★阿修羅♪ > 国際4 > 240.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
黒人に銃弾50発 無罪判決から1年 米警察 人種偏見根強く
2009年5月20日 朝刊
米ニューヨークで二〇〇六年、丸腰の黒人青年に警官が五十発の銃弾を浴びせ死亡させた「ショーン・ベル事件」。警察の根強い人種偏見を象徴する事件として語り継がれる。同事件で発砲した警官たちに無罪判決が下りてから一年。ベルさんの遺族らが、再発防止を願う「第一回ショーン・ベル・サミット」を開いた。(ニューヨーク・加藤美喜)
「あの日は、私の人生で一番幸せな日になるはずでした…」
事件現場に近い同市クイーンズの大学で先月下旬開かれたサミットで、ベルさんの婚約者だったニコールさん(24)が声を震わせた。
数時間後に花嫁になるはずのニコールさんを待っていたのはベルさんの悲報。「なぜ」を理解できないまま、「ショーンを返して」と叫び続けた。
残された幼い二人の娘を育てながら、裁判を闘った。しかし、警官らは無罪。「正義はどこにあるのか」。法廷で、再びニコールさんは崩れ落ちた。
判決は遺族だけでなく、警察の人種偏見や過剰な権力行使に不満を持つ多くの市民の抗議行動を招いた。今回のサミットには抗議デモを先導した黒人指導者のアル・シャープトン師や人権団体の弁護士、市議などが参加。「人種プロファイリング」と呼ばれる、人種で疑わしい人間を選別する違法な捜査方法に批判が集まった。
米国では、警官が主に有色人種の若い男性に的を絞り、路上で身分証明書の提示を求めたり身体検査をする「ストップ&フリスク」という職務行為が日常化している。
人権団体「NYCLU」がニューヨーク市警に情報公開請求して得た資料によると、任意身体検査の対象となった市民のうち、九割は黒人とヒスパニックだった。また、市警の〇七年統計によると、発砲された対象のうち61%が黒人、33%がヒスパニック。白人は4%だった。一方、発砲した警官は五割が白人だった。
会場では、若い黒人男性を中心に「何もしていないのに身体検査された」という体験談が続出。「ユダヤ人が十人歩いていても呼び止められないのに、黒人が三人歩いているとギャングと見なされる」との発言には、同意の拍手がわき起こった。
ニコールさんやシャープトン師は「ベル事件を機に、地域と警察の関係を改善したい」と願う。事件現場の通りを「ショーン・ベル通り」と改名し、「同じ悲劇を二度とくり返さないよう、人々の心に刻みたい」と話す。
パネリストには地元警察署長も参加。「警官教育の徹底を図る」と約束したが、一方で「現場の警察官は大きな緊張を強いられている」と述べ、常に危険に身をさらされている警察官の実態にも理解を求めた。
元刑事という男性は、会場の若者たちに「任意の職質を受けたら、反抗せず冷静に従ってほしい」と忠告。「ベルのような犠牲者はもう出したくない。生き延びてほしいんだ」と真剣に訴えた。
<ショーン・ベル事件> 2006年11月25日、ニューヨーク市クイーンズで、丸腰の黒人男性ショーン・ベルさん=当時(23)=が、おとり捜査中の警官らに不審人物と見なされ、銃弾計50発を発射されて死亡。友人2人も重傷を負った。ベルさんは結婚式前夜で、独身最後のパーティーを終え帰る途中だった。警官らはベルさんらが銃を所持していると思い、ベルさんが車を急発進させたため発砲したと主張。昨年4月、ニューヨーク州の裁判所は発砲警官3人に無罪を言い渡した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009052002000081.html