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【オピニオン】金正日の独裁体制を崩壊させよ
ダニエル・ブルメンソール、レスリー・フォルガーチ
[Wall Street Journal:http://jp.wsj.com/US/Politics/node_17139]
今年1月、オバマ米大統領が就任すると、北朝鮮の金正日総書記はさっそく核実験を実施し、いつものやり方で祝福した。オバマ大統領は6カ国協議を延期し、厳しい制裁を課すという断固たる対応策を講じた。だが1年を経た今、オバマ政権は協議再開に向けて準備を進めている。
それは誤りかもしれない。米国外交筋が、北朝鮮を説得して交渉の席に連れ戻そうとする過程で、はるかに壮大なドラマが明らかになりつつある。隠者の王国と称される北朝鮮内部の深刻な分裂だ。今度こそ金正日政権は倒れ、オバマ政権はうまく立ち回ることができるかもしれない。
金総書記は、三男の金ジョンウン氏を自らの後継者に指名したときに、ついに一線を越えてしまったようだ。ジョンウン氏は先月、自国通貨ウォンのデノミネーション(通貨呼称単位の変更)を発表した。突然のデノミによって、多くの国民はわずかばかりの蓄えを失い、小規模な民間部門は息の根を絶たれた。抗議活動や暴動が発生し、混乱の広がりを懸念した北朝鮮政府は人民保安相を中国に派遣し、脱北者の受け入れを拒否するよう要請する事態となった。
さらに北朝鮮政府は、暴動の拡大を恐れ、国民が新貨幣に交換できる旧貨幣の限度額を引き上げるという、異例の緩和措置に踏み切った。これは貧困に苦しんできた北朝鮮の国民に、政府への反抗心が残されていたことを示す事例といえよう。
米政府は、金総書記を救済せずに、自滅させるべきだ。金政権の崩壊は、米国にとって2つの目的、つまり北朝鮮の非核化と朝鮮半島の統一を達成するための好機といえる。交渉に何十年も費やした結果明らかになったのは、いくら援助を施したところで、北朝鮮は核実験をやめる気はない、ということだ。今月初旬に行われた、米オバマ政権のボズワース北朝鮮担当特別代表との核問題をめぐる協議で、北朝鮮側は「両国の見解の相違が狭まった」と発言した。これも、単なる外交上の常套手段であって、土壇場で核なき世界の構想を受け入れたわけではない。
問題となるのは、朝鮮半島の統一計画を進めつつ、金政権を崩壊させることと、核武装強化を図る危険な金体制を支えることのどちらのリスクが大きいか、ということだ。米政府と同盟国の計画が優れたものであれば、前者の方が成功する確率が高い。
韓国と米国は、長年にわたって北朝鮮崩壊後の緊急対応策の拡充に努めてきたが、他にもすべきことがある。それは日本政府との連携強化だ。朝鮮半島の将来を深く懸念する日本は、そこに中国の傀儡(かいらい)国家が誕生することをよしとしない。
これらの三カ国同盟は、短期と長期、両方の目標で合意しなければならない。短期的には、同盟国は朝鮮半島から大量破壊兵器を排除し、「核流失」を防ぎ、必ず発生する人道主義者や難民に関する問題に対処しなければならない。長期的には、韓国政府主導の下で、朝鮮統一への道筋を描くことが必要だ。
金政権を崩壊させることには確かにリスクが伴う。カギを握るのは中国だ。中国政府は、同国の北朝鮮崩壊後の対策については非公開を貫いており、北朝鮮の「安定化」のために人民解放軍を派遣する可能性を示唆している。温家宝首相と梁光烈国防相は、最近相次いで平壌を訪問している。
中国が北朝鮮で独断的な行動に出るようなことがあれば、アジア諸国に大きな悲劇をもたらすことになる。
米国政府は、中国に「責任ある利害関係者」として振舞うことを期待するよりも、緊急対応計画と、北朝鮮の政権を狙うものとしての知識を、中国と共有することを最優先事項とすべきだろう。もしこの試みがうまくいかなかったら、米国は中国政府に同盟の目的が北朝鮮安定化であることを明確に示さなければならない。中国政府の選択肢は、協力するか、黙って同盟国による朝鮮統一を見守るか、のいずれかに絞られる。オバマ政権のこのところの中国への働きかけを成功させるためには、中国政府との交渉をすぐにでも開始しなければならない。
オバマ大統領が最も避けたいことは、比較的安定している地域での軍事的危機の発生だ。同盟国の緊密な計画は、北京の協力確保のために犠牲にされなければならない。短期的には外交上の不和が生じるかもしれないが、長期的には平和と安定をもたらす。どちらを選ぶべきかは、いうまでもない。
(ブルメンソール氏は、在ワシントンDC アメリカン・エンタープライズ研究所のレジデント・フェロー、フォルガーチ氏は同研究所のリサーチアシスタント)
原文: Let the Kim Regime Collapse
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