★阿修羅♪ > 昼休み27 > 910.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090917dde012010004000c.html
特集ワイド:’09天下の秋 ルポ・民主党政権誕生/下
◇前首相、元総務相 国交省キャリア 自民党職員…その変化、とまどう男たち
「すっかり秋めいてきましたね」。声を掛けると、こちらに目は向けず麻生太郎前首相はニヤリと笑った。17日午前8時45分、東京・渋谷の麻生氏の自宅前。いつもの2倍、40分をかけたウオーキングの後だった。顔には汗が噴き出していた。
秋晴れの朝、麻生氏は、池のある公園や小学校脇などをぐるぐる回り、時折、SPに「ここは大きな家だろ。○○さんの家だ」などと語りかけた。たまにすれ違う近所の人には笑顔であいさつするが、「鳩山内閣の顔ぶれはどうですか?」などと記者が尋ねても一切答えず表情は硬い。
麻生氏の豪邸から地下鉄半蔵門線渋谷駅まで歩く。雑踏で生ゴミをつつくハトがいる。改札口に近づくと、約30人のホームレスが等間隔に敷かれた1畳ほどの段ボールの上に横になっていた。公邸を出て自宅に戻った麻生氏はこれから毎朝、この光景を見るのだろうか。一瞬考えたが、すぐにそんなわけはないと思い直した。前首相が地下鉄に乗るわけがない。
■
霞が関・国土交通省。16日に前原誠司氏(47)の大臣就任が決まると、多くのキャリア職員があきらめにも近い、さえない表情を見せた。
民主党は、高速道路の無料化や群馬県の八ッ場(やんば)ダム建設中止を掲げ、国交省と対立してきた。居酒屋タクシーの件でも先頭にたって集中砲火を浴びせた。
50代の幹部が言う。「民主党の国交省いじめはひどすぎた。正直、民主党大臣の指示には素直に従えないだろう」
八ッ場ダムの建設中止は、来年夏の参院選まで見据えたパフォーマンスととらえていた職員も。道路局や河川局に勤務した別の幹部は「建設中止は簡単に主張できる公約だ。参院選が終わってしまえば、結局は造ります、となるのではないか。河川局は10、20年の視野で仕事をしている。最長4年の政治家とは違う」とプライドをみせていた。しかし前原国交相が中止を明言。「大変なことになるかもしれない」と厳しい顔になった。
11日にテレビで「地元住民がダム工事の発注延期について、国交省の現地事務所に説明を求める」というニュースが流れた時は、40代の職員が疲れた表情で吐き捨てるように言った。「民主党に言ってくれよ」
元大蔵官僚の衆院議員、古川元久氏(43)が民主党の立場を説明する。「警戒したり戸惑ったりしている官僚はいる。でも彼らだって今のままでいいなんて思っていない。無駄なことでも慣例でやってきた部分がある。僕もそうだったけど、本当にやりがいがあったことなんて1割。仕事のやり方を変えることは彼らにもプラスなんですよ」
埼玉県の上田清司知事(61)は民主党の八ッ場ダム政策について、「勇み足もいいところでしょうね」とばっさり。ダムの事業費の7割はすでに支出した。本体工事の中止で620億円が浮くが、自治体が負担している利水分の費用など法律的に返還すべき金額は計1460億円にもなる。「建設中止でかえって国庫からの支出が増える。予算節約対象の事業に入ること自体が初歩的なミスだ」
上田知事は96年から03年まで民主党の若手ホープ議員として活躍した。政権交代を評価しつつ、古巣のマニフェスト(政権公約)には批判的だ。「今回は、小沢民主党の、勝つためなら何でもあり、が強く出た政策。体系的なものはあまりない。今から国家戦略局を作るというが、本来は明確な国家戦略が先にあるべきでしょ。でも、詰めていくとばらけるんで、基本政策は封印して、食いつきやすい個別政策だけを放り投げた」
それに有権者が食いついたわけでもなかった。「自民党のオウンゴール。鳩山ブームでも小沢ブームでもない。勝手に自民党が転げ落ちた」
■
16日、首相指名を受けた鳩山由紀夫氏は終始、緊張した表情をしていた。
その直後、弟の鳩山邦夫元総務相が国会内で感想を語った。「民主党をつくる時、『私はあなたを総理にしてみせる』と兄に豪語した。それから長い道のりで、兄弟げんかもあったけれど、兄が目標に到達したことを心からお祝い申し上げたい。ありとあらゆる機会に兄を刺激してきた者としては、本当に良かったなと思います」
兄を祝福した後は、少し穏やかな表情に。「兄が小学4年、私が小学2年の時から、兄が高校2年になるまで、夏休みはチョウ採集のネットを持って、2人でいろんな所に行った。純真だった時代から私も兄も随分変わったと思うけれど、あれだけチョウを追い回していた兄が、自然を愛した思いを政治にぶつけて自然との共生をやってくれたらありがたい」。ただ、環境と日本郵政問題では「私が一番いいアドバイザーになれるんじゃないですか」とアピールすることも忘れていなかった。
鳩山首相に続き、いち早く官邸に入ったのは小沢一郎幹事長だった。小沢氏を幹事長に選んだことについて、上田知事は「肉を切らせて骨を断ったということじゃないですか」と話した。「小沢さんを排除できるかといえば、結局、波乱要因ができてしまう。さりとて黙っていると、党も政府も侵食してくるから」
「平成の闇将軍」「剛腕」といわれる小沢氏。なぜ民主党は小沢氏に従うのか。
93年にできた「非自民」の細川政権は7党8会派。結局、各党が持論をむき出しにして分解した。小沢氏の強引さに反発して、同氏抜きの自社さ政権作りに尽力した民主党の衆院議員、五十嵐文彦氏(60)はひどく後悔した。「自民が変節し、暴走し始める」と気づいたときには遅かったのだ。別の議員(66)も「自民党の賞味期限は93年には切れていたのに、自社さ政権が政官癒着体質の自民党を延命させた。そのせいで世の中が遅れた。反小沢で分裂したあのときのてつは踏まない」。
「長かった。野党ってつらかった」と語るのは参院議員の岡崎トミ子氏(65)。16日の首相指名後に96年から共に歩んできた鳩山氏と握手した。「政策実現には数の力が必要だと思い知った。(小沢氏は)選挙戦にも党の重し役にも欠かせない」という。
■
17日午前9時過ぎ、官邸に来た鳩山首相は「ご苦労さまです」と機嫌がいい。この笑顔はいつまで続くのか。
一方、職員のリストラ案も持ち上がる自民党本部。陳情も抗議も来ない。警備する警察官が言った。「静かです。ああ、激励がありました。保守政党がんばれって」【政権交代取材班】
==============
◇「特集ワイド」へご意見、ご感想を
t.yukan@mbx.mainichi.co.jp
ファクス03・3212・0279
【関連記事】
新閣僚:公約明言続々 「変革」印象づける
鳩山首相:連合会長と会談 連携強化呼び掛け
衆院予算委員長:民主・鹿野氏に 20ポストを内定
藤井財務相:副財務相に野田、峰崎両氏を起用
民主党:記者会見を大臣などに一元化 事務次官会見中止に
毎日新聞 2009年9月17日 東京夕刊