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(回答先: 【おわりに】 投稿者 小沢内閣待望論 日時 2009 年 6 月 13 日 23:50:28)
(補論)本件政治資金問題に関連する法解釈及び事実関係についての検討結果
1.「寄附をした者」についての有識者見解の検討
第1 章の2−1.(1)で述べたように、政治資金規正法の解釈としては、「寄附をした者」とは、
基本的に、「寄附者として金銭の交付や振込など外形的な行為を行った者」と解するべきだと考
えられるが、法務省は、「寄附をした者」の判断を、個別の事案ごとに実態に基づいて行うべき
との見解を示している。その前提として、政治資金規正法4 条3 項の「寄附」の定義規定との関
係をいかに考えているかは不明であるが、当委員会の有識者懇談会にも参加した堀田力氏は、別
の場において、この点について、「寄附とは財産上の利益を提供することで、法律が『交付』を
含むとしたのは、使者や機関に対し手渡した場合も含むことを明らかにしたのであり、『交付』
という外形があればすべて寄附になるわけではない。たとえば同法は寄附の斡旋に関する制限を
設けているが、斡旋者に寄附金を託した場合でも、斡旋は斡旋で、寄附の受領ではない」と述べ
て、同法が、寄附者について、「形式」ではなく「実質」に基づいて記載を行うことを求めてい
るとの見解を示している9。
同氏の見解は、法務省見解の根拠を推測する一つの手がかりになると思われるが、以下のよう
な疑問がある。
堀田見解のように、「使者や機関に対して手渡しをした場合も含む」という趣旨であれば、「寄
附」の定義に「交付」という文言を含めるまでもなく、「供与」に含めて解することは可能であ
る。例えば、実質判断を行う場合の典型である贈収賄の事例において、贈賄者が、収賄者と意思
を合い通じた使者に現金を手渡した場合は、当然「供与」したと認定できるのであり、「交付」
などという概念を持ち出す必要はない。
公職選挙法は、民主主義の制度的基盤を支える法律という面で政治資金規正法と共通の性格を
有するものであるが、同法は、当選を得る等の目的で、「選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物
品その他の財産上の利益」を「供与」する行為の禁止(同法221 条1 項1 号)のほかに、「選挙
運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交
付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾」する行為を禁止しており(同条項5 号)、
「交付」という概念を用いているが、その意味は、「供与」が選挙人、選挙運動者に対して「金
銭、利益を得させること」であるのに対して、「交付」は、選挙運動者に対して単に「金銭、利
益を移転すること」である(典型的なのは、選挙人を買収する資金を運動者に託す行為)。
このような公選法における「交付」という文言の意味との比較に照らしても、上記堀田見解の
ような「交付」の解釈を取る余地はなく、「寄附」の定義に「交付」が含まれているのは、前記
9 当委員会の有識者懇談会において堀田氏が述べた見解は、政治資金規正法が寄附者について実質に基づく記載を
求めていることを当然の前提とするものであったが、その見解の法解釈上の根拠について尋ねる時間がなかった。本文中
の堀田氏の法解釈に関する見解は、その後、当委員会の郷原信郎委員との月刊誌での対談で示されたものである。(中央
公論2009年7月号掲載)。
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のように、金銭、利益を「得させる」という「供与」の形態とは異なる、「単なる移転」の場合
も「寄附」に含める趣旨だと考えられる10。
また、収支報告書に「寄附の斡旋者」の記載に関する規定があるが(同法12条1 号ハ)、それ
も会計責任者が「寄附の斡旋」を受けたと認識できる範囲で形式的な判断によって記載すべき事
項だと考えられる。斡旋者自身が政治団体等に現金を持参してきたとしても、「寄附者」として
現金の交付ではなく、斡旋者が使者として現金を持参しただけである。いずれにしても同法が実
質判断に基づく記載を求めていることを示すものではない。
この点に関して、当委員会の有識者懇談会に出席した政治資金問題の専門家の日本大学教授の
岩井奉信氏も、「今までの政治資金規正法の実質上の運用を見ていると、実質が誰であったのか
までは求めていない。実質まで確認することを求めるのは実際には無理だろう。したがって、有
罪になるのは難しいだろうし、もしこれで有罪が取れるということになると、政治資金規正法の
根幹がひっくり返ってしまうことになる。本件で虚偽記載を認めてしまうと、政治資金制度、収
支報告書の根幹が揺るがされることになる。今回の事件を違法と言ってしまえば、違法は山のよ
うにある。その摘発が検察の裁量権に任されているのであれば、ある種怖いことである。今回は
それが問題になったということで、非常に皮肉な言い方をすれば、検察が必ずしも正義ではない
ということが明らかになった」と述べている。
2.西松建設内部調査報告書に基づく検討
西松建設内部調査報告書は、同社が、平成7 年に施行された政治資金規正法の改正により、企
業から政治家個人への献金が禁止されたことから、政治団体からの献金を装って政治家個人の政
治団体等に献金することを画策し、そのために、「新政治問題研究会」と称する政治団体を設立
したと述べており、同団体が、企業から政治家個人への寄附の禁止を潜脱する「脱法目的」のも
のであったことを認めている。
しかし、同報告書は、一方で、「会員とする社員は、当時の幹部社員が全国の支店を回って、
一人一人勧誘し、会員となる旨の了解を得ていた」と述べており、政治団体への加入が会社から
の強制ではなく、社員の意志によって行われていたことを明らかにしている。
そして、社員が政治団体に加入して支払う会費については、西松建設が「一部の社員に対して
特別賞与の名目で金銭を交付し、その代わりに当該社員から年に2 回、政治団体への寄附をさせ
ていた」と述べているが、この特別賞与加算については、「具体的な上乗せ金額は本人には知ら
されず、政治団体への加入の勧誘を受けた際には『賞与で上乗せするから寄附をしてくれ』と言
われていたに過ぎなかった」とされており、特別賞与加算が、社員が政治団体の会員として支払
10 この点について、原口一博衆議院議員の平成21年4月30日付質問主意書に対する内閣総理大臣の答弁書(資料編
15)を参照)は、『政治資金規正法4条3項の「供与又は交付」については、「供与」及び「交付」を区別する必要は必ずしも
なく、要するに財産上の利益を相手方に提供付与する行為を指すものと考えられる』としている。しかし、このような解釈に
よれば、上記の公職選挙法における「供与」と「交付」の関係との説明が困難である。
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