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やはり、COP15の顛末をみると、
昨今の中国をめぐる欧米諸国の動向は“第二のアヘン戦争” の様相を呈してきている。元の切り上げを巡る攻防、CO2を巡る攻防など、欧米諸国は従来のシステムに中国を組み込もうと躍起になっている。
ただ、これらの思惑はいずれ失敗する可能性が大だ。そうなると、中国を内から崩壊させようとする動きが活発にならないかどうか危惧するのは、私だけであろうか??
まりお
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今度は英国が中国に噛みついた。英閣僚が、コペンハーゲンのCOP15(気候変動枠組み条約締約国会議)において法的拘束力ある合意に至らなかったのは、中国をはじめとする一部途上国の非協力的態度が原因だと厳しく批判し始めたのだ。
中国側も黙っていない。外交部報道官が、「英国の一部政客の意見」は的外れだと強く批判して以来、両国間の非難合戦は半ば泥沼化している。今回は、日本や欧米諸国ではなく、中国自身の立場から、この「気候変動」なる問題の本質を検証してみたい。
中国のハイジャック
混乱したCOP15めぐり英中が批判合戦
英中論争の発端は英国のエドワード・ミリバンド・エネルギー気候変動大臣の発言だ。
12月20日付英有力紙ガーディアンに掲載された寄稿の中で、同相はCOP15で「中国が拒否権を行使」し、「温室効果ガスの削減に関する合意成立を妨害」した、「このようなハイジャックは決して許してはならない」と述べ、中国を名指しで批判している。
さらにゴードン・ブラウン首相も英国政府のホームページで、「ごく一部の国々に、よりグリーンな将来に向けた国際合意を人質に取り身代金を要求するような真似を許してはならない」とまで述べた。
英政府関係者は、ミリバンド大臣の発言が中国だけでなく、「スーダン、キューバ、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグアをも念頭に置いたものだ」とコメントしている。しかし、英側の怒りの主な対象が中国であることは誰の目にも明らかだろう。
中国側は強く反論
中国外交部の姜瑜報道官は直ちに反論した。ミリバンド大臣の発言は先進国の「責任逃れ」であり、「途上国の分断」が目的である、中国は「国際的コンセンサス維持に貢献」し、「途上国も支持する緩やかな合意」は実り多いものだったと述べた。
だが、中国側の主張にはやや無理がある。COP15でBASIC諸国(ブラジル、南アフリカ、インド、中国)が存在感を高めたのは事実だが、全会一致で支持されたはずの「合意」に今や南アフリカとブラジルが「失望」「反対」を表明し始めたからだ。
欧米諸国が最後までこだわったにもかかわらず、COP15の「合意」には法的拘束力がない。温室効果ガス排出量に具体的な削減目標はなく、国際的な検証メカニズムも導入されなかった。この結果はBASIC諸国にとってまさに「完勝」であったはずだ。
それにもかかわらずブラジルは「先進国からの支援額が不十分」としてこれに反対を唱え始めた。南アフリカも合意に法的拘束力がないことを非難している。「途上国も支持する合意は有意義」だったとする中国の根拠は徐々に崩れつつあるようだ。
12月23日付英フィナンシャル・タイムズは、「今回のCOP15での勝者は、『地球温暖化』懐疑論者、中国、デンマーク経済の3者であった」と皮肉っている。客観的に見て、中国は初期の思惑通り、COP15での「拘束力ある合意実現」を鮮やかに葬り去ったと言っていいだろう。(参考:フィナンシャル・タイムズのCOP15に関する翻訳記事)
温暖化問題は政治問題
「COP15は絶望的な失敗」、環境保護団体らが評価
こうした結果はある程度予測されたものだ。では、なぜ中国は国際的非難を承知でコペンハーゲンでの合意形成を「妨害」したのだろうか。
その疑問を解くキーワードは「科学的根拠」なる語の解釈だと思っている。
COP15文書の最大の目玉は、「地球温度の上昇を2度以内に抑えるべく温室効果ガス排出を削減することを念頭に・・・科学に基づく地球規模排出の大幅削減が必要である」ことに合意したことだ、と言われる。
しかし、「政治」がすべてに優先する中国では「純粋科学」などそもそも存在しない。科学者やNGO(非政府組織)が何と説明しようと、多くの中国人は「地球温暖化」問題自体を極めて「政治的なもの」と考えたに違いない。
北京市内の空気は不健康なレベル
科学と政治の関係を説明する一例として、北京の大気汚染状況を挙げよう。
12月23日付英フィナンシャル・タイムズによれば、北京市当局は12月15日の市内の空気を「素晴らしく良好」と発表したが、同日の在北京・米国大使館による独自測定では「不健康なレベル」との結果が出たという。
両者が異なる理由は簡単だ。中国側が大気中の荒い粒子の汚染物資だけを測定しているのに対し、米側は人体により有害な細かい粒子の汚染物質まで詳細に測定しているからである。
要するに、米側は科学的根拠に基づき有害物質を可能な限り詳細に調査しているのに対し、中国側では「北京の大気はきれいである」ことを発表するために測定対象・手法が「政治的」に決められるのだ。
中国の排出量大幅削減は不可能?
中国初の温室効果ガス削減目標値、20年までに40〜45%
中国の温室効果ガス排出については様々な研究があるが、今回は米コンサル大手のマッキンゼー社による報告書(=pdf)をご紹介したい。
同報告書によれば、2005年に二酸化炭素換算で6.8ギガトンだった中国の排出量は、このまま増え続ければ、2030年には14.5ギガトンにもなるという。
14.5ギガトンと言えば2005年の全世界の総排出量の約半分だが、これを2030年に7.8ギガトンまで抑えることも不可能ではないらしい。ただし、そのためには、(1)石炭依存の大幅低下、(2)原子力発電の大幅拡大、(3)新技術の導入、(4)炭素吸収の拡大が絶対に必要なのだそうだ。
いずれも言うはやさしいが、直ちに実行できないことばかり。科学的にはその通りかもしれないが、中国では政治的に受け入れ不能である。中国側が先進国の主張する「科学的根拠ある排出量削減」なる概念そのものを頑強に拒否してきた理由はここにある。
先進国の政治的陰謀
先進国の「科学的予測」なるものは、中国にとって自国の経済発展の可能性を事実上否定するに等しいものだ。中国の人口ボーナス(注:1国の人口構成で、子供と老人が少なく、生産年齢人口が多い状態。豊富な労働力で高度の経済成長が可能。多産多死社会から少産少子社会へ変わる過程で現れる。大辞泉より)は2015年にピークを迎えると言われる。
今後急速に高齢化する中国社会を考えれば、「科学」に基づいて中国経済を縮小させる選択肢などあり得ない。「温室効果ガス排出削減」という議論自体が中国に対する「政治的陰謀」にほかならないのである。
アヘン戦争以来170年、欧米が再び戦いを仕かけてきた。中国の政治指導者なら誰でもこう考えるはずだ。中国外交部報道官が「こうした先進国の政治的企みは決して実現しない」と述べたのも、単なるレトリックではなく、彼らの本音なのだと思う。
そうであれば、COPが16になろうと20になろうと、中国がこうした先進国の「科学的根拠」を本気で受け入れることは決してないだろう。仮に、将来中国側が政治判断によりこれを受け入れたとしても、それでゲームが終わるわけではない。
中国は、環境関連数値の隠蔽・改竄を含むあらゆる手段を用いてでも、先進国が仕かけてきた「地球温暖化問題」という新たな「政治闘争」を続けるに違いない。中国にとって、戦いはまだ始まったばかり。温室効果ガス排出問題が早期に解決する可能性はゼロに近いだろう。