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http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20090810-01-0101.html
会社の「倒産シグナル」
2009年8月10日 AERA
社長は未来を語らず、会長は古い体質のままで、部下からはクーデター騒ぎ。
最近の自民党を見ていると、倒産寸前の企業のよう。「他山の石」にするしかない。
身動きが取れない。手際が悪くて、配布されるはずの資料がなかなか手に届かない。記者たちのブーイングが飛び交う。
自民党のマニフェストは、その中身だけでなく、発表の舞台設定も穴だらけだった。
雪印と船場吉兆
会場選定が明らかにミス。集まった記者の数に対して会場となった党本部の会議室は狭く、缶詰め状態。
時間配分もミス。発表する麻生首相は、冒頭30分間延々と原稿を読み上げ、残りたったの15分ほどしか質疑応答に充てられなかった。しかも、
「平河クラブ(自民党担当の記者クラブ)の記者から質問を受けたいと思います」
と、司会者が前置きして、かなり閉鎖的。顔なじみの記者からの質問にも、麻生首相は不機嫌な様子で、ちぐはぐな回答をするだけで、実質的な回答は、園田博之政調会長代理が補足。頼りない党首を覆い隠すためか、と勘ぐりたくもなった。
「会見は言葉だけを伝えるのではない。会場セッティングや資料の作り方、発表者の声のトーンや表情など、様々な情報を発している。最低限の段取りも整えられないなら、その組織は崩壊の危機だとさらすようなもの」
と、広報やPRの専門家で、メディアブリッジコンサルティング社長の吉池理さんは話す。
特に、今回の自民党のように、トップがすべてを把握しておらず、周囲が慌ててカバーする様子は、トップに情報が集まらないという、組織の弱体化や硬直化を如実に表してしまうという。
そう言えば、不祥事を起こし、後に業績悪化や倒産に至る企業の会見にも同様の光景がある。
社長が答えに窮し、同席した役員から発言を修正され、揚げ句、「私は寝ていないんだ」と筋違いの言い訳をしてしまった雪印乳業。謝罪会見で答えに詰まる取締役の長男の横で、「頭が真っ白になって(と言え)」とささやいた女将が一躍有名になった船場吉兆……。
どうして、自民党は「倒産企業」さながらの醜態を露呈するようになってしまったのか?
監督と選手が不在
今回の総選挙で、関西の与野党候補者の支援をする選挙プランナー、松田馨さんは言う。
「前回2005年の郵政選挙で自民党に吹いた風に味をしめたことが災いした。政治の中身を変えないでも、トップや候補者の『顔』さえ変えれば何とかなると勘違いしている。パッケージを変えただけでは消費者から古い商品のままと見抜かれてしまうのに。長期ビジョンを打ち出していないので、その時々のトップの気分や組織の力学で、目先の利益を追うようになってしまったようだ」
自民党を「古い考えの高齢社員がのさばり、内部改革できない倒産寸前企業」に例えるのは、『「不利益分配」社会──個人と政治の新しい関係』の著者、高瀬淳一名古屋外国語大教授。
「安倍、福田、麻生と登板した投手(党首)がことごとく打ち込まれたのに、交代を判断する監督も、交代要員もいないチーム。外から補強するしかないが、まともな人材確保もできない。変種の小泉チルドレンも見殺しにしてしまった」
古い組織はやることも古い。
自民党を企業に例えれば、斜陽企業が高度成長を忘れられず、借金をしまくって設備投資をし、自ら首を絞めているようなものと、高瀬教授は指摘する。
「日本の経済成長が終わって、超少子高齢化社会の中で、巨額債務を抱える政府は、利益誘導ではなく、国民への不利益の配分が仕事なのに、ばらまき路線から決別できていない」
三つの典型シグナル
政党も企業も、組織が崩壊する時は同じ道をたどる。『社長!こんな会社が倒産します』の共著者、落合孝裕税理士に、倒産寸前状態を見極めるための20項目のチェックリストを作ってもらった。自民党に当てはめると、過半数にチェックが付くようだ。「相当危ない(政権交代へ)」のレベルである。
「自民党は、巨額の借金をつくり、不況で業績が不振。おまけに3代続けてトップにリーダーシップがない。債務超過のボロボロの会社に近い。バブル崩壊後20年、再建の機会はあったのに逃がしたので、国の経営者として失格。経営者交代という判断を、債権者である有権者から下されても文句は言えません」
経営コンサルタントで、『社員が惚れる会社のつくり方』の著者、舞田竜宣さんは、崩壊する組織のわかりやすいシグナルを三つ挙げる。1リーダーの言葉が曖昧2小集団でバラバラのミーティングが多い3後継者を育てようとしていない。
1は、リーダーが語る言葉の語尾に表れるという。「〜したい」と明確に言う代わりに、「〜を検討中」などが多用される場合は崩壊度が高い。
「曖昧なリーダーは、志がなく、ただポストを求めて権力闘争の末に、就任した場合が多い。周囲にもポストを狙う、すり寄り型の部下が集まってしまう」
2の指摘は、「麻生降ろし」で少人数ごとに身勝手に行動した自民党そのものだ。有効に機能する組織では、末端にまでトップの意思が伝わり、小集団が鎖のようにつながるという。
3の後継者育成は、トップがある程度長期的にポストに座る必要があると指摘する。ゼネラル・エレクトリック社を立て直した「伝説の経営者」ジャック・ウェルチは、最高経営責任者に20年間就き、後半10年は後継者育成に力を入れた。もちろん企業と政党は別だが、自民のトップがころころ変わったのは論外。近視眼的結果に惑わされない組織体制の必要性を強調する。
前出の広報コンサル、吉池さんが重視する点はこうだ。
「大河ドラマが高視聴率を上げる今の時代は、真面目に人の心に訴えるリーダーが好まれる。いい商品やサービスだけでなく、トップと部下がお互いに支え合っている組織だと支持が高い」
だから最近は、社長ブログで日常を吐露することがはやる。その組織自体を身近に感じてファンになってもらうことが、企業戦略として有効だからだ。逆に、今回の自民党のように、足を引っ張り合うお家事情が露呈するのは最悪という。
民主「経営企画室だけ」
今の自民党は、リーダーの資質の問題を超えている、と指摘するのは、元運輸官僚で、「官僚国家日本を変える元官僚の会(脱藩官僚の会)」の発起人の一人、上山信一慶應大教授。
「自民党というシステムが時代に合わなくなったのに、他の政党の力がないという外的要因で生き延びてきた。本来は倒産している企業が経営を続けているようなもので、だれがリーダーでも同じ。今回の総選挙は、そのシステムを根本的に破壊して再生する機会に、やっとなるのではないか」
民主党は、自民党に代わって、「日本株式会社」の経営者となるのか。だが上山さん曰く、「本社は腐っていても地方支社はしっかりした老舗企業」の自民に対し、民主は「経営企画室だけは充実しているが、末端組織はお粗末なベンチャー企業」。
政権交代が進んだとしても、世界に通用する「日本株式会社」を作るには、再び政界再編をする必要があるのかもしれない。
編集部 木村恵子、山下 努