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貿易戦争は2010年の景気回復を脅かす−シンガポール首相が寄稿
【Bloomberg.co.jp:http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=awLNsuM1hark】
12月30日(ブルームバーグ):2009年は恐れられていたほど悪い年にはならなかった。各国政府の決断と20カ国・地域(G20)の協調が金融の崩壊を阻止し、信頼を回復させた。
最悪期は過ぎたものの、未来は各国政府が今回の危機から正しい教訓をくみ取り、より深く困難な問題に対し効果的な協調措置を講じることにかかっている。今年の浮き沈みから、われわれは何を学んだのだろうか。
第1は、経済が完全にグローバル化しているということだ。アジアから欧州、米国まで、すべての国はつながっている。世界的な嵐を避けられる港など、どこにもない。だからといって、小国も含め各国が危機に際してなすすべがないということではない。政府は自国経済を安定させる措置を取れるし、取らなければならない。国民を守り、景気回復の条件を整えなければならない。
第2に分かったことは、アジアの勢いに衰えはないということだ。危機にかかわらず、アジア諸国は変貌を続けている。中国は内需主導の経済へと転換しつつある。インドもまた、危機をかなりうまく乗り切った。東南アジア各国はこの2大経済からの恩恵にあずかっている。10カ国から成る東南アジア諸国連合(ASEAN)はアジアの成長物語の一員となるため、経済共同体の構築に努めている。
保護主義
第3に、保護主義が依然として、景気回復と将来の成長への脅威であることが判明した。景気不透明感と高失業率の時代に労働者が不安になり各国が自国の産業と雇用を保護したくなるのは当然だ。米国の政治的空気は自由貿易に敵対的だし、欧州も同様の圧力に直面している。幸いなことに、今のところ各国は自らに打撃を与える保護主義的措置、あるいは貿易戦争をほぼ回避している。失業率が高止まりしても、この道を貫かなければならない。欠点があるにしても、経済統合と自由市場は引き続き、繁栄と成長への最良の道だ。
第4に、制約のない自由市場の壮大な失敗を目撃したからといって、逆の極限へと振れることを避けなければならない。政府や当局が金融機関への規制や監督体制を改善しシステム全体へのリスクを監視する必要があるのは明らかだが、人間の本性を考えれば、危機が全く起こらないようにすることは不可能だ。われわれにできるのは、その頻度を減らすことと、悪影響を小さくすることだけだろう。大衆の怒りを静めるための性急な法整備は副作用を生みかねない。将来の規制は、無責任な行動を抑えなければならないが、金融機関の創意工夫と考慮した上のリスクテークを妨げてはならない。
将来
将来について考えよう。来年は、緩やかだがプラスの成長がもたらされるだろう。この機を生かして、世界経済のより深い問題に取り組む必要がある。米国が消費と借り入れへの依存から脱するのに伴い、各国は世界の成長の新たな源を見つける必要がある。成長の恩恵を国民の間でより広く分け合うことも必要だ。そのために重要なのは教育と技能トレーニングだろう。
各国はまた、力を合わせて共通の大きな課題に取り組まなければならない。コペンハーゲンで今月開催された気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の結果は失望だったが、各国は時間をかけて取り組みを続けなければならない。
地球温暖化の影響が広がるのには何十年もかかるが、対策が奏功するのにもやはり数十年がかかる。そのような長期について考えることは政府にとっても有権者にとても難しいが、各国は今、行動を開始する必要がある。
そのためには国際協力と国際社会の安定的な秩序が欠かせない。アジア太平洋地域においては米国と中国の安定した関係が必須だ。幸いなことに、最近のオバマ米大統領の訪中は両国関係の良いスタートとなった。
そのほかにも、北朝鮮とイランの核拡散問題、イラクとアフガニスタンなど複雑で難しい安全保障上の問題がある。これらが2010年中に解決されることはないだろうが、各国が能力と活力を平和的かつ生産的な目的に振り向けられるよう問題に対処することが必要だ。(リー・シェンロン)