12. 2014年6月09日 13:06:22
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第159回(6月6日):照屋寛徳 議員 若者を戦地に送らない。若者よ、戦地に行くな!武器を取るな! 〖追記〗このコラムの入稿後、「武力行使との一体化」に関する「4つの基準」を、政 府が6月6日の与党協議会で撤回したとの速報が入った。自衛隊が行う支援の大幅な緩和 と拡大という本質は変わらないものと思料し、このコラムはそのまま掲載することとす る。新提案については詳報を待って改めて分析をしたい。------------------------- ◐http://www5.sdp.or.jp/special/kenpo/img/159teruya.jpg 集団的自衛権の行使容認に向けた「安全保障法制の整備に関する与党協議会」が急ピッチに開催され、合意形成を急いでいる。 テレビ、新聞などの主要メディアも、与党協議の模様は大きく報道するが、集団的自衛権行使容認に反対する野党や市民運動団体などの扱いは小さい。私のやっかみ、愚痴かも知れないが、集団的自衛権行使容認問題に関しては、政府権力のマスコミを利用した世論操作も巧妙に行われているように思われる。要注意、要警戒だ。 さて、去る6月3日の「安全保障法制の整備に関する与党協議会」で、政府が自衛隊が多国籍軍に行なう後方支援活動に関する新たな基準を示し、自民、公明両党に国際協力における自衛隊の活動拡大に協力を求めたことがマスコミで一斉に報じられた。 国際協力(PKO)における自衛隊の活動については、政府は従来から憲法9条に照らし、他国の「武力行使との一体化」は許されない、との立場を堅持してきた。 ところが、今回政府が与党協議会に示した案は、従来の政府見解を反故にし、自衛隊が多国籍軍に行なう支援の大幅な緩和と拡大である。 小泉内閣でイラク戦争後に自衛隊を派遣した際は、イラク特措法で戦闘が現に行なわれておらず、将来も行なわれない「非戦闘地域」を設定し、「戦闘地域」と区別して、「非戦闘地域」に限って後方支援を行なった。 当時の国会論戦で、戦闘地域と非戦闘地域の区別を質された小泉総理が「自衛隊が行くところが非戦闘地域だ」と珍答弁されたことが、脳裏に新しい。ことほどさように、戦闘地域、非戦闘地域を厳密に確定するのは難しいのだ。 政府は、6月3日の与党協議会で、国連安全保障理事会の決議に基づく多国籍軍への後方支援策として、従来の「非戦闘地域」という考え方を廃止することを提案している。 「ナー イチデージナタン」(もう一大事になった)。 与党協議の場における政府提案だと、自衛隊は「地球の裏側」だろうと、どこだろうと、戦地まで出かけ、戦闘行為を含むほとんどの武力行使ができることになる。私は、そのようなことに大反対だ。 若者(自衛隊員も)を戦地に送ってはならない。若者よ、戦地に行くな。若者よ、武器を取るな。集団的自衛権行使で密接な関係のある国(軍事同盟国)、具体的にはアメリカと一緒になって戦争をやり、他国の人を殺してはいけない、殺されてもならない。 6月3日の与党協議では、戦闘地域、非戦闘地域、後方地域という「地理的概念」を放棄し、次のような新たな4つの基準を示している。 @ 支援する他国部隊が現に戦闘行為をしている A 提供する物品・役務が戦闘行為に直接用いられる B 自衛隊の活動場所が他国の戦闘行為の現場 C 後方支援が戦闘行為と密接に関係する ――以上4つの基準すべてに該当する場合以外は、自衛隊が後方支援できる、というのだ。 与党協議の場で公明党・北側副代表が「武器・弾薬が足りている戦闘地域の他国軍に定期的に届けるのは許容されるか」と質したのに対し、政府は「そういうことだ。ただ、そうした運用は実際には考えていない」と答えている(6月4日付東京新聞)。 だが、戦地において軍隊の運用は拡大し、軍隊は時に暴走することは、戦争の歴史が証明している。今回の政府提案を与党が了承し、合意すると、自衛隊と敵対する国との軍事衝突の可能性が高まることは間違いない。その結果、自衛隊員に死傷者が出たり、自衛隊員が敵を殺すことが現実となる。 私は、わが国の国際平和支援活動を全否定するものではない。だが、わが国の国際平和支援活動は、あくまでも非軍事の民生支援・人道支援を基本に据えるべき、と考えるものである。 自衛隊法第52条は、「服務の本旨」を次のように規定する。 「隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳繰を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもつて専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め、もつて国民の負託にこたえることを期するものとする。」 自衛隊法第53条は、「隊員は、防衛省令で定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。」と定めている。 その宣誓文は、次の通りである。 「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」――と。 私は、先に当憲法コラムで、「9条が あるから入る 自衛隊」という川柳を紹介した。 自衛隊入隊の際の宣誓文でも明らかなとおり、「日本国憲法及び法令を遵守」することを誓って入隊したのである。にもかかわらず、憲法9条に違反する集団的自衛権行使によって、戦地に派遣され、人を殺し、殺されることを政府が命じてはいけない。政府にそのような権限はない、と確信する。 自衛隊法第52条が規定するように、「わが国の平和と独立を守る」のが自衛隊員の使命であって、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認(解釈改憲)で自衛隊員を米軍の傭兵にすることなどは絶対に認められない。 (2014年6月6日 社民党衆議院議員 照屋寛徳) ◐http://www5.sdp.or.jp/special/kenpo/159teruya.htm 首相会見(下) ハードル低めようとあの手この手 (承前)前回のおさらいとなるが、安保法制懇報告では、憲法が禁ずるのはわが国が当事国である国際紛争を解決するための武力行使と武力による威嚇だけであり、個別的か集団的かを問わず自衛目的や、国連集団安保の名の下での武力行使に制約はない。だが「自衛」の大義名分のつかない、しかも「わが国が当事国である国際紛争」とは一体何なのか。こう考えると、安保懇報告によればできないことはほとんどない。憲法と法律に制約されない「限定的」とか「総合的判断」は何ら歯止めたり得ない。 そこでまずグレーゾーン対処だが、政府が与党協議用に示した「15事例」には「弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護」が入っている。政府も認めているようにこれには「武力攻撃が何ら発生していない状況下」での対応も含まれており、いわば「集団的自衛権行使予測事態」だ。現行法でも周辺事態あるいは武力攻撃予測事態からの米軍支援が可能となっており、「シームレス対応」の名の下に武器使用を含め米軍の「武力行使との一体化」へのハードルを低めることが一貫して追求されてきたという経過に注意を払わなければならない。グレーゾーンをつくってきたのは政府自身なのだ。 国連集団安保協力関連とされている事例も問題だらけだ。ここで示唆に富むのは、いまやしゃべる安保懇報告書と化している自民・石破幹事長が、ロシアのウクライナ介入が取り沙汰され始めたころ、自国民保護のための自衛隊派遣は「武力行使にならない」と発言した事実だ。15事例の1つには「領域国の同意に基づく邦人救出」が含まれ、報告書では、その場合の武器使用は「武力行使」に当たらず「領域国の治安活動を補完・代替するものにすぎない」と言い切っている(アフガン多国籍軍も「治安活動を代替」と政府は説明していた)。言うに加えて報告書は、領域国同意がない場合でも「自衛権の行使として許される場合がある」などとして、国際法上の議論があることを自ら暴露している。警戒すべきは、対テロ戦争支援立法の過程で、武力行使を「国家の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」(テロ集団相手は話が別)とする限定的な解釈がすでに定着していることだ。後方支援の「一体化」違憲論からの解放を含め、ここでも武力行使への制約を緩めようとする力学が働いている。政府の狙いを暴く取り組みを強めよう。 (社会新報2014年6月4日号・主張) http://www5.sdp.or.jp/publicity/shimpo/opinion/140604.htm |