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【コラム】イノベーションを斬る:その技術は大きな対価をもらえるか…日本のものづくり企業は「価値づくり」が苦手[09/09/08]
1 :依頼@台風0号φ ★:2009/09/09(水) 01:08:59 ID:???
イノベーションの実現には、「価値創造(Value Creation)」と「価値獲得(Value Capture)」の両方が欠かせない。
技術経営(MOT)発祥の地、MIT(マサチューセッツ工科大学)で、最初に学んだのがこの概念だ。
ここでいう価値創造とは、素晴らしい新技術や新商品を開発することである。しかし、それだけでは、
社会も企業も豊かにはならない。企業は経済価値(付加価値や利益)として価値を獲得しなくてはならない。
例えば、日本企業では優秀な技術者が一生懸命に働き、優れた技術や商品を開発・製造しているが、
企業の利益にも自分たちの給料にもあまり反映されていない。
つまり、価値創造はできていても、価値獲得ができていないのである。企業が価値獲得をできなければ、
国の税収入は限定され、社会的にも困窮することになる。
価値獲得ができていないのは、企業が商品開発や製造にかけたコストに対して、顧客がそれ以上の対価を
支払ってくれないからである。いくら優れた商品であっても、かけたコストと同等の評価しかされないのであれば、
真の価値を創造したことにはならない。
◆価値づくりが苦手な日本企業
私の最近の研究では、価値創造を「ものづくり」、価値獲得を「価値づくり」と呼び変えている。日本企業は
ものづくりが得意でも、価値づくりは苦手である。
日本社会は、良くも悪くも、企業が大きな利益を上げることをあまり歓迎しない。しかし、利益を上げていないと
いうことは、真の価値を創造できていない場合が多い。創造した価値から税金や給料が支払われ国民の
生活が豊かになる。
国の財政が破綻しているのも、政府の使い方が悪いのが主因だが、一流の技術者を抱えた製造企業が
価値獲得できていないことも大きな要因となっている。日本企業が「良いものを安く売る」ことを目指している
限りは、我々の生活や国の財政は良くならないかもしれない。
▽執筆者
延岡 健太郎:一橋大学イノベーション研究センター教授
▽ソース:JB PRESS (2009/09/08)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1671
記事は>>2以降に続きます。
2 :依頼@台風0号φ ★:2009/09/09(水) 01:09:26 ID:???
>>1の続きです。
ものづくりはできていても価値づくりができていないことを象徴しているのが、日立製作所、NEC、ソニーなどの
電子情報機器産業だ。ものづくりが得意な日本企業からは、新型の液晶テレビや携帯電話など次々に
市場導入される。しかし、安売り合戦に陥り、価値づくりはできていない。
では、価値づくりのためには、何が必要なのだろうか。それは、(1)企業固有の独自性の高い価値を創ること、
および(2)顧客が喜んで大きな対価を支払いたくなるような価値を創ること、の2点に集約される。これらによって
価格競争から抜け出ない限りは、社会貢献に通じる価値づくりはできない。
◆競合に真似されない独自性とは
まず、「企業固有の独自性の高い価値」とはどういうものか。日本企業は競争が好きなのか、どの企業も
似たような商品ばかりを出してくる。もちろん、企業も何とか差別化を実現しようと一生懸命に努力している。
しかし、これだけ技術力が均衡している中で、機能的に他社よりも優位性を持った商品を出し続けることは
不可能に近い。
それでも、一流の日本企業であれば、確率的に時には差別化商品で成功する場合もある。だから
やめられないのだろう。しかし、国際的な競争が年々厳しくなっているので、機能的な優位性を維持できる
確率は下がり続けている。最も弱いプロ野球チームでも3割は勝つことを思い出してほしい。たまに成功する
商品が出ても、確率が低ければ駄目なのだ。
そこで、企業は個々の商品や技術以上に、企業の強みとして、組織能力での独自性や差別化を
実現しなくてはならない。
経営学(戦略論)において、過去20年間にわたり組織能力の重要性が注目されてきた。その流れの中で
1990年に出版され世界的なベストセラーになったのが、ゲイリー・ハメル教授とC・K・プラハラード教授による
『コア・コンピタンス経営』(日本経済新聞社)である。
組織能力やコアコンピタンスは個々の商品とは異なり、競合企業にすぐに真似されることがない底力である。
組織能力が模倣されないのは、個々の企業の中で、長年積み重ねられてきているからだ。長年の学習
プロセスによって構築された組織能力は、競合企業には短期間で真似することができない。
ものづくりにおいて鍛え続けている日本企業は、実は組織能力が高い場合が多い。シャープの液晶やNECの
半導体などは、強い組織能力に支えられている。
記事は>>3以降に続きます。
3 :依頼@台風0号φ ★:2009/09/09(水) 01:09:35 ID:???
>>2の続きです。
◆機能的価値よりも「意味的価値」が重要
しかし、こうした日本企業の組織能力が十分な価値づくりに結びついていない場合が少なくない。シャープの
液晶技術はものづくりと価値づくりの両面で成功した事例だ。しかし、最近のテレビ市場では、必ずしも十分な
価値づくりに結びついていない。
30年以上にわたる液晶技術の積み重ねがあるシャープは、台湾や韓国企業と比較すれば、技術的にはまだ
優位性を保っている。では、なぜ過当競争に巻き込まれ、十分な価値づくりができていないのだろうか。それは、
顧客が薄型テレビの技術的な優位性に対して十分な対価を支払わないからだ。
顧客は、一定の水準以上の綺麗な映像であれば、その中から安いテレビを選んでしまう。このように独自の
強みによる優位性が高くても、価値づくりに結びつかない事例が増えている。
つまり、技術経営の最大の課題は、ものづくりにおける優位性を維持するだけでなく、上に挙げた(2)の
「顧客が喜んで大きな対価を支払いたくなるような価値を創ること」だ。
顧客が高い対価を支払うような価値は、技術や機能に依存しない場合が増えている。アップルの「iPhone」
「iPod」や任天堂の「Wii」は典型例だ。それぞれ、最先端技術を誇る日本の携帯電話やソニーの
「プレイステーション3」には技術面や機能面では劣っている部分が少なくない。しかし、顧客は技術スペックや
機能ではなく、自分の主観的な意味づけによって対価を支払う傾向が強くなっている。機能的価値よりも
意味的価値が重要なのだ。
意味的価値が重要なのは、消費財だけでなく、半導体などの生産財も同じだ。NECや日立の半導体が技術や
機能で優れていても、台湾や米国の半導体の方が、顧客企業にとって使いやすい場合が多い。
例えば、半導体で成功している台湾のメディアテックは、顧客企業が商品に組み込み、市場導入するまでの
プロセスにおいて役立つソリューションを同時に提供している。技術や機能が顧客にとっての価値ではないのだ。
今回は、ものづくりだけでなく価値づくりが重要であること、価値づくりには、模倣をされない独自性と、
意味的価値をフィーチャーした顧客価値の2つが必要であることを説明した。
私は、日本企業が価値づくりを実現してよりよい社会になるための一助になるように、この分野の研究を
続けている。次の機会には、研究内容について具体的に説明したいと思う。
−以上です−