★阿修羅♪ > 昼休み31 > 148.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://mainichi.jp/life/health/news/20091122ddm013010027000c.html
たばこ税:増税、効果は 税収、消費減り減収も/禁煙促進、がん減少?/生産者は反対
鳩山由紀夫首相や長妻昭厚生労働相が税率の引き上げに言及し、盛り上がる「たばこ税」論議。1箱の価格が倍になるといった話まで登場し、喫煙者には恐ろしい話だが、家族や周囲の禁煙を願う人には朗報だ。増税で禁煙する人は増える? 税収はどうなる? さまざまな立場から「たばこ税」を考えた。【小林多美子】
◇税収 消費減り減収も
東京・丸の内のオフィスビル内にある喫煙所。ランチタイム前、仕事の休憩中とみられる男女20人ほどが紫煙をくゆらす。街の喫煙コーナーではこのところ、たばこ増税の話で持ちきりらしい。
喫煙歴が長い男性会社員(38)は「自分にとってたばこは当たり前のようにあるもの。増税? ふざけるな、です。600円になろうが1000円になろうがやめない」といさましいものの「本数は減るかな」。
別の男性会社員(53)は「海外での値段の高さを考えると、仕方ないと思う。でも喫煙率の低下や健康のためというならば、増税した分のお金は禁煙治療や分煙対策に使ってほしいですね」。
日本のたばこ税は1本あたり8・7円。20本入り1箱につき175円で、300円のたばこを買えば、6割以上を税金として払っていることになる。
それでも欧米に比べれば、かなり安い。1本当たりの税額はドイツが日本の約2・6倍、フランスは約2・8倍、英国になると約4・2倍にも上る。長妻厚労相は「欧州並みの金額にする必要がある」と発言しており、1箱600円という時代もあながち非現実的ではない。
ただし、増税がそのまま税収増につながるかは疑問視する声も強い。たばこは98年から3度増税されており、例えばマイルドセブン1箱の価格は同年に230円から250円になり、03年に270円、06年に300円、と徐々に上げられた。しかし、税収はここ20年近く年間約2兆円規模で、増税直後には微増するものの、全体としてはやや減る傾向にある。健康志向の高まりで喫煙者が減っていることに加え、大幅な増税をすれば禁煙者が増え、かえって減収となる−−。そんな見方は財務省内にもあるという。
◇健康 禁煙促進、がん減少?
製薬会社「ファイザー」が今年4月、インターネットで喫煙者を対象に行った調査(回答者6498人)では「1箱いくらになったら禁煙するか」の質問に対し、最も多かった答えは「500円」(33・6%)。続いて「400円」(16・6%)▽「600円」(11・5%)となり、600円になれば、6割以上の人が禁煙する計算になった。さらに「1000円以上」になると9割近くに上り、いくらになってもやめないという人は10・5%にとどまった。また、「どのようなきっかけがあれば禁煙するか」という質問でも最も多かったのは「価格が上がったら」(60・1%)で、「健康を損ねたら」(59%)をわずかだが上回っている。
「この問題は健康を守ることが一番大事なポイントで、税収が増えるかどうかは関係ありません」と話すのは日本禁煙学会理事長で、約25年前から禁煙推進活動を続けている作田学・杏林大医学部客員教授。鳩山首相が国会で「税収が減っても、健康の方が大事だ」と答弁したことが「涙が出るほどうれしい発言でした」という。
米国公衆衛生長官報告に掲載された研究結果によると、喫煙者が肺がんになる確率は吸わない人に比べ4・8倍以上、他のがんもおおむね倍以上。作田教授は「ストレス解消やリラックスのために吸う人もいるが、ニコチンが切れたイライラを解消しているに過ぎず、たばこ自体がストレスの原因になっている」と一刀両断だ。
◇生産者は反対「死活問題」
一方で「増税は死活問題になる」と批判を強めるのが生産・販売サイドだ。日本たばこ産業(JT)によると、たばこの総需要は毎年4〜5%ずつ減る傾向で、民営化された85年に3000億本以上だった販売本数は現在、半数の約1500億本にまでダウン。同社IR広報部は「たばこは合法の嗜好(しこう)品。まるでペナルティーのように税金を大幅かつ急激にかけることが、公平といえるでしょうか」。英国でも現在の価格(1箱約800円)になるのに24年、フランス(同約600円)では11年かけて徐々に上げてきたことを強調し、急激な増税を警戒する。
*
ところで喫煙者は本当に次の値上げ次第でたばこをやめられるのだろうか。前述したファイザーの調査では、1年前に同じ調査を受けた人(7042人)の約3割が禁煙に挑戦し、うち7割が失敗している。健康のための政策ならば、禁煙推進を増税だけに頼っても、十分とは言えないだろう。
ちなみに、喫煙者の私(記者)は今回の取材で作田教授の話を聞き、禁煙を決意した。決め手になったのは「お肌がしわだらけになるのも、喫煙者の特徴です」の一言だった。
来年度の税制改正の大筋は年内にはほぼ決まる。