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インフォームド・コンセント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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インフォームド・コンセント (informed consent) は、「正しい情報を得た(伝えられた)上での合意」を意味する概念。以下、本文では「IC」と略する。
特に、医療行為(投薬・手術・検査など)や治験などの対象者(患者や被験者)が、治療や臨床試験/治験の内容についてよく説明を受け理解した上で (informed) 、方針に合意する (consent) 事である。説明の内容としては、対象となる行為の名称・内容・期待されている結果のみではなく、代替治療、副作用や成功率、費用、予後までも含んだ正確な情報が与えられることが望まれている。
なお英語の本来の意味としては「あらゆる」法的契約に適用されうる概念であるが、日本語でこの用語を用いる場合はもっぱら医療行為に対して使用される[1](医療行為以外については説明責任を参照)。本記事でも、以下では医療行為に伴うIC、特に医師をはじめとする医療サービスの提供者(以下、医療従事者)と、患者との間でなされるICについて述べる。
目次 [非表示]
1 概念
2 実践
2.1 患者側で注意すること
3 ICが困難な場合
3.1 未成年患者
3.2 意思の疎通が出来ない患者
3.3 精神病患者
3.4 救急患者
3.5 がん(特に終末期)
3.6 医学上の定説と著しく異なる方針を選ぶ患者
4 ICに対する批判と議論
4.1 パターナリズムとの衝突
4.2 説明の範囲
5 獣医学領域におけるインフォームド・コンセント
6 脚注
7 関連項目
8 参考文献
9 外部リンク
概念 [編集]
ICの概念として、「説明・理解」と、それを条件にした「合意」の、いずれも欠けないことが重要である。また、ここでの「合意 consent」とは、双方の意見の一致・コンセンサスという意味であり、必ずしも提案された治療方針を患者が受け入れるということを意味しない。
患者が「全部お任せします」といって十分に理解しようとせずに署名だけするような態度や、医療従事者が半ば説得して方針に同意させるような態度は、不十分なICの例である。一方で、患者が充分な説明の元で治療方針を「拒否」し、医療従事者側がそれを受け入れた場合、これは充分なICといえる。
ICは、従来の医師・歯科医師の権威(パターナリズム)に基づいた医療を改め、患者の選択権・自由意志を最大限尊重するという理念に基づいている。
説明する側は医療行為の利点のみならず、予期される合併症や、代替方法についても十分な説明を行い、同意を得る必要がある。また、この同意はいつでも撤回できることが条件として重要である。こうすることで初めて、自由意志で治療または実験を受けられることになる。
臨床試験/治験についてICの必要性を勧告したヘルシンキ宣言は、ナチス・ドイツの人体実験への反省から生まれたニュルンベルク綱領をもとにしている。
日本では1997年(平成9年)の医療法改正によって、医療者は適切な説明を行って、医療を受ける者の理解を得るよう努力する義務が初めて明記された。
説明・理解のない治療で侵襲を与えた場合、近年の日本では民事訴訟で医療従事者側に対する損害賠償が認められる傾向にある。説明・理解のない治療は刑法上の傷害罪や殺人罪に当たるという主張もある。ただし、現在の日本では、これらの容疑で医療従事者が起訴されることは非常に例外的である。