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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090325-00000065-san-pol
「一郎」は変わらなかった 政治部長・乾正人
3月25日7時56分配信 産経新聞
3年前の4月、民主党代表に選ばれた小沢一郎氏は、記憶に残る演説をした。映画「山猫」の「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」という名セリフを引用し、「まず、私自身が変わらなければなりません」と宣言したのだ。果たして小沢代表は3年間で変わったのか。
小沢代表の続投表明は、政治の師である田中角栄元首相、後見人だった金丸信元自民党副総裁を失脚に追い込んだ東京地検特捜部に宣戦布告したことを意味する。
同時に、次期衆院選での政権奪取を目前に控えたいま、党代表を辞することは政治的死を意味すると判断したのだろう。
田中元首相が、ロッキード事件で逮捕された後も派閥を拡大し、「闇将軍」といわれるほど権勢をふるった昔と違い、政治資金規正法が厳しくなり、国費から多額の政党助成金が交付される今では、党の主要ポストを握っていないとカネも人事も思う通りに差配できない。仮に無役になれば、政治的影響力は格段に小さくなるはずだ。起訴されても裁判がすべて終了し、刑が確定するまでは推定無罪だというのもその通りだ。
今回の判断は、政治家・小沢一郎の我を貫くという意味では、筋が通っていると私は思う。
だが、民主党を率いるトップの決断としては、いただけない。代表に居座ったまま裁判が始まれば、「検察対民主党代表」の構図が鮮明となり、自民党に比べて清廉さが売り物のはずの民主党に計り知れないダメージを与えるはずだからだ。
もっといただけないのは、民主党幹部と、テレビによく出てくる一部のコメンテーターの面々だ。
彼らは、「政治資金規正法違反という形式犯で野党第一党の党首の秘書が逮捕されたのはおかしい」という「国策捜査」批判を繰り返しているが、この論理こそおかしい。
政治資金規正法違反は決して形式犯ではない。禁固5年以下という厳しい刑罰が科せられ、同法違反容疑で何人もの国会議員がバッジをはずしている。
「政治とカネ」の問題にメスを入れる「国策捜査」をするのはけしからん、というのなら民主党は、田中元首相や金丸元副総裁の名誉回復を図ってはどうだろうか。それならば筋が通っている。
それにつけても情けないのは、物言わぬ大多数の民主党議員だ。ある中堅議員は「全体の7割は自主的に辞めてもらいたいと思っている」と漏らすが、堂々と自分の考えを公にする議員はごく少数だ。24日の代議士会でも「新生民主党で次の衆院選を戦うことが党や国民のためになる」と代表退陣論をぶったのは、横光克彦氏ただ一人だった。民主党内では自由な論議はできないのだろうか。これでは、「民主」の看板が泣く。
平成政治史は、小沢一郎という政治家を抜きには語れない。
「政権交代で議会制民主主義を定着させたい」という彼の言葉に偽りはなかろう。
ならばなおさら、別の決断はできなかったのだろうか。「変わる」と宣言してからもゼネコンからの多額献金は続いていた。
これでは、民主党が批判している政官業が癒着した「古い自民党」の体質となんら変わらない。
24日夜にテレビでも中継された涙の続投会見は、「人間・小沢」の一面を感じさせたが、「政治とカネ」にまつわる疑念を払拭したとは言い難い。66歳の男が変わるのはやはり至難の業のようだ。
最終更新:3月25日7時56分