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6月9日(日) 改憲には賛成でも96条改正に反対というのは健全な立憲主義だ
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2013-06-09
〔下記の論攷は、メールマガジン「オルタ」113号(2013.5.20)http://www.alter-magazine.jp/index.php?%E7%AC%AC113%E5%8F%B7%EF%BC%882013.5.20%EF%BC%89に掲載されたものです。〕
第2次安倍政権が発足してから、現行憲法を変えられてしまうのではないかという危機感が高まってきました。理由はいくつかあります。
一つは、改憲を公言する安倍元首相が返り咲いたことです。安倍首相は第1次内閣のときに国民投票法を制定して改憲に向けての制度的整備に着手し、昨年の自民党総裁選や総選挙でも、改憲の意図を明確にしていました。
第2に、このような安倍さんの意図を実現するために必要な議席が衆院で3分の2を越えたことです。この勢いなら7月の参院選でも3分の2を超えるかもしれず、そうなれば衆参両院での改憲発議が可能になります。
第3に、当面の改憲戦術として安倍首相が96条改憲先行論を打ち出し、参院選でもそれを争点にしようとしていることです。9条改憲に先だって、手続きを定めた96条の改定を先行させた方が国民にとっては抵抗感が少ないと考えたのかもしれません。これを突破口に改憲グセを付け、「本丸」である9条改憲に取り組もうとしたのでしょう。
しかし、ここに来て、風向きが変わってきました。どの世論調査でも、96条改憲への反対の方が、9条改憲への反対よりも多くなっています。たとえば、直近の5月13日に放送されたNHKの世論調査では、今の憲法を改正する必要が「ある」は31%、「ない」が26%と改正論の方が多くなっていますが、96条改正については「賛成」が20%、「反対」が35%と逆転しています。
これは改憲推進論に立つ産経新聞社とFNN合同世論調査(2013年4月20、21日実施)でも同様です。憲法改正に「賛成」61.3%、「反対」26.4%と賛成の方が多くなっていますが、96条の改正については「賛成」42.1%、「反対」44.7%と、反対が多くなっています。この結果には、産経新聞も困ったことでしょう。
このように、改憲そのものには賛成でも、96条改憲を先行させて改憲への「ハードル」を下げることには反対だという意見が多いのです。改憲派のなかでも、「ゴーマニズム宣言」の漫画家・小林よしのりは「変えやすくするのは反対」だと言い、小林節慶大教授も「私は9条改正論者だが、改正ルール緩和(96条改正)は邪道。立憲主義否定は認められない」(『毎日新聞』4月9日付夕刊)と述べています。
「アメリカの議会関係者らが安倍政権側に対し、96条改正に対する懸念を間接的に伝えていたことが明らかになり」(TBSニュース、5月9日)、自民党内でも96条先行改憲論へのとまどいや反対が広がっているようです。「権力者が恣意的に改正を容易にしようとしているとの懸念もある」として、「参院選でクローズアップするかは決まっていない。世論の動向もある。党と政府で調整して決めたい」などと、石破幹事長が微妙に発言を変えてきているのはそのためです。
これは安倍さんにとっては大きな誤算だったでしょう。改憲に向けての「ハードル」を下げるつもりが、逆に上げることになってしまったのですから。これでは「改憲グセ」をつけるどころか、「緒戦で敗退」ということになりかねません。
安倍さんの誤算は、立憲主義のなんたるかを理解していなかったところにあります。憲法とは国家を縛るもので、法律の適否を判断する基準となるものです。したがって、立憲主義の立場からすれば、その発議や改定手続きが通常の法律以上に厳格なものでなければならないというのは当たり前のことで、「3分の2は『国際標準』」(『東京新聞』5月10日付)なのです。
発議の要件を過半数以上としてしまえば、過半数を得ている与党が改憲発議を連発することも可能になります。たとえ、国民投票があったとしても、改憲の是非を国民に「丸投げ」してしまうのは、国会議員としては無責任極まりない態度だと言うべきでしょう。
だからこそ、アメリカや韓国でも、発議の条件として議会の3分の2以上の賛成を求めているのです。しかも、発議された改憲案について、アメリカでは州議会の4分の3以上の賛成が必要です。韓国では日本と同様に国民投票での過半数の賛成となっていますが、有権者の過半数以上が投票しなければ成立しない「最低投票率」という厳しい条件が付けられています。
そもそも憲法を変えるという作業は、国民の方から求めて議題に上らせるべきものでしょう。与党のトップである首相が旗を振り、しかも憲法によって縛られ、尊重擁護義務を課せられている国会議員が「きついから緩めて欲しい」と求めるなど、本末転倒も甚だしいと言わなければなりません。
世論調査に現れている数字は、このような「いかがわしさ」を国民が敏感に感じ取っていることを示しています。安倍さんのやり口が、あまりにも国民を馬鹿にした「あざとい」ものだということを見抜いているのではないでしょうか。
憲法制定に当たって3分の2という高い「ハードル」を設定したのは、後世の政治家が憲法の理念を覆すようなとんでもない改憲案を簡単に発議できないようにするためでした。改憲の「ハードル」を下げて制定しようとしている自民党のとんでもない改憲草案を見るにつけても、このような96条の規定を定めたことはまことに慧眼であったと言わざるを得ません。
なお、現行の議会は、多数意見を増幅する「ふくらまし粉」入りの選挙制度である小選挙区制(参院では1人区)によって選出された議員が含まれています。このような過剰勝利によって選ばれた議員による改憲発議は、現行の条件よりも厳しくするべきではないでしょうか。もし、96条改憲を提案するのであれば、「ハードル」を過半数に低めるのではなく、4分3くらいに高めるのが当然でしょう。
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2013-06-09
〔下記の論攷は、メールマガジン「オルタ」113号(2013.5.20)http://www.alter-magazine.jp/index.php?%E7%AC%AC113%E5%8F%B7%EF%BC%882013.5.20%EF%BC%89に掲載されたものです。〕
第2次安倍政権が発足してから、現行憲法を変えられてしまうのではないかという危機感が高まってきました。理由はいくつかあります。
一つは、改憲を公言する安倍元首相が返り咲いたことです。安倍首相は第1次内閣のときに国民投票法を制定して改憲に向けての制度的整備に着手し、昨年の自民党総裁選や総選挙でも、改憲の意図を明確にしていました。
第2に、このような安倍さんの意図を実現するために必要な議席が衆院で3分の2を越えたことです。この勢いなら7月の参院選でも3分の2を超えるかもしれず、そうなれば衆参両院での改憲発議が可能になります。
第3に、当面の改憲戦術として安倍首相が96条改憲先行論を打ち出し、参院選でもそれを争点にしようとしていることです。9条改憲に先だって、手続きを定めた96条の改定を先行させた方が国民にとっては抵抗感が少ないと考えたのかもしれません。これを突破口に改憲グセを付け、「本丸」である9条改憲に取り組もうとしたのでしょう。
しかし、ここに来て、風向きが変わってきました。どの世論調査でも、96条改憲への反対の方が、9条改憲への反対よりも多くなっています。たとえば、直近の5月13日に放送されたNHKの世論調査では、今の憲法を改正する必要が「ある」は31%、「ない」が26%と改正論の方が多くなっていますが、96条改正については「賛成」が20%、「反対」が35%と逆転しています。
これは改憲推進論に立つ産経新聞社とFNN合同世論調査(2013年4月20、21日実施)でも同様です。憲法改正に「賛成」61.3%、「反対」26.4%と賛成の方が多くなっていますが、96条の改正については「賛成」42.1%、「反対」44.7%と、反対が多くなっています。この結果には、産経新聞も困ったことでしょう。
このように、改憲そのものには賛成でも、96条改憲を先行させて改憲への「ハードル」を下げることには反対だという意見が多いのです。改憲派のなかでも、「ゴーマニズム宣言」の漫画家・小林よしのりは「変えやすくするのは反対」だと言い、小林節慶大教授も「私は9条改正論者だが、改正ルール緩和(96条改正)は邪道。立憲主義否定は認められない」(『毎日新聞』4月9日付夕刊)と述べています。
「アメリカの議会関係者らが安倍政権側に対し、96条改正に対する懸念を間接的に伝えていたことが明らかになり」(TBSニュース、5月9日)、自民党内でも96条先行改憲論へのとまどいや反対が広がっているようです。「権力者が恣意的に改正を容易にしようとしているとの懸念もある」として、「参院選でクローズアップするかは決まっていない。世論の動向もある。党と政府で調整して決めたい」などと、石破幹事長が微妙に発言を変えてきているのはそのためです。
これは安倍さんにとっては大きな誤算だったでしょう。改憲に向けての「ハードル」を下げるつもりが、逆に上げることになってしまったのですから。これでは「改憲グセ」をつけるどころか、「緒戦で敗退」ということになりかねません。
安倍さんの誤算は、立憲主義のなんたるかを理解していなかったところにあります。憲法とは国家を縛るもので、法律の適否を判断する基準となるものです。したがって、立憲主義の立場からすれば、その発議や改定手続きが通常の法律以上に厳格なものでなければならないというのは当たり前のことで、「3分の2は『国際標準』」(『東京新聞』5月10日付)なのです。
発議の要件を過半数以上としてしまえば、過半数を得ている与党が改憲発議を連発することも可能になります。たとえ、国民投票があったとしても、改憲の是非を国民に「丸投げ」してしまうのは、国会議員としては無責任極まりない態度だと言うべきでしょう。
だからこそ、アメリカや韓国でも、発議の条件として議会の3分の2以上の賛成を求めているのです。しかも、発議された改憲案について、アメリカでは州議会の4分の3以上の賛成が必要です。韓国では日本と同様に国民投票での過半数の賛成となっていますが、有権者の過半数以上が投票しなければ成立しない「最低投票率」という厳しい条件が付けられています。
そもそも憲法を変えるという作業は、国民の方から求めて議題に上らせるべきものでしょう。与党のトップである首相が旗を振り、しかも憲法によって縛られ、尊重擁護義務を課せられている国会議員が「きついから緩めて欲しい」と求めるなど、本末転倒も甚だしいと言わなければなりません。
世論調査に現れている数字は、このような「いかがわしさ」を国民が敏感に感じ取っていることを示しています。安倍さんのやり口が、あまりにも国民を馬鹿にした「あざとい」ものだということを見抜いているのではないでしょうか。
憲法制定に当たって3分の2という高い「ハードル」を設定したのは、後世の政治家が憲法の理念を覆すようなとんでもない改憲案を簡単に発議できないようにするためでした。改憲の「ハードル」を下げて制定しようとしている自民党のとんでもない改憲草案を見るにつけても、このような96条の規定を定めたことはまことに慧眼であったと言わざるを得ません。
なお、現行の議会は、多数意見を増幅する「ふくらまし粉」入りの選挙制度である小選挙区制(参院では1人区)によって選出された議員が含まれています。このような過剰勝利によって選ばれた議員による改憲発議は、現行の条件よりも厳しくするべきではないでしょうか。もし、96条改憲を提案するのであれば、「ハードル」を過半数に低めるのではなく、4分3くらいに高めるのが当然でしょう。
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