえに記者クラブには猶予が残されていないように感じられてならない。
今こそ、良識ある記者クラブ、特に内閣記者会(首相官邸の記者クラブ)の記者は、こうしたクラブ廃止論の広がりと、民主党議員は野党時代の「会見開放宣言」とその公約の未達成という事実と真剣に向き合うべきだ。そして彼ら彼女らには、「クラブをもっとオープンにして、外国メディアも含めて出入り自由にすることで、かえって既存のメディアが強くなれるのではないか」(『朝日新聞』2009年7月24日付朝刊)という提案を武器に、クラブ開放に抵抗する一部の政治家、官僚、記者らと対峙する覚悟を奮い起こしてもらいたい。クラブ開放がすでに遅きに失しつつある今、もはや記者クラブ、民主党政権の無策は許されないのである。
◇ ◇ ◇
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