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新政権は米国と対等に付き合える外交力を磨くべきだ(森永卓郎)
http://www.asyura2.com/09/senkyo70/msg/697.html
投稿者 ダイナモ 日時 2009 年 9 月 05 日 18:18:12: mY9T/8MdR98ug
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20090831/177671/?P=1
経済アナリスト 森永卓郎
2009年 9月1日
この記事が公開されるころには、総選挙の結果を受け、新政権発足に向けて大きく動き出していることだろう。
どのような形の政権になるにせよ、国民の目がこれまで以上に厳しくなることは間違いない。年金、財政問題をはじめ、メディアではさまざまな問題について議論されているが、外交や国際関係といった問題は、国民生活に直接関係がないためか、あまり議論の対象とはなっていない。
しかし、長い目で見ていけば、外交もまた国民の生活に直結した問題となることを忘れてはならない。外交しだいで、国民の生活は豊かにも貧しくもなるのだ。
今回の総選挙の自民党のマニフェストを見て驚いたのは、「米国に向かう弾道ミサイルを日本で迎撃する」ということが明確に織り込まれたことだ。わたしは明白な憲法違反だと思うのだが、その点についてはさまざまな議論があるだろう。
ここでは、そうした憲法論議は置くとして、日本の安全を守るためには、米国の安全保障に深く関与して、日米同盟を強化するというのが麻生自民党の考えだったわけだ。わたし自身は賛成できないが、そういう考え方があることは理解している。
ただ問題は、それだけ米国に尽くした結果、日本の国益にかなうような見返りがあったのかということだ。すでに日本政府は、完全な不平等条約である日米地位協定を維持しているうえに、在日米軍の駐留費用を一部負担する、いわゆる思いやり予算を立てている。
そこまで米国に尽くしているのに、はたして米国は日本のことを思ってくれているのか、はなはだ疑問だと言わざるをえない。
皮肉なことに、自民党のマニフェストが公開された直後、そうした米国と日本の関係を象徴するようなニュースが飛び込んできた。メディアは選挙報道一色だったため、目を止めた人は少なかったかもしれないが、日本の行く末が案じられる、非常に気が滅入るニュースであった。
イランの油田に持っていた権益を、米国の圧力で返上した日本
そのニュースとは、イランにある南アザデガン油田の権益70%を中国が獲得するというものである。
「イランの核開発問題を受け、日本企業が自ら権益を縮小したイラン南西部の大規模油田『南アザデガン油田』について、中国石油天然ガス集団 (CNCP)が権益の70%を獲得する見通しになった。イラン石油省傘下のシャナ通信などが報じた。日本が開発主導権を手放した後、資金不足のイランは中国に接近していた」(朝日新聞 8月2日朝刊)
自主開発油田を持ちたいという日本にとって、南アザデガン油田の権益を得ることは悲願といってよいものだった。それが実現すれば、産油国に振り回されることなく、量的にも価格的にもある程度安定した石油を日本に運んでくることができる。
事実、この油田に対して、2004年に国際石油開発(現・国際石油開発帝石)が、日本政府の意向を受ける形で権益の75%を獲得していた。この油田の操業が開始すれば、日量26万バレルの生産が見込まれており、順調に石油が日本に入ってくれば、日本の原油輸入量の7%ほどをまかなえるという非常に大きな権益だったのだ。
もちろん、簡単に手に入ったわけではない。面倒でタフな交渉を経て、石油代金前払いをしたりといったこともして、ようやく獲得した権益である。
ところが、2005年、イランにアフマディネジャド大統領率いる超反米政権が誕生すると、風向きが変わってきた。当時のブッシュ米大統領が、日本に圧力をかけてきたのである。「あんな反米政権の国と共同事業をするとはとんでもない」というわけだ。
そうした圧力を受けて日本はどうしたかというと、油田の開発に着手しないまま、75%あった開発権益を10%までに自主返上してしまったのである。日本政府の思惑としては、「現状はいろいろと混乱しているものの、ほとぼりが冷めたら再び権益を取り返しにいけばいいだろう」というものだったはずだ。
中国と比べて、日本はなぜこれほどまでに存在感がないのか
ところが、日本が米国の顔色をうかがっているすきに、活発に資源外交を展開している中国が割り込んできたというわけだ。すでに覚書をかわしたとの情報もあり、かなり事態は進展していると考えられる。
こんなひどい話があるだろうか。日本がようやく基礎をつくり上げたところに中国がやってきて、横からごっそりさらっていったようなものだ。
オバマ現大統領も、対イラン政策についてはブッシュ路線を継承しているのだから、中国にも圧力をかけて不思議ではない。日本は付き合うことを許されなかったのに、なぜ中国なら許されるのか。
日本と中国の立場に、それほど違いがあるとは思えない。少なくともイランの核開発を抑制しなければいけない点では、どちらも変わりない。それどころか、日本は歴史的に中東との関係は良好で、なかでもイランとは長らく友好関係にあった。そんな仲良しの国だったのに、親分の米国が「あいつは不良だから付き合うな」と言われたものだから、やむなく引き下がったわけだ。
となると、中国が許されるのは、米国に対して立場が強いからとしか考えられない。そのカギを握っているのが、8000億ドルという米国債の保有高である。世界一の米国債を保有しているからこそ、7月末にワシントンで開かれた米中戦略・経済対話の会合において、オバマ大統領が「米中関係は世界のどの2国関係よりも重要」と中国の訪米団を大歓迎したわけだ。
だが、よく考えてみれば、日本だって6800億ドルの米国債を保有しているではないか。金額にそれほど大きな違いはないし、そもそもついこのあいだまで日本のほうが多かったくらいである。それなのに、日本はまったくといっていいほど存在感がない。
こうした事実を引き合いに出して、やはり米国と対等に付き合うには、経済力ではなく軍事力が不可欠だという人がいる。中国は強大な軍事力をもっているからこそ、米国と対等にやりあえるという理屈だ。だから日本も軍事力を増強すべきで、極端な人になると核兵器を持つべきだという意見になる。
でも、冷静に考えてほしい。本当に中国は核や軍事力をちらつかせて、米国を揺さぶっているのだろうか。いや、それは考えられない。実際に圧力をかける要素となるのは、やはり経済の力なのである。
外交力の差によって、日本の国民は大きな利益を失っている
確かに、経済力だけでいえば中国と日本はほぼ同等である。今年中に中国のGDPが日本を抜くといわれているが、それでも大きな差があるわけではない。
それなのに、中国がこれだけ米国に強く出られるのに、いくら敗戦国とはいえ、日本は戦後64年も経って全面服従しなければならないのか。
わたしは、その違いを生んでいる最大の要素が、外交の差であると考えている。早い話が、日本はあまりにも外交の進め方がヘタクソなのだ。
それが如実に表れたのが、橋本龍太郎氏が総理大臣を務めていたときの出来事である。ご記憶の方も多いと思うが、コロンビア大学における講演で、「わたしは米国債を売りたい衝動にかられることがある」と口を滑らせた。その結果、ニューヨークダウが大暴落してしまったのである。おかけで、それ以降、誰も米国債売却についてものが言えなくなったのだ。
これはヘタクソな外交の典型である。せっかく、いい切り札を持っているのに、テレビカメラまで入っている公開の場面で、切り札を明らかにしてしまうのがヘタクソなのだ。
中国の政治家は絶対にそんなことをしない。さまざま場面において、中国が米国に圧力をかけているのは明らかでありながら、中国の首脳が表立って「米国債を売るぞ」と言ったという話は聞いたことがない。その代わり、密室の中ではこっそりと、しかしねちねちと圧力をかけていることだろう。実にいやらしいのだが、それが外交のイロハである。そうした外交の巧みさにかけては、日本人は中国人にとうてい及ばない。
中国人のようになれと言うつもりはないが、いくらなんでも日本の外交はナイーブすぎる。別の言い方をすれば、あまりにいい人すぎるのだ。経済力は同等にあるのに、外交のヘタクソさによって、日本の国民は当然受けられるはずの利益を逃してしまっているわけだ。今回の南アザデガン油田の例は、その典型だろう。
民主党の小沢一郎代表代行は、かねてから「米国と対等の関係に立つ」と述べている。ところが情けないことに、自民党はもちろん、民主党も当初は日米地位協定を改定するといっておきながら、「検討する」というレベルにトーンダウンしてしまった。
だが、このまま米国の言いなりになっているだけでは、日本の経済はいつまでたっても立ち直れない。新しい政権においては、ぜひとも外交力を発揮してもらい、本当の意味での国益をもたらして国民を幸せにしてほしいものである。
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イランのアザデガン油田については日本がその大半の権益を持っていたのは数年前だった。当時、日本の石油輸入元はサウジアラビアなど限られた国に限られていた。イランのアザデガン油田はそうした限られていた日本の石油資源の確保先を広げるものでより安定的な石油確保が可能となるとして多いに期待されていた。
しかし、現在では日本の権益はこの記事にあるように10%でしかなくなってしまった。最近になってこのニュースを聞いたとき私はいぶかしく思った。これまで日本が大半の権益を持ち、多額の開発費用も負担していたにもかかわらず、いまでは大半の権益を失ってしまった。何故なんだ、という疑問だ。これは石油確保に賭ける中国のなりふり構わない政治的・経済的攻勢によって日本がかやの外に置かれたためだということだと分かった。そこには米国の圧力もあったとは言え、日本政府が何があってもアザデガン油田を確保するとして必死にイラン当局に攻勢をかけていればこんな事態にはならなかったということであり、日本と中国の石油確保に賭ける意欲の違いが如実に現れた結果となってしまった。