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上 告 理 由 書
平成27年6月30日
最高裁判所 御中
〒813-0015 福岡市東区香椎団地1-1-605
送達場所 同上
092-673-0771
上告人 松岡竹童
〒100-8977 東京都千代田区霞ヶ関1-1-1
03-3580-4111
被上告人 国
上記当事者間の福岡高等裁判所平成27年(ネオ)第58号国家賠償請求上告提起事件について,上告人は次のとおり上告理由を提出する。
上 告 の 理 由
第1 憲法の解釈の誤り
1 原判決は憲法の解釈を誤り,恩給制度と共済年金制度との基本的な性格
の異同に全く留意することなく,本件減額立法が憲法29条1項に違反し
ないと判示しているが,以下に列挙した理由により,本件減額立法による
既裁定受給者の財産権の変更は,当該財産権に対する合理的な制約として
容認されないものというべきである。よって,憲法29条1項違反(財産
権の侵害)は明白である。
(1) 恩給は,公務員が相当年限忠実に勤務して退職した場合,公務による
傷病のために退職した場合,又は公務のために死亡した場合において,
国が公務員との特別な関係に基づき,使用者として給付するもので,公
務員の退職又は死亡後における生活の支えになるものであり,税方式の
国家補償の性格を有する制度である。他方,共済年金は相互扶助の精神に基づき,保険料(掛金)・積立金・公的負担(税収)を保険数理の原則によって運用する社会保険方式の制度である。
(2) 本件減額立法は,公務員共済における恩給期間に係る給付について,
恩給期間の恩給納金(毎月の俸給の2%)と共済年金制度発足時の負担
額(毎月の俸給の4.4%)との負担の差に着目し,負担に見合った水
準に減額するものである。しかしながら,恩給納金(毎月の俸給の2%)
による収入は各年度の国又は地方公共団体の歳入に組み込まれ,年金の
支払いが発生した場合には各年度の国又は地方公共団体の歳出(税収)
で賄うこととされ,積立金として積み立てられることがなかったので,
恩給納金にはいわゆる掛金という概念がなかった。よって,当時の公務
員に掛金の多寡についての責任は皆無である。百歩譲って当時の公務員
に掛金の不足を請求できたとしても,すでに50年以上経過しており消
滅時効が成立している。
(3) 恩給期間における公務員の給与が,民間企業の給与に比べて格段に低
く,公務員の給与が安月給の見本とされていたことは周知の事実である。
労働基本権制限の代償措置として発足した人事院勧告制度は,その発足
当初から,実施しないか,実施しても不完全実施であり,労働基本権制
限の代償措置としては機能不全の状態にあった。それだけではなく,昭
和29年は,官民の賃金格差が優に10%を超えていたにもかかわらず,
日本経済が難局にあり,財政危機が著しいとして,人事院みずから勧告
を留保するという異常な事態の年となった。そうしたベア勧告留保とい
う基調は昭和30年から昭和34年まで続いた。ようやく人事院勧告が
軌道に乗ったのは,昭和45年8月,佐藤栄作内閣で,12.67%引
上げの給与勧告の初の完全実施が国会で決定してから以降である。
(4) 元地方公務員であった上告人の場合は,地方公務員等共済組合法(昭
和37年9月8日法律152号・施行昭和37年12月1日)により,
地方公務員年金制度が創設されたが,同時にそれまでの恩給期間を共済
期間と見做すこととされた。通算措置に伴って増加する年金等の支払い
費用(追加費用)は,国又は地方公共団体が負担する旨の規定が設けら
れた(国家公務員共済組合法の長期給付に関する施行法54条,地方公
務員共済組合法施行法96条)。これは,恩給納金(毎月の俸給の2%)
と当時の厚生年金保険料の本人負担額(毎月の給与の1.5%)を比較
衡量した場合,期待権を尊重した妥当な措置であったといえる。
(5) 追加費用の支出は,共済年金制度発足前に決まっていた雇用主(国・
地方公共団体)責任による恩給支払い義務の履行である。よって,追加
費用の削減は恩給の削減であり,雇用主(国・地方公共団体)の債務不
履行(不完全履行)である。
しかも,「甲第1号証」に明示されているように,恩給期間(追加費用
対象期間)が長いほど,つまり,より高齢になるに従い減額率が逓増す
るが如き,平均寿命を超えた老人は早く死ねと言わんばかりの,不合理
極まる本件減額立法は,人道に悖るものであり,且つ,年金は高齢者の
命そのものであることを理解していない,立法裁量権の逸脱濫用による
違憲立法である。因みに,上告人の場合は共済年金改定前決定年額の9.
82%が減額された。
(6) 原判決は,本件減額立法は少子高齢化の進展を背景として,被保険者
間の公平を実現し,ひいては,公的年金制度に対する国民の信頼を高め,
なおかつ,国民の税負担を削減するものであると判示している。
しかしながら,少子高齢化時代における公的年金に係る財源等の対策
は,削減額が逓減することが確実な追加費用削減のような皮相的な対策
で解決できる問題ではない。出生率が回復したフランスやスウェーデン
など海外の事情も参考にした出生回復を目指す施策の推進や,少子高齢
化社会に対応した社会保障制度の改正や,経済政策の策定などの抜本的
な対策が必要不可欠である。因みに,本件減額立法が施行された時点で
の追加費用削減額は約1500億円であったが,法的根拠のない平成2
7年度の米軍思いやり予算1899億円より少額であり,且つ毎年削減
額が逓減するので,平均余命から推定すると約20年後には削減額がゼ
ロになる見込みである。
ここに,公的年金の負担や給付水準を左右するのは,少子高齢化だけ
ではない。日本経済の規模自体が拡大すれば年金給付に使える金額も大
きくなり給付額も増える。現在,GPIF(年金積立金管理運用独立行
政法人)と3共済の運用資産は合わせると約190兆円に及ぶ。この運
用資産の適切な運用で追加費用削減の必要はなくなる。
国民の税負担軽減のためにはこの他に,平均寿命の延びに応じた受給
開始年齢の引き上げ,応能負担の原則に従って大企業や富裕層への適切
な課税の実行,米軍思いやり予算の減額等で対処すべきである。
他方,国家補償の性格を有する恩給支払い義務に係る雇用主(国・地
方公共団体)の債務不履行(不完全履行)は,公的年金制度に対する国
民の信頼を大きく失墜させる結果を招来する。
そもそも本件減額立法は,公務員バッシングの一環として策定された法案であり,被用者年金一元化法(平成24年8月22日法律63号・施行平成27年10月1日)の立法に便乗して,拙速に被用者年金一元化法に組み込まれ,本件減額立法だけが早急に平成25年8月1日に施行されたものである。立法裁量権の逸脱濫用による違憲立法と言わざるを得ない。
(7) 財産権の侵害を禁じた憲法29条1項に係る最高裁判所判決は,「法
律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても,それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り,これをもつて違憲の立法ということはできないのであって,当該財産権の変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるがどうかは,いったん定められた法律に基づく財産権の性質,その内容を変更する程度,及びこれを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し,その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって,判断すべきである。」と判示している(最高裁判所昭和53年7月12日大法廷判決・民集32巻5号946頁)。
原判決は,上記判例の解釈を誤り,恩給制度と共済年金制度との基本的な性格の異同に全く留意することなく,本件減額立法が憲法29条1項に違反しないと判示しているが,上述した理由により,本件減額立法による既裁定受給者の財産権の変更は,当該財産権に対する合的な制約として容認されないものというべきである。
2 原判決は、軍人恩給は国家のために命を賭して戦った者に対する国家
補償としての側面も有するのであって,他の恩給とは異なる特殊な恩給で
あるといえるので,他の恩給制度との取扱いに差異を設けることについて
は,憲法14条1項に違反しないと判示しているが,以下に列挙した理由
により憲法14条1項違反(法の下の平等違反)は明白である。
(1) 恩給制度が富国強兵の国策に沿って創設されたという歴史的な背景や国家補償の性格を有する点では,軍人恩給もその他の恩給も基本的性格は全く同一である。よって,軍人として国家のために命を賭して戦った者に対する国家補償としての側面を重視するのであれば,平成27年の改正法による,「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金」の支給等で対処すればよいのであって,軍人恩給は減額できないが,その他の恩給は減額してよいという差別は許されない。なお,特別弔慰金の支給額に未だに階級による格差があるのは,戦後の日本社会が戦前の軍国主義と完全に決別をなしえていない証左ともいえる。
(2) 近代戦は武器の長足の進歩により,東京など66都市に対する無差別
大空襲,広島・長崎への原爆投下などに見られるように,戦場と銃後の
区別を無くしてしまった。太平洋戦争における日本人の戦没者数は,軍
人230万人・民間人80万人と言われている。「進め一億火の玉だ」「一
億総特攻」の標語に見られるように,軍人だけでなく日本国民全員が総
力戦である近代戦の一翼を担って,国家のために命を賭して戦うべきだ
とされ,一億総武装の閣議決定に基づき,婦女子の竹槍訓練も実施が強化された。以上は特攻隊を血判して志願した経験を持ち,太平洋戦争の実相を体得した上告人の証言である。
(3) 新憲法により,軍国主義ではなく平和主義を国是とする戦後において,
軍人恩給は減額することなく,軍人恩給と全く同様に国家補償としての
基本的性格を有するその他の恩給だけを,特別に減額の対象とする取扱
いは,日本国憲法の平和主義に悖るものである。よって,軍人恩給とそ
の他の恩給との取扱いに差異を設けることについては,事柄の性質に即
応した合理的な根拠に基づくものとは言い難い。
(4) 法の下の平等を定める憲法14条1項に係る最高裁判所判決は,「事
柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別
的な取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきである。」と判示し
ている(最高裁判所昭和39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号
676頁)。
原判決は,上記判例の解釈を誤り,軍人恩給は国家のために命を賭し
て戦った者に対する国家補償としての側面も有するのであって,他の恩
給とは異なる特殊な恩給であるといえるので,他の恩給制度との取扱い
に差異を設けることについては,憲法14条1項に違反しないと判示しているが,上述した理由により,軍人恩給は減額することなく,その他の恩給だけを特別に減額の対象とする取扱いには合理的な理由がなく,軍人恩給とその他の恩給との取扱いに差異を設けることについては,事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものとは言い難い。
第2 結語
少子高齢化が進み将来の公的年金の財源確保が喫緊の課題となっている
我が国の現状は理解できるが,少子高齢化時代における公的年金に係る財
源等の対策は,拙速を避けて,正攻法により時間をかけて解決すべき問題で
ある。
なお,巷間に流布している,赤字国債は子孫に負債を残すものであり,国家財政を破綻させるとの説は,通貨発行権を有する国家財政と通貨発行権を有しない家計とを混同しており間違っている。平成27年度末公債残高約807兆円(見込み)は子孫に資産(国に対する債権)を残すものである。因みに,日本の国債の94%は日本人が買い,残り6%は外国人が「円建て」で買っているから,100%円で賄われていることになる。日本の国債は日本銀行の適切な通貨発行で処理できるので問題はない。日本国民の勤勉性と明晰な頭脳があれば国家財政は将来にわたり健全性が担保されることは歴史の示すとおりである。
人は皆老いるものであり,老いの苦しみは老いてみないと分からない。
医療費・介護費ともに,より高齢になるに従い逓増することは周知の事実である。
本件減額立法は,思考力が低下して抵抗力のない,平均余命の短い高齢者だけを対象にして高率の減額を行なうものであり,しかも,より高齢になればなるほど減額率が逓増するが如き,目的達成のためには手段を選ばない不合理極まる,正に立法裁量権の逸脱濫用による違憲立法であり,これを是認するが如き原判決は,法治国家の判決とは言い難い。
更に,軍人恩給はそのまま支給を継続し,同じく国家補償の性格を有するその他の恩給だけを減額することは,日本国憲法の平和主義を冒涜するものである。
以上いずれの点よりするも,原判決には憲法の解釈の誤りがあり,破棄されるべきである。
上告人は,被用者年金一元化法の立法趣旨には賛同するが,被用者年金一元化法に組み込まれた本件減額立法の早急な廃止を希求するものである。
日本国憲法は,国民主権主義・平和主義・基本的人権尊重主義を柱とするものである。よって,主権者である国民は,あらゆる機会を通じて,内閣であれ,国会であれ,裁判所であれ,片時も監視の目を緩めてはいけない。少しでも憲法違反の疑いがあるような行動を執った場合には,直ちに之を止めさせなくてはならない。これは国民の権利であると同時に義務である。上告人は,この精神に則り訴訟を提起した次第である。
以上
http://homepage1.bb-west.ne.jp/leimb/
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