★阿修羅♪ > 昼休み18 > 294.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20090404-01-0901.html
NHKの検察報道のあり方を問う
2009年4月4日 ビデオニュース・ドットコム
ニュースコメンタリー(2009年4月4日)
3月30日、参議院の総務委員会でNHKの平成21年度予算の審議が行われ、国民新党の長谷川憲正議員が、小沢代表の公設秘書起訴の報道内容についてNHK経営陣に質問した。
神保(ジャーナリスト): 小沢代表の公設秘書が起訴された後、25日未明からNHKがしきりと大久保被告が起訴内容を認める供述をしているというニュースを報道したことについて、国民新党の長谷川憲正議員が質問をしていた。
どう考えても拘留中の被疑者の供述に関する情報は検察からしか出てこないので、おそらく検察のリークだと考えられるが、無論報道では情報の出所は明示されていない。しかも、報道には弁護側の主張がまったく出てこないので、長谷川氏が、被疑者が認めているという事実を弁護側に確認したのかを聞いていた。
これに対するNHK側の答弁は、報道倫理上情報源については言えない、公正な報道を心がけている、の一点張りだった。NHKは特別公務員なので官僚的な受け答えがあっても不思議はないのかもしれないが、それにしても説明になっていない。
3月27日には大久保被告の弁護士がマスコミ各社にFAXでコメントを出している。大久保被告が起訴事実について大筋を認めているという報道について、「弁護人らの認識は全く異なっている」という内容だ。つまり、大久保被告が容疑を認めているという報道を、打ち消したということだ。
このコメントの内容を報道したのかについてNHKの広報に確認をしたが、NHKの編集判断で放送をしていないとのことだった。他の報道機関でも、ほとんどこのコメントは報じられていない。つまり、起訴事実を認めたという検察リークは報道されたが、それを打ち消す当事者側のコメントは報じられていないということだ。
要するに、検察から情報をもらうためには検察側のリークは報じなければならないが、弁護側の意見はいくら報道してもメリットがないから報じないということだ。
今検察の暴走が問題になっているが、政治も裁判所も検察を監視できていない。ならばせめてメディアが監視しなければならないが、メディアも完全に検察にコントロールされていることが如実にわかる事例だ。萱野さんはどのように見ているか。
萱野(津田塾大学准教授): この話は一つの深刻な事例だと思う。一方で、これだけ検察がマスコミを囲い込みたいとか、うまく情報をリークして何とか報道をコントロールしたいと思うのは、それだけマスコミの力を恐れているということでもある。
おそらく検察は、世の中の空気をすごく敏感に察知して動いているのだと思う。空気を察知しているから、超法規的なというと少し言い方が違うが、今回のような例外的な行動をとる。空気を読むことから、彼らなりの正義感が出ているのかなと思う。
では誰が社会の中で空気を作っているのかということだが、一番元にあるのは、日本では警察に逮捕された瞬間に有罪視されてしまうことだ。
神保: 実際に、有罪率が高いというのは事実だ。
萱野: そうだ。制度とイメージが一緒になって、逮捕された瞬間に全てが終わるということになっている。
一つ思うのは、裁判員制度の開始で今回のような状況はどう変わるのかということだ。裁判員制度に賛成か反対かという議論は一方であるが、事件報道の性質が変わるのは確実だ。
神保: 今回の小沢代表の公設秘書逮捕は重罪とは言えないので、裁判員裁判の対象にはならないが、もしこれが裁判員裁判になった場合どうだろうか。ニュースでこれだけ被告のネガティブな情報に触れた人が、公正は判断ができるのだろうか。しかし、これを言うと、今度は報道管制という話になるから、それもまた問題だ。結局、検察や警察一辺倒の事件報道しかできないメディアが自分の首を絞めているのではないだろうか。
萱野: 朝日新聞や読売新聞はガイドラインを作って、今後裁判員制度のもとで事件報道をどのように行うのかについて定めている。たとえば、警察発表はもっと情報源を明らかにするなどだ。これは、司法当局から規制される前に自分たちでやろうという保身でもあるが、もしかしたらこれで事件報道が変わるかもしれない。今後どうなるかはわからないが、警察当局がマスコミとの関係を結ぶということができなくなるという可能性もある。
出演者プロフィール
神保 哲生(じんぼう・てつお)
ビデオニュース・ドットコム代表/ビデオジャーナリスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修了。AP通信社記者を経て99年『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著書に『ツバル-温暖化に沈む国』、『地雷リポート』など。専門は地球環境問題と国際政治。05年より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
萱野 稔人(かやの・としひと)
(津田塾大学国際関係学科准教授)
1970年愛知県生まれ。03年パリ第十大学大学院哲学科博士課程修了。哲学博士。東京大学21世紀COE「共生のための国際哲学交流センター」研究員、東京外国語大学非常勤講師を経て、現職。著書に『国家とはなにか』、『権力の読み方』、共著に『「生きづらさ」について』など。
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。