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http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20090416-02-1401.html
小沢vs検察の歴史的因縁/上杉 隆(ジャーナリスト)
2009年4月16日 VOICE
常識では「ほぼセーフ」
3月3日を境に、永田町の空気は一変した。それまでの麻生内閣に対する絶望的な雰囲気は消滅した。首相の漢字の読み間違い、中川昭一財務大臣の酩酊会見、すべてが記憶の彼方に消えたかのようである。
代わりに、国会議員、秘書、政党職員、記者らの関心は、1人の人物に向けられている。民主党の小沢一郎代表である。
西松建設のダミー政治団体からの献金事件で、小沢代表の公設秘書が逮捕されたこの日以降、永田町の関心はこれだけといっても過言ではない。
テレビ番組出演のため大阪に滞在していた筆者も、その足で永田町に向かい、そのまま3日間帰宅できない、という事態が騒動の大きさを物語っている。3月24日、東京地検特捜部は公設秘書を起訴した。にもかかわらず、小沢代表は続投を宣言し、それによってむしろ「検察vs民主党」の構図が強まり、ますますヒートアップしている感じだ。
そもそも、こうした「対決モード」は、小沢代表の翌日(3月4日)の記者会見から始まった。
「この種の問題で、いままで逮捕、強制捜査というようなやり方をした例は、まったくなかったと思います。まさに検察の強制捜査の、今回は普通の、従来からのやり方を超えた異常な手法であったと思っております。このような一方的なこじつけたような理由でもって、検察権力の発動ということは、非常に公正を欠く、政治的にも法律的にも公正を欠く行為ではないかと感じています」(小沢一郎会見より)
宣戦布告とも取れる小沢氏のこの言葉の真意を、あらためて解説してみよう。
今回の事件が、企業献金を禁じた政治資金規正法に抵触したことに異論を差し挟むのは難しい。4年間で2100万円という献金額の大きさから見ても、その違法性は否定できないだろう。
だが、あくまでそれは西松建設側の認識の問題であり、小沢事務所側の「犯意」については「知らない」といわれれば確認のしようがない――これが永田町関係者の多くが、今回の事件に対してもっている当初からの見方だ。議員秘書経験のある筆者も、当初から同じ立場でメディアなどで発言してきた。
何より注目に値するのは今回の献金について、小沢事務所は政治資金管理団体に直接入金するというオモテルートでの処理を行なっているという点だ。この方法ならば、これまでの「永田町のルール」でいえば「ほぼセーフ」(金庫番秘書)というのが常識なのである。
実際、収支報告書への記載ミスということであるならば、会計責任者が修正報告を行ない、官報・公報に記載され、場合によっては返金して「ハイ、終了」(金庫番秘書)という具合である。与野党問わず、過去に収支報告書の修正をいっさい行なっていないという議員事務所は皆無であろう。
何が怒りに油を注いだか
今回、小沢氏が怒ったのは、修正の機会すら与えず、返金すら許されず、朝に秘書を呼び出し、夕には身柄を拘束して「逮捕」となったことにある。むしろ、それよりも悪質な自民党議員が大勢いるのに、なぜオレだけが、というのが小沢代表の胸の内なのだ。
さらに、次のような歴史的な背景も、小沢氏の検察への怒りに油を注いでいるのかもしれない。
1993年、政治改革を謳って自民党を飛び出した議員の多くは、現在の民主党幹部である。羽田孜、渡部恒三、石井一、鳩山由紀夫、岡田克也、そして小沢一郎――。さらに彼らの出身母体は、田中派と竹下派に限られている。旧田中派といえば、つねに検察の捜査対象として名前の挙がる議員が多かった。
田中角栄(ロッキード事件)、竹下登(リクルート事件)、中村喜四郎(ゼネコン談合事件)、金丸信(佐川急便事件)、橋本龍太郎(日歯連事件)、村岡兼造(日歯連事件)、鈴木宗男(やまりん事件)、細川護煕(佐川急便事件)、野中広務(日歯連事件)――。
逮捕の有無は別として、これだけの議員の名前が捜査線上に上がり、場合によっては政界から消えていくことになった。
政治の「師」の田中元首相も、姻戚関係のある「後見人」の金丸信副総理も、小沢氏にしてみれば、東京地検特捜部によって政治の表舞台から放逐されたということなのだ。
その直系の「秘蔵っ子」である小沢氏にしてみれば、ついに検察の矛先が自分に向いたと考えるのも不自然ではないのではないか。
筆者は、「陰謀論」に与しない。また検察による「国策捜査」という言葉にも懐疑的だ。そして、小沢代表が完璧にクリーンな政治家だとも思わない。
だが、こうしてあらためて検証してみると、小沢代表の怒りの理由も見えてくる。
官僚の政治任用を明言している民主党と、秘書の逮捕に踏み切った検察の「全面戦争」は総選挙の日まで続くのは間違いない。