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http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20090113-02-0701.html
小沢政権「閣僚名簿」の意外な顔ぶれ(2/2)
2009年1月13日 文藝春秋
Xデーに備え兵力を蓄える一時的な撤退であり、戦意喪失どころか、ますます盛んというのが裏の顔だった。塩崎らのグループが描くシナリオはこうだ。
麻生内閣の支持率低下は年明けの通常国会中に行き着くところまで行く。一桁台に落ち込み退陣要求に抗しきれなくなった二〇〇一年の森喜朗内閣と同様、来年度予算成立前後に麻生は立往生する。自らギブアップしなければ、国会議員と都道府県連代表(各一人)の過半数の要求で臨時総裁選を実施できるとの事実上のリコール規定を初適用して新総裁を誕生させ、新首相の下で衆院解散・総選挙になだれ込む――。
伊吹らが否定する「四人目の総理」シナリオである。中川が描くタイムスケジュールもほぼ同様。ただ、このシナリオには致命的な欠陥があった。ポスト麻生は誰か、その新総裁がかつての小泉純一郎のように「救世主」たり得るのかという最も肝心な部分が空白なのである。
前回総裁選で麻生に敗れた四候補の中で、傍目にもやる気満々だったのは幹事長代理の石原伸晃だ。十二月五日昼にグランドプリンスホテル赤坂で開いた自身のセミナーで、石原は麻生を支えるべき執行部の一員でありながら「自民党議員の七、八割は麻生政権で選挙して与党でいられるのか疑問を持っている。自民党も麻生政権も崖っぷち」だと公言し、麻生首相のまま衆院選に突入していいのかと公然と党内に問題提起したのである。ポスト麻生に名乗りを挙げる気持ちがあればこそだった。「最近の石原は完全に腰が浮いている。『私は、私は』と総裁選の最中のような物言いに戻っている」。山崎派議員の証言だ。同様に、塩崎、渡辺、さらには中川秀直も展開次第では総裁選に色気があるのは間違いない。
厚生労働相・舛添要一を担ぎ出す動きもある。夏まで衆院厚労委員長を務めていた茂木は十二月十六日、赤坂の鰻料理屋「重箱」で余人を交えず舛添と懇談した。この席で茂木は次のようなメッセージを舛添に伝えた。
「山ほど問題を抱える厚労省を担当しながら、常に世論の高い支持を得ているのは驚嘆すべきことだと常々思ってきた。委員長として一年間、間近で接して、いま自民党の危機を救えるのはあなたしかいないと確信するに至った。チャンスが巡ってきたらぜひ逃げないでほしい」
舛添は礼を述べながらも、「今はただ閣僚として全力投球するだけ」と慎重な発言に終始したとされる。
鳩・菅の官房長官争い
民主党代表・小沢一郎は、宿敵の体たらくを前に勝利を確信したのか、最近の言動は自信に満ちあふれている。
十二月九日、小沢は広島市で地元の連合幹部と懇談した。「大蔵も目ざといよな。俺のところによく来るんだ」。小沢は席上、財務省幹部が日常的にレクチャーに訪れるようになったことを嬉しそうに明かした。赤坂の小沢事務所に日参しているのは主計局次長の香川俊介。竹下内閣の官房副長官時代の小沢に仕えた元秘書官である。政権交代の可能性が極めて高いと読んでの先行投資。小沢にすれば、霞ヶ関の雄・財務省から政権交代のお墨付きを得たような気分だった。
では小沢内閣はどんな顔ぶれになるのだろうか。「次の内閣」の規定では、政策調整の要となる官房長官には政調会長が座ることになっている。だが参院議員で党務経験も少ない直嶋正行には荷が重すぎるとの見方が強い。「官房長官は実質的に閣内ナンバー2。菅さんも鳩山さんも『俺しかいない』と思っているが、小沢さんはどちらにも言質を与えていない」(幹部)のが現状である。
菅・鳩以外で主要閣僚に有力視されているのは、小沢の信任が厚い元蔵相・藤井裕久の財務相への起用。次期衆院選に出馬せず引退することを決めているが、民間人閣僚として起用されるとの見立てだ。現衆院副議長・横路孝弘も小沢との付き合いが深く、重鎮として入閣を要請される可能性が大と見られている。
連立友党からの入閣候補は各党とも小沢の「お友達」を押し込むと見られる。社民党副党首・又市征治、国民新党代表代行・亀井静香、新党日本代表・田中康夫。無所属からも郵政造反組の元経産相・平沼赳夫や、テレビ出演などで知名度の高い江田憲司の起用、意外なところでは自民党離党を条件にした渡辺喜美の一本釣りを予想する声もある。平沼、江田、渡辺の各選挙区について小沢が公式、非公式に「公認、推薦候補を立てなくていい」と指示しているとの情報がその根拠になっている。民間人では現在もブレーンとして活躍している元財務官の早大大学院教授・榊原英資の金融担当相などへの起用が有力視されている。
衆院選での単独過半数獲得は難しいと踏んでいた小沢は一時、選挙後の政界再編を真剣に模索していた。自民党をいかに割るか。平沼や新党大地代表・鈴木宗男との連携も、二人が持つ自民党との太いパイプがいざという時に活きるという計算が働いていた。だが、衆院選に大勝できるとの予感は自民党分断―政界再編への関心を薄れさせていた。
十二月十一日夜の民主、社民両党幹部の会食で、小沢は又市の質問に答える形で自民党工作の一端を明かした。
又市「報道によると加藤、山拓と会ったらしいが、あの二人には誰も付いてこないんじゃないか」
小沢「会ってないが、会っても意味はない。加藤は一人分、山拓は選挙でうちが勝つから〇・五人分にしかならない」
又市「誰なら組める? 渡辺喜美か」
小沢「いや、あれも決断できない」
小沢は「中川は小泉時代の頭のままだから駄目」「石原は親父の言うことばかり聞いているから駄目」とばっさばっさと切り捨てた。もはや分断工作の必要はない、放っておいても自壊する。それが小沢の認識だった。
一月五日に召集される〇九年の通常国会。麻生の行く手には険しい山が幾重にも待ち受けている。第一の関門は一月中旬に見込まれる〇八年度第二次補正予算案とその関連法案の衆院採決だ。自民党内では「評判の悪い定額給付金は棚上げしても構わない」との声が少なくない。だが十七人以上の造反者を出せば、衆院再可決に赤信号がともり、政権の屋台骨は年明け早々から大きくきしむことになる。(文中敬称略)
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。