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「医師会と自民の蜜月は終わった…らしい」 狂った歯車、不満が表面化
2月2日8時2分配信 産経新聞
自民党と日本医師会(日医)の蜜月は終わったらしい−。日医は自民党最大の支持組織。その動向をめぐるウワサの注目度は高い。
関心を引いたのは、ある「反乱」だった。
会員2641人の茨城県医師会の政治連盟「県医師連盟」。昨秋、後期高齢者医療制度の廃止を訴え、県内の7選挙区すべてで民主候補を推薦することを決めた。狙いが、小泉純一郎政権下で同制度を推進した厚労族のドン、元厚相の丹羽雄哉(茨城6区)だったから驚きが広がった。
医師収入に直結する診療報酬引き下げなど、医療費抑制策への不満が背景にあるが、県医師会と距離を置く丹羽への反感で始まった動きが全県に及んだ形だ。
丹羽の対抗馬が元厚生官僚の大泉博子というのも皮肉だ。大泉は「後期高齢者制度の廃止は医師から付託された仕事」と語る。昨年11月には、県医師連が所属会員に「民主党」と書いたノボリ旗を配った。同県石岡市内の丹羽事務所の秘書がいう。「野党は口当たりの良いことをいえばすむが、政権党はそうはいかない」
自民と日医。どこで歯車は狂ったのだろうか。
□ ■ □
出発点は2つある。
一つは元首相の小泉純一郎。社会保障費の伸びを抑えようとした小泉改革で、戦後一貫して上がってきた診療報酬を初めて下げた。それが7年前の平成14年。自民が日医の要求を丸のみできる時代が終わっていたのだ。
もう一つは、16年に医師会長に就任し、異例の1期で退任した植松治雄や、現会長の唐沢祥人の擁立劇にみられる日医内の内紛だ。
茨城のケースについても「内紛劇の余波にすぎない。日医と自民党の蜜月は終わったわけではない」(自民党議員)との解説もある。
実は、唐沢が日医会長に就任してから、表面上は自民党と日医の関係は改善した。昨年は8年ぶりに診療報酬もプラス改定となった。だが足元で、現場の医師たちは別の感覚で動き始めていた。
医師が「反自民」を口にしやすくなったのは後期高齢者医療制度が契機だ。
栃木県の日医支部が昨秋実施した調査では、地元医師で民主支持は54%、自民支持は34%と民主が過半数を占めた。九州でも同様な数字が出た。「医療崩壊は自民党のせいだ」。医師たちはそう説明した。
数字を受けて、支部レベルで自主投票や民主推薦の動きが広がった。民主党幹部は「日医はもう民主党側だ」と語った。
□ ■ □
関係がぎくしゃくすると言葉がとがる。
「医師会の推薦はいらないっていうんだな」。元厚労相の尾辻秀久は、自民党の会議で同僚議員をこう恫喝(どうかつ)した。
昨年11月、首相の麻生太郎が言ってしまった。
「医師は社会的常識が欠落している人が多い…」
首相は謝罪したが、医師がさらに自民党を批判する絶好の口実となった。
日医執行部が表面上回復した「蜜月」。だが執行部は、もう現場をコントロールできなくなっていた…。
民主党政権になったら、日医はどうするのか。
厚労族議員の一人はこう推測する。「日医は当分様子見だ。だが民主党のマニフェスト(政権公約)を読めば、民主党が自民党より社会保障費を抑制しようとしていることはよくわかるはず。結局、日医と民主党は相いれない」
首相は昨年12月、小泉が掲げた社会保障費の年間2200億円の伸びの圧縮目標を、大半棚上げして予算を組むことを決めた。
「自民から日医へのラブコールなんだ」。そんな解説が永田町を飛び交った。
直後の日医の会見。常任理事の中川俊男は言葉を選びながら話した。
「日本医師会には日本の医療を守るため政権与党と協議するルールがある。そういう意味で今、民主党と協議するつもりはありません」
そして付け加えた。
「政権与党にはしっかりしてほしいんです。ドキドキハラハラさせられるのは困る」=敬称略
(倉田耕一、藤原由梨、柏崎幸三、桑原雄尚、斉藤太郎、金子聡)
◇
≪データBOX≫
「日本医師会の集票力が落ちている」と言われる。
会員16万人の日医。「ケンカ太郎」と異名を取った武見太郎が会長時代の昭和52年の参院選全国区では、日医の推薦候補は130万票を獲得していた。だが最近の参院選はいずれも20万票台。19年には武見氏の息子、敬三氏が18万票しか得られず落選し、凋落(ちょうらく)を印象付けた。
集票力が落ちたので、自民党が日医の要求をのまなくなったのか。財政難で日医の要求が通らなくなり、日医の影響力が落ちたのか。地元の医師自身が集票力を失いつつあるのか。
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