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http://www.zakzak.co.jp/gei/200901/g2009013031_all.html
格差社会を招く悪魔システム…中谷巌、改革派から転向
「資本主義はなぜ自壊したのか」(集英社インターナショナル)
世界的な不況が深刻化する中、米国流構造改革派の急先鋒として知られた経済学者、中谷巌氏の「懺悔の書」が波紋を広げている。改革派の“教義”であるグローバル資本主義や市場原理こそ、格差社会を招く「悪魔のシステム」だと、反省の上で指弾するショッキングな内容ゆえだ。その真意を尋ねた。
−−転向の経緯は?
「小渕内閣の経済戦略会議に参画したころからおかしいと思い始めました。10年間観察を続け、日本の歴史や文化を勉強した結果、経済の論理だけで社会を語ってはいけないという考えになりました。改革の旗振り役として悩みましたが、ここまで経済や社会がおかしくなると黙っているわけにはいかなかった」
−−何が誤っていた?
「レーガン、サッチャー時代から、小さな政府で少ない規制という新自由主義的発想が始まり、日本も小泉改革などで乗っかりました。しかし、ブラックマンデーや日本のバブル、アジア通貨危機など2、3年おきにバブル生成と崩壊が続き、100年に1度という大恐慌まで来た。そんな経済システムはおかしいのです。グローバル資本主義にはバブルや所得格差、環境破壊などの副作用があります」
−−経済の現状は
「溶岩が流れ落ちている最中で、悪化はこれからが本番。4、5年続くと考えています」
−−日本の歴史や文化の特色とは
「よその国はエリートが庶民をどう働かせるかという階級社会ですが、日本は庶民ががんばってきた例外的な国です」
−−現状では格差拡大やリストラが進んでいる
「グローバル経済では競争に勝った企業はいくらでも儲けられる半面、日本の普通の労働者は中国の労働者と競争して人件費を切り下げざるをえない。日本の会社の雰囲気は悪くなっており、短期的に労働コストを下げても長期的には競争力を削ぐのではと心配です」
−−“自己責任”という言葉については?
「人間には能力の差も運不運もある。行き倒れの人を自己責任だと放っておくわけにはいかないでしょう。日本は貧困率が上昇し、シングルマザーに世界一厳しいのに全然対策をしていない」
−−還付金付き消費税を提言していますね
「たとえば消費税率を20%に引き上げると同時に、全国民に毎年40万円ずつ還付する制度です。年収200万円の人の消費税負担は実質ゼロで、200万円以下の人には所得補填になるので、貧困対策にもなります」
−−世界経済の行方は
「2、3年で世界の経済システムはがらりと変わると思います。成長率が1%下がっても、より豊かな生活があるかもしれない。日本人も先進国の一員として、幸せとは何か、根源的に考え直す必要があります」
■資本主義はなぜ自壊したのか−「日本」再生への提言(集英社インターナショナル、1785円)
米国主導のグローバル資本主義が金融危機や格差社会、環境汚染の元凶だと批判し、日本の米国後追い・弱者切り捨て型改革に異を唱える。著者の思想が変化した経緯も率直に明かしている。
【なかたに・いわお】 三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長。多摩大教授、一橋大名誉教授。1942年大阪出身。細川内閣の「経済改革研究会」委員や小渕内閣の「経済戦略会議」議長代理を歴任する。
ZAKZAK 2009/01/30