http://www.asyura2.com/09/kenpo3/msg/419.html
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http://www.magazine9.jp/article/rikken/7534/ より抜粋
憲法違反の事実
福島第一原発事故で、地域住民一人ひとりの生活がどのように一変したか、今更いう までもありません。事故が直接の原因となり、尊い生命が犠牲になりました。放射線被 害により私有の財産、仕事を奪われ、故郷には住めなくなり、いまだに苦しい避難生活 を強いられている方が30万人に上ります。憲法上は、22条(居住移転、職業選択の自 由)、25条(生存権)、29条(財産権)が保障されていない状態にあります。原発の立地自治体、周辺自治体では「自治」(憲法第7章)が全うできていない状態にあります。事故の発生とは関係なく、「放射能の恐怖のない社会で暮らしたい」という市民の平和的生存権(憲法前文)も侵害しています。さらに、国土の一部を居住不能にすることは、それ自体が重大な主権侵害です。
以上により、原発そのものは憲法違反と評価されるべきであり、原発を推進する立法、行政は無効と評価されるべきものです。
「原発=憲法違反」と評価する国会決議
「原発=憲法違反」と、いずれの国家機関が評価するのでしょうか。直感的には、「憲法の番人」である司法の権限であり、裁判所の役割と考えられます。この点、裁判所でもちろん可能なのですが、司法権は特定の事件に関して訴訟が提起されてはじめて発動されるものであり、また、原発の憲法適合性を特定の事件を離れて抽象的に判断する権限はありません。
憲法の有権解釈は、裁判所の専権ではありません。国会、内閣でも当然可能です。内閣には内閣法制局という専任の部署があります。国会はこれまで、内閣法制局が主導する政府解釈を追従する側にありましたが、意識して憲法解釈を行い、「決議」として議院ないし委員会の意思として明示し、憲法に準ずる事実上の規範力を及ぼすことが可能です。
その最たる例が、非核三原則です。
非核兵器ならびに沖縄米軍基地縮小に関する衆議院決議
(1971年11月24日)
○政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込まさずの非核三原則を遵守するとともに、
沖縄返還時に適切なる手段をもって、核が沖縄に存在しないこと、ならびに返還後も
核を持ち込ませないことを明らかにする措置をとるべきである。
○政府は、沖縄米軍基地についてすみやかな将来の縮小整理の措置をとるべきである。
右決議する。
前記の決議は、衆議院本会議で全会一致で行われています。
その後、衆議院外務委員会(1976年4月27日)、参議院外務委員会(1976年5月21日)、衆議院本会議(1978年5月23日)、衆議院外務委員会(1981年6月5日)、衆議院本会議(1982年5月27日)及び参議院本会議(1982年5月28日)においても、国際的な核軍縮の潮流に沿って、同様の決議が行われています。
非核三原則は、憲法にも法律にも明記されていません。国会決議とはいいながら両院の統一意思ではなく、いずれかの議院(又は委員会)の意思にすぎません。法的拘束力もありません。しかし、憲法と同程度の規範的拘束力が認められ、現在に至るまで政治権力を拘束しています。
憲法第9条第2項の「戦力」とは、自衛のための最小必要限度を超えない実力をいい、その範囲であれば核兵器の保有を禁止するものではないというのが政府見解ですが、非核三原則という国会決議がこの政府見解に優位しています。安倍首相ですら、非核三原則を放棄することまで言及できません。国会決議が強度の政治的拘束力を有していることの証左です。
国会決議を行う意義
国会自ら「原発=憲法違反」という、一定の憲法解釈を行うことは、政治過程に与える影響に関して、重要な意義があります。
国会を中心とする間接民主制のプロセスにおいても、原発国民投票のような直接民主制のプロセス(ただし、憲法原則との関係で諮問的なものにとどまる)を経るにしても、どちらを取るにしても、「原発=憲法違反」との国会決議がフィルターとなり、核燃料サイクルを含む原発政策の選択肢を絞り込むことにつながります。憲法違反の状態を拡大することは当然許されないわけですから(一票の較差を拡大するような選挙制度改革が許されないのと同様です)、「原発の数を減らす」という選択肢しか無くなります。あとは、時間軸の問題で、即時廃炉か、一定期間内に廃炉か、という政策判断が加わるのみです。原発立法、原発行政及び原発自治なるものは、憲法に違反し許されず(憲法98条1項)、いずれ廃止されることになります。ピラミッドの図でいえば、憲法の下位にある原発法制がすべて無くなります。
前政権において「2030年代までに原発をゼロとする」というスローガンが言われたことがありましたが、「原発=憲法違反」と評価し、憲法違反の存在をこの社会から解消していくと宣言するのが、立憲政治の本来の道筋でしょう。
国会決議をどのように行うか
非核三原則の国会決議と同じことを、原発に関しても行うべきと考えます。決議においては、問題となる憲法の条章を適示し、結論と理由を簡潔に述べれば足ります。
実務的な話になりますが、衆議院本会議でこれを行う場合、衆議院議院運営委員会の場で、いずれかの会派(野党でも可能です)から文案を提議し、各会派で持ち帰り、合意を得るというプロセスを経ることになります。
政治が主体的に動かない場合には、請願権(憲法16条)に基づき、各議院で「原発=憲法違反」との決議を行うよう、国民がイニシアティヴをとることも可能です。国会の会期中、国会議員(衆参どちらでもよい)に請願の紹介議員になってもらい、議論を前進させるのです。受理された請願は、議院運営委員会等、然るべき委員会に付託されるというシステムになっています。
2013年7月31日現在、本会議で行われた決議は、衆議院354本、参議院257本に上ります(筆者調べ)。本会議でなくても、委員会、審査会でも行うことが可能です。内容に制限はありません。北朝鮮による核実験の非難決議、オリンピックの招致決議も出来るくらいですから、国政上の重要問題として原発の憲法適合性も当然、決議の対象となりえます。
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