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http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20090330-01-0101.html
小沢一郎 生ビールの夜
2009年3月23日 AERA
小沢民主党代表の居酒屋行脚が話題だ。窮地でさぞや――と思いきや至って強気らしい。
逮捕された秘書の勾留期限は24日。居酒屋で練る反転攻勢の秘策やいかに。
生ビール中ジョッキ500円、刺し身盛り合わせ(5点盛り)2350円、イワシ丸干し焼き580円――。
今月17日。同じ東京・赤坂でも、通い慣れたはずの閑静な料亭とは価格が一桁も二桁も違う居酒屋で、民主党の小沢一郎代表は若手議員に囲まれていた。
「日本の閉塞状況を変えるのは小沢さんしかいない」
藤末健三参院議員らが気勢をあげると、小沢は上機嫌でタコの刺し身をつつきながら、1時間半で、ビールをジョッキで4、5杯空け、政権交代の必要性を熱く語り続けた。違法献金事件の渦中にある疲れやストレスは、一切感じさせなかった。
「政治家は、頭と度胸だ!」
そう言って、腹をぽーんとたたいた。
連日のお値打ち店通い
小沢が次の夜、訪れたのも赤坂の手頃な中華料理店「四川辣房」だった。4人前の火鍋3800円。おなかいっぱい食べて飲んでも一人4000円程度。小沢が率いる党内グループ「一新会」所属の側近議員とジョッキを傾け、紹興酒の杯も重ねた。
「小沢だ!」
店をでようとした時、一般客が気づいて沸いた。小沢は店内に再び戻って一人一人と握手して回り、携帯電話でのツーショットの記念写真に満面の笑みで納まった。ここでもまた「窮地の政治家」とは思えないハイテンションとサービス。
「代表を激励するつもりが、逆に激励されました」と側近の一人は語る。
連日のお値打ち店通いには理由がある。
冒頭の店に行った17日夕、小沢は会見で唐突に「企業・団体献金の全面禁止」を打ち上げた。
「今度の問題を教訓とすれば、全企業・団体献金を禁止するならばいい。徹底しなきゃ意味がない」
顔を紅潮させ、時折手を広げながら一気にまくし立てた。
小沢は従来、企業・団体献金を禁止しなくても、カネの出入りを公開する「政治資金の透明化」をすれば問題ないと強調していた。小沢の場合、2007年で地元の政党支部に約3100万円という巨額な企業団体献金が集まり政治活動を支える。
ところが今回の違法献金事件では、皮肉なことに公開資料「政治資金収支報告書」の記載事項が秘書逮捕の材料に。そこで全廃に一気に踏み込んだ。
とはいえ、小沢を取り巻く状況は「企業・団体献金全廃」を打ち上げた程度で好転するほど生やさしくはない。
周囲の狂騒楽しむよう
内閣支持率の低迷に苦しむ麻生を尻目に、次の首相を確実視されてきた小沢。数カ月以内の最高権力の座を目前に控え、3月3日に突如暗転した。
自らの公設第1秘書が政治資金規正法違反に問われて逮捕。朝日新聞社の3月の世論調査では小沢の説明に「納得できない」が77%、代表を「辞める方がよい」が57%。「やはり、もともと自民党で田中角栄にかわいがられただけあって金権体質」と有権者の目には映る。
政権交代へ向けあくまでも続投するか、すっぱりあきらめて辞任して、党のダメージ回復を図るか――。今、首相以上に一挙手一投足が注目されている。
小沢は自宅にほとんど帰らず、東京駅に近い八重洲富士屋ホテルから国会や赤坂の個人事務所などに通う生活を続けている。07年11月、大連立騒動で代表辞任を一時決意したときにも籠もった定宿。奇しくも、田中元首相の盟友でロッキード事件にも登場した小佐野賢治が率いた国際興業系列のホテルだ。
連日、小沢が乗る小型ワゴン車の後を、テレビ局の雇った数台のオートバイが追い、更にその後には報道各社の黒塗りハイヤーが続く狂騒だ。
しかし、小沢は周囲の過熱を楽しむかのように、上機嫌で居酒屋の行脚を続ける。
小沢が突如打ち上げた「企業・団体献金の廃止」は、党内の「ポスト小沢」に突きつけた問いかけでもある。
小沢の発言を受け、献金のあり方について議論を始めた民主党の政治改革推進本部。本部長の岡田克也は、党内外からポスト小沢の筆頭格と目される。岡田はもともと企業献金容認派。小沢には及ばないものの、野党民主党にあって財界からも支持を集め、07年には地元の政党支部に約2600万円という企業献金収入を誇る。19日の自らのブログでも、企業・団体献金について「一定の範囲では認められるべきだ」と指摘した。
企業・団体献金の全廃は党内からも賛否両論だ。長妻昭をはじめとする個人献金限定派もいれば、組合から支援を受けるベテラン議員は「そんなことをしたら政治活動ができなくなる」と危機感を募らせる。
岡田が本部長としてどう議論をまとめるのか、小沢の動向ともからんで注目される。
事件や「小沢後」について、岡田自身は「党内はまとまらなければ」と慎重な発言を繰り返すばかり。だが、一方で変化がうかがえるエピソードもある。
たとえ若手議員との会食でも「割り勘」で通してきた堅物の岡田。だが、最近は若手におごるようになったという。「一体どういう心境か」と議員たちの口の端にのぼる。
「居酒屋首相」果たして
トロイカ体制として、小沢を支える代表代行の菅直人と幹事長の鳩山由紀夫の立場も微妙だ。岡田は55歳、菅、鳩山は62歳。小沢の後を彼らより若い岡田が引き継げば、「世代交代で、もう菅鳩の時代には戻らない」(中堅議員)というのが党内の大勢の見方だ。かといって、現執行部の一員として、ポスト小沢を公然と模索することもできない。
二人の立場はわかれる。「年間1億円以上の公共調達をしている企業は、企業献金を禁止する。こういう形で整理することが可能ではないか」と、岡田に歩調を合わせる菅に対し、鳩山は「青信号で渡っていたら捕まってしまった。それなら、青信号をなくすしかない。そのぐらいわかりやすい方向を党として目指していきたい」と、全廃の小沢に同調する。
小沢は自らの進退について、「(起訴などの)結論が出る前にとやかく言う問題ではない」と述べ、第1秘書の勾留期限である24日を判断の節目に設定している。進退を胸に秘めた小沢は19日夜、小料理屋で鳩山にこう息巻いた。
「やるんだったら企業献金全廃しかない。マニフェストでうたって選挙で戦い、政権交代ができた暁には実施するんだ」
企業献金をなくした「居酒屋首相」は果たして実現するのか。
編集局 本田修一(文中敬称略)
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。