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2010.01.07(Thu)
読者のみなさん、明けましておめでとうございます。今年もロシア世界では様々なことが起こると思いますが、それに先立ち、今回は2009年がロシアにとってどんな年であったか、内側と外側の両方から振り返ってみたいと思います。
通貨危機の1998年より辛かった2009年
ロシアで世論調査を実施している大手民間調査会社のレワダ・センターは、ロシア国民が2009年をどのように見ているかという調査結果を12月末に公表しました。
最近の12年間では2009年が「一番大変な年」と答えた人の割合が最も多く、20%にも達したそうです。これに対して、ルーブル危機が起きた1998年を「一番大変な年」として位置づけた人の割合は12%にとどまり、調査関係者を驚かす結果となったようです。
確かに、2009年はウクライナとの天然ガス紛争で東ヨーロッパ中が震え上がったことに始まり、シベリアでの大きな水力発電所事故、モスクワ〜サンクトペテルブルグ間の幹線鉄道のテロ爆破事件など大変な事件がいくつも起こった年でした。
しかしながら、原油価格が1バレル当たり12ドルにまで下がり、ルーブルが3倍以上に切り下がった1998年の金融危機の時よりも2009年の方が「辛かった」と答えているのはどういう理由からでしょうか。
1998年当時のロシアを振り返れば、1人当たりのGDP(国内総生産)は2009年の4分の1以下で、国民全体が貧しい生活を強いられていた時代です。ロシア人の多くが生活に辛さを感じていたはずです。
恐らく、その理由は変化率の激しさにあるのではないでしょうか。
急激な成長の後だったためにダメージが大きかった
まず、1998年当時は、皆がそもそも一様に貧しく、対外的な金融危機から来る生活苦の影響は、一部の人には衝撃的だったかもしれませんが、多くの国民にとっては貧しさの延長線上としてとらえられていたのではないでしょうか。
さらに、今回の世論調査では基本的に勤労者を対象にしているので、98年の金融危機の時にはまだ若く、「親の世代の出来事」として、大半の人にとって直接の当事者ではなかったことも背景にあるでしょう。
これに対して今回の危機では、彼らが直接の当事者となっただけでなく、ロシア経済の復興でいったんは所得が10倍にも膨らんでいました。中流階級 の層が急速に拡大、1バレル147ドルにまで高騰した石油価格のバブルに沸いていた2008年7月までの「豊かな生活」の記憶があまりに鮮明でした。
それが一転、経済が大きく落ち込みました。その落差に顎然としているロシア人の姿が目に浮かびます。そして、経済危機で衝撃を受けたロシア人は家庭に回帰していくことになるのですが、このことはまた後で述べることにします。
その前に、2009年の国際世界は「ロシアのためにあった」という点について説明してみたいと思います。「そんなこと聞いたことがない」。そう言わず、少しお付き合いください。
2009年、世界はロシアに大きなプレゼントを与えた
どうして、2009年が「ロシアのためにあった」かと言いますと、ロシアはある意味、何の努力も苦労もしないで、ロシアに関係する主要な国々が「リセット」という形でロシアに合わせてくれたからです。
まずは米国。
バラク・オバマ大統領は、就任早々にロシアとの関係を「リセットする」と言っていましたが、誰もその中味は分かりませんでした。
しかし、2009年9月にはミサイル防衛計画(MD)の中止を発表、チェコにレーダー基地、ポーランドに迎撃ミサイル基地を設置する計画を白紙に戻しました。ジョージ・ブッシュ政権とそれまで鋭く対立していたトゲが取れた形です。
次にEU。
グルジア紛争を調査してきたEU特別調査委員会は、2009年9月末に、紛争の口火を切ったグルジアの責任を認定、ロシアは大喜びします。そし て、ほどなくEU議長国であったスウェーデン、これに続いてデンマークがバルト海の海底を通してドイツへの向かうノース・ストリーム・ガスパイプラインの 自国領内通過を承認します。
トルコとスロベニアも、EUのナブッコ・パイプラインに対抗してロシアが打ち出していたサウス・ストリーム・ガスパイプライン・プロジェクトの自国領内通過を承認しました。
最後は日露関係です。
麻生太郎首相が率いていた自民党政権とは関係が悪化していたのですが、民主党が政権を取り、鳩山由紀夫首相が誕生して自動的にリセットがかかりました。ロシア政府は鳩山政権を歓迎しています。
ただ本格的な関係改善に向けた話し合いはこれからということが、2009年12月末に行われた外相会談でも明らかになりましたが、これまで以上に悪くなることは考えられません。
どうですか?
こうして見てくると、2009年は外交の面においては、本当にロシアはラッキーだったと言えるのではないでしょうか。
「不幸の助けがなければ、幸福は訪れない」という諺がロシアにあります。恐らく、日本の「禍を転じて幸となす」と同じ意味合いだと思います。
ドミトリー・メドベージェフ大統領は、折からの経済危機をロシアの経済改革に利用しようとしています。つまり、これまでの石油やガス頼みの経済から脱却し、「イノベーション」を目指した近代的な経済構造に変換していこうというものです。
もちろん、これまで誰もがそうすべきと思っていたことですが、あまりにも油価が高騰し、苦労なくオイルマネーが入ってくるので、どうしても「おざなり」になっていたものです。
これから本当にロシアが資源輸出依存から脱却できるのか、メドベージェフ大統領は新しいロシアの経済体制を構築できるか注目していく必要があります。
さて、そんな中で、ロシア人の生活にも変化が現れ始めたようです。全ロシア世論調査センターによると、調査対象になった人たちの9割以上がお正月の祝いをするという結果が出たそうです。
しかも、経済危機を理由に73%の国民は家族、友達に囲まれて家庭で正月を過ごすことにし、16%は大晦日の夜に友達の家に遊びに行きます。調査 対象になった人達のうちわずか1%だけ海外旅行を選び、レストラン、クラブのパーティでお正月を過ごすと答えたのは2%足らずだったそうです。
また2009年は、以前よりお正月の祝い予算は節約する人が多く、節約の対象になったのは親戚と友達のために買うプレゼントです。一方、同世論調 査によるとお正月の食卓は節約の対象とならなかったとのことです。相変わらずロシアのお正月の食卓は豪華なものであることが想像できます。
ロシア人の家庭回帰の様子が見て取れます。人々が仕事最優先から家庭に戻ってくれば、自然とロシアの少子化問題も解決に向かうかもしれません。