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第二回委員会議事の内容
開催日時 平成21年4月17日(9:00〜11:30)
開催場所 虎ノ門パストラル
出席者 飯尾潤(政策研究大学院大学教授)、
郷原信郎(名城大学教授・弁護士)、
櫻井敬子(学習院大学教授)・・順不同
※服部委員は欠席
1.「検察の説明責任」について
(問題提起)
−日本では起訴便宜主義がとられており、不起訴の場合には検察審査会、付審判請求といった制度はあるが、他方で不当な起訴をすることに対しては制度上の手当てはなく、比較法的には問題がある。そのため、学説上公訴権濫用論というものが主張されているが、今回の問題は、その論点が顕在化したケースである。
−検察の権限行使は、与野党のいずれに対しても公正でなければならないが、議院内閣制をとる現行憲法下においては政府と与党は一体的であるため、その公正さは野党に対する関係でとくに留意されなければならないという指摘が可能である。
−政治資金規正法については、罪刑法定主義の観点から、構成要件の明確性と起訴事実の関係について検討すべき問題がある。政治資金規正法における構成要件の内容は形式的に理解するのが素直な解釈のように見えるが、世の中の認識が実質論的に傾くようになっていて、法律の中身と実質とのあいだにずれが生じている。
−法律自体が変質することはあり得るし、検察の罰則適用方針の変化もあり得る。検察庁・法務省も行政機関である以上、国民主権原理に照らして説明責任を負うことは当然であり、とりわけ法律の解釈変えがあるとすれば、検察当局にはより重い説明責任がある。
(議論)
−今回問題になっているのは、権力の行使が社会的政治的に大きな影響を持つ場合にどういう説明責任があるのかという話だ。
−検察の説明責任について、公判で主張・立証し、裁判所が判断すべきことで、刑事訴訟法上もそういうことになっているというのが検察の理屈だ。確かに一般的な刑法犯の場合、犯罪者の処罰することを社会が容認しているので、犯罪がある限り、それを起訴して公判の場で刑事手続の中で済ませることで問題はない。基本的には、犯罪者本人や被害者・遺族に対して公判の場で説明責任が果たされれば足りる。しかし、ライブドア事件のような経済犯罪や今回のような政治に関連する事案の場合は、一般的な刑法犯とは違う特別の社会的影響が生じる。それは、通常の刑事処分に対して社会が容認しているものをはるかに超えるものだ。
−政治資金規正法の目的と基本理念から分かるように、今回の事案の場合には、当事者との間の説明責任に加えて、民主主義社会に対する説明責任がある。政治資金規正法は情報開示を趣旨とするもので、判断は基本的に国民にゆだねられている。だからこそ、国民に対する説明責任が果たされないといけないという点に本件の特殊性がある。
−一般行政においては、刑法犯に比べて形式犯的要素の強い行政刑罰は、規定があっても現実に発動されることはほとんどないという実態がある。そうした実態があるなかで、刑罰権の発動が個別案件について恣意的になされるとすればそれは重大な問題といわざるを得ない。刑罰の謙抑主義に照らして、実際に刑罰権を発動する場合には相当の慎重さが要請される。また、今回のように、政治団体の「実体」を処罰のための基準とすると、それによって政治資金の実務が実体を基準にして行われなければならないことになり混乱することになる。
−この問題に関しては、ここで議論しているような意見が、社会に広まっているとは思えないので、そのほかの意見も、比較検討する姿勢が大切である。その意味で、検察の側からもう少し意見を言う人がいないといけないのに、それがいない。しかし、今回ここで議論したことを世の中に発信していけば、ものを言わざるを得なくなるのではないかと思う。
(まとめ)
−検察の説明責任の問題について大筋では以上のような方向で今後もう少し整理をしていきたい。
−今回の事件はライブドア事件と共通性がある。同事件でも、検察の捜査が証券市場を大混乱に陥れるという重大な社会的影響を生じさせた。しかも、検察のリークが問題になり、株主のライブドアに対する損害賠償訴訟で東京地裁の判決では検察のリークの事実を認めた上、検察にリークをする権限があるという判断を示した。まだ判決は確定していないが、大問題だ。この事件の場合は証券市場に大きな混乱を生じさせるリークであり、今回は、政治の世界で、野党党首を叩いて政治情勢を激変させる重大なリークだった。今回の政治資金の問題とライブドア事件との比較検討を行う必要がある。裁判所の認定事実と判断について、次回までに問題を整理する。
2.公開ヒアリングの実施について
−検察の説明責任を検討する前提となる政治資金規正法の解釈に関して、総務省と法務省からヒアリングを行おうとして、質問事項を示し、民主党のネクスト大臣を通して各省の担当者に出席を要請したところ、法務省からは出席を拒絶された。(1)民主党の党外に設けられた委員会であること、(2)公判中の具体的な事件に関連する質問であること、(3)法務省は検察から独立した組織だが、当事者に近い組織だということ、以上が出席拒否の理由とのことだった。当委員会としては、法務省がこのような理由で出席を拒絶したことは納得できない。とりわけ、(2)については、具体的事件の中身についての質問は予定しておらず、あくまで法解釈についての質問を行おうとしているだけだ。(3)については、本来、法務省は中立公正な立場で罰則適用についての解釈を示す立場にあるはずで、検察の味方をする立場ではないはずだ。法務省としての解釈を公開の場で説明することは当然できるはずだ。
【総務省担当者からのヒアリング】
行政企画局政治資金課課長補佐 市川 靖之 氏
(質問 .1)
−(政治資金)収支報告書上、寄附の内訳への記載が求められる寄附者の氏名について、資金の拠出者と実際に寄附を行った者とが相違する場合に、資金の拠出者を記載することが求められているのか。
(回答)
−総務省に問い合わせてもらっても、寄附をした者を書いてくださいとしか言えない。会計責任者が法の趣旨に則り実態を把握して記載してくださいとしか言えない。
(質問 .2)
−政治資金規正法上、寄附者となることができない政治団体は存在するのか。仮に存在するのであれば、どのような政治団体が該当するのか。
(回答)
−政治団体の定義は、資料の3条等で法律上定義されている。また、寄附をできない政治団体は、設立届けを出していない政治団体、二年間収支報告を行っていない政治団体である(3条、5条、6条、17条2項等について説明)。
(質問 .3)
−ある企業・団体が、人員、資金などをすべて負担して政治団体を設立し、完全に支配している場合、その政治団体が行った寄附については、政治資金収支報告書には、「寄附者」をどのように記載すればよいのか。
(回答)
−個別の事案については回答できないが、完全に支配しているという意味も明確ではなく回答しにくいが、政治団体であればこの法律の趣旨に則って報告書の記載・提出をお願いしたい。
(質問 .4)
−政治資金規正法22条の6に定める「本人の名義以外の名義・・で」、「匿名で」とは、それぞれどのような行為を言うのか。
(回答)
−本人の名義以外の名義を使うケース、氏名等を表示しないケースが該当する。
【委員会側コメント】
「政治資金の寄附についてAが資金を出して、その資金でBが寄附をしてきたという場合、それを受け取った政治団体の会計責任者は、収支報告書に寄附者としてAを記載すれば良いのかBを記載すれば良いのか」との質問を、総務省担当者に対して繰り返し行ったが、「法の趣旨に則り、実態に基づいて適切に記載して頂きたい」との回答を繰り返すばかりであった。これでは、全国に無数に存在する政治団体、政党、政党支部の会計担当は、寄附者について収支報告書にどう記載したら良いのかまったくわからない。それを会計責任者が自分で判断し、間違っていたら罰則が適用されるというのでは、とても会計責任者はやっていられない。これは、今回の事件を機に検討が開始されている、企業団体献金の全面禁止をめぐる議論にも重大な影響を与えかねない(個人献金も、その資金の出所がわからないと受け取れないということになる)。
政治資金規正法の解釈・運用に関して重大な問題があることが、今回のヒアリングで明らかになったというべきであろう。
3.今後のテーマ
−次回以降は、有識者との意見交換、検察のリーク・起訴便宜主義に関する議論、報道のあり方に関する議論、収支報告の分析等をテーマとする。
以上