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http://mainichi.jp/select/biz/news/20090224ddm010020105000c.html
ニュースナビ:かんぽの宿 疑惑招いた不透明入札
<NEWS NAVIGATOR>
鳩山邦夫総務相がかけた「待った」の一声で、日本郵政はオリックス不動産との「かんぽの宿」一括譲渡契約の白紙撤回に追い込まれた。しかし、入札をめぐる多くの疑念は解消されず、旧日本郵政公社時代の不動産たたき売り問題も浮上している。総務省は真相解明に向け、日本郵政が16日提出した詳細な資料の分析に入っており、日本郵政でも25日から第三者検討委員会による売却ルールの見直し作業が本格化する。入札は総務相が指摘するように「不正な出来レース」だったのか。疑惑の焦点と今後の行方を展望する。
■NAVI1・条件変更
◇疑惑招いた不透明入札
疑問の始まりは、売却先が小泉政権時代に政府の総合規制改革会議議長などを務めた宮内義彦会長率いるオリックスの子会社だったからだ。鳩山総務相は宮内会長が郵政民営化の議論にかかわったとして、「国民が出来レースだと思う可能性がある」と問題視した。
かんぽの宿の入札手続きは、全従業員の雇用継続などのため、70施設とスポーツ関連施設「ゆうぽうと世田谷レクセンター」、9社宅の一括譲渡を条件に08年4月に始まり、1次、2次と最終審査の3段階で行われた。最大の疑問が、08年10月31日の2次入札の後で、レクセンターを売却対象から外したことだ。レクセンターの最新の帳簿価格(08年9月末時点)は62億円。敷地面積は2万4665平方メートルで、マンション用地にも転用しやすい目玉物件だ。
2次入札でオリックス不動産が23億6000万円、対抗馬のホテルマネージメントインターナショナル(HMI)が43億5000万円の価格を付けた。だが、日本郵政は「評価が低すぎる」としてレクセンターを対象から外し、それ以外の施設の価格を引き上げるよう2社に申し入れた。それに応じたオリックスが最終的に落札した。
2次入札での提示額はオリックスが105億2200万円と負債19億7800万円の継承、HMIが105億5000万円(負債は継承せず)だった。日本郵政幹部は「M&A(企業の合併・買収)の競争入札では、途中の条件変更は珍しくない」と説明するが、鳩山総務相は「レクセンターを外せば、オリックスが有利なのは明らかだ」。
さらに、最終審査で価格を提示したのが、オリックス1社だけだったことが後で判明し、疑問が深まった。日本郵政は当初、「残った2社のうちオリックスの価格が数十億円高かった」と説明していたが、実際はHMIが価格を示したのは2次入札まで。日本郵政がHMIの最終提示額と公表していた61億4600万円は、2次入札の提示をオリックスの最終提示と同じ条件で日本郵政側が独自に計算したものだった。鳩山総務相は「2社がそろわないと入札とは言えない」とヒートアップした。
日本郵政の西川善文社長は「疑いを持たれるようなことはまったくない」と断言。オリックスも「公正な入札手続きで選ばれた」としている。だが、M&Aに詳しいアドバイザー会社「フレイムワーク・マネジメント」の津田倫男代表は「入札のどの段階で何をやったのか、情報公開が不十分で透明とは言えない」。法政大の五十嵐敬喜教授(公共事業論)も「競争の基準もはっきりしないし、疑問が多すぎる」と批判が多い。
■NAVI2・売却価格
◇赤字盾に低額評価
売却価格についても疑問が浮上した。世田谷レクセンターを除いたかんぽの宿70施設と社宅9件のオリックス不動産への譲渡価格は約109億円。だが、79施設は土地購入代が約295億円、建設費が約2107億円。鳩山総務相は「2400億円かけて作ったものが100億円なんてバカなことはない。個別に売却すればもっと高く売れる」と憤った。国会の質疑でも「簿価が安すぎるのではないか」との質問が相次いだ。
さいたま市の「ラフレさいたま」は客室187と宴会場12、プール、ジムを備える大型施設だが、簿価は約15億6000万円。埼玉県の上田清司知事は路線価や課税評価基準に基づく試算で100億円以上の価値があり、「単に赤か黒かで片付けるのは極めてずさんな、地域を無視したやり方だ」と批判した。
日本郵政は08年9月末の79施設の簿価は約123億円で、事業の資産から負債を引いた純資産は93億円となるため「年40億〜50億円の赤字や全従業員3240人の雇用維持を考えると、譲渡価格は適正」と主張。東京都内の不動産鑑定士には「民間の保養施設はマンションなどへの転用が難しく、譲渡価格は投資額の1割以下でもおかしくない。109億円と聞いても違和感はない」との声もある。
政府が国有財産を民間に売却する場合は、会計法に基づく一般競争入札となる。日本郵政は民営化して同法の適用がなくなり、今回の入札は民間のM&Aの手法で行った。
西川社長は「経済情勢が悪化するなかで焦りはなかったか、地元への配慮は十分だったか、反省すべき点はあった」と頭を下げたが、入札や価格は問題ないとの立場は変えていない。
■NAVI3・高値転売
◇「1万円」6000倍に
民営化前の日本郵政公社が07年3月に一括売却したかんぽの宿や社宅など178施設のうち、121件が既に転売されていたことが国民新党の調べで分かっている。「1万円」などの評価額が付いた施設が、後に高額で売られたケースも発覚し、資産査定や売却方法が適切だったかという疑念を拡大させた。
鳥取県岩美町の「鳥取岩井簡易保険保養センター」は、鳥取市の社会福祉法人「フォイボス」が6000万円で買い取り、老人ホーム「里久の里」に改装した。
06年度に4200万円の赤字だったこの施設を、複数の旧日本郵政公社物件ともに購入した不動産会社「レッドスロープ」(東京都)は宿泊施設として「1万円」と評価した。この評価額を知らなかったフォイボスは「今さら、どこにも文句は言えない」と話す。
沖縄東風平レクセンター(沖縄県八重瀬町)は評価額「1000円」。沖縄尚学高校を運営する学校法人尚学学園に4900万円で転売され、野球練習場などになった。名城政次郎理事長は「こんな取引は非常識きわまりない」と感想を話す。
では売却されたかんぽの宿は、いずれも立て直しが不可能な施設だったのだろうか。
大阪市中心部から車で約1時間の山あいの「能勢温泉」(大阪府能勢町)。年約8000万円の赤字だった「かんぽの宿能勢」は売却後、民間の経営努力で08年9月期決算では約500万円の黒字に転換した。一般競争入札で2億600万円で落札した業者は、露天風呂の新設など改装に8000万円をかけた一方、「年収1000万円の支配人はいらない」と、人件費をかんぽの宿時代の3分の1に。郵政公社の外郭団体に委託していた売店も直営にしたという。
■NAVI4・今後
◇売却期限見直しも
日本郵政が発足させた第三者検討委員会(委員長=川端和治・元日本弁護士連合会副会長)は、25日から資産売却のルール見直しの議論を本格化する。問題となった入札の内容を検証し、適切に売却先と価格を決める方法を数カ月かけて議論する。日本郵政は同委の結論に基づき、一括売却か施設ごとに個別売却すべきかなどを判断する方針だ。
だが、日本郵政は年間40億〜50億円規模の赤字事業を当面、抱え続けることになった。日本郵政によると、譲渡の対象になった70施設の07年度の客室稼働率は70・7%と高かったが、黒字は11施設だけ。70施設全体では16億2200万円の経常赤字、本部機能を含めると07年度は40億円の経常赤字だった。
鳩山総務相は12年9月末までと法律で決まっているかんぽの宿の売却期限を見直す可能性にも言及しているが、日本郵政の将来の株式上場に足かせともなりかねない。国民の不信を招いた西川社長の経営責任も注目される。入札の疑念を払しょくできなければ、6月までの任期と絡んで進退問題にもつながる。
また、一連の問題には与野党とも敏感に反応。自民党内では郵政民営化全体の見直し議論に飛び火した。麻生太郎首相の「民営化に賛成じゃなかった」発言や小泉純一郎元首相の「笑っちゃう」という首相への反論など、麻生政権の求心力が低下する中で「郵政民営化=構造改革」をめぐる路線対立が激化しており、今後の行方は混とんとしている。
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この特集は川口雅浩、前川雅俊、須佐美玲子、石川貴教、和田憲二、松本杏、宇多川はるか、朴鐘珠が担当しました。
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