http://www.asyura2.com/09/kenpo3/msg/279.html
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村野瀬玲奈の秘書課広報室
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-2009.html
精神遅滞女性への死刑執行、米バージニア州で
{投稿者による転写開始}
2010年9月24日(金)にグーグルフランスのニュースで、23日の21時13分(フランス時間、24日3時13分)にアメリカ・バージニア州で精神遅滞のある女性、テレサ・ルイス死刑囚に死刑が執行されたという記事がたくさん出ていました。(記録と記憶のために、「追記を表示」に、その中で最も早かったものをいくつか入れました。)
読んでいて悲しくなりました。
かなり詳しい報道が多かったです。それらの記事を総合すると、こんな事件でした。
スーパーマーケットで会った二人の男(22歳のマシューと19歳のロドニー)をそそのかして保険金目当てで自分の夫ジュリアンと夫の連れ子の男の子を2002年10月に殺させたのがテレサの罪状であること。二人の男は殺人の現場を離れるように彼女に命じて逃げたものの、銃でジュリアンを撃った45分後に彼女が警察に知らせ、警察が来た時にジュリアンはまだ生きており、瀕死の息の下から「犯人が誰か、妻は知っている」と言って亡くなったこと。証拠を否定できず、テレサは夫と義理の息子を殺させて保険金を山分けするために二人の男を雇ったことを自白したこと。
テレサはマシューを愛人として、16歳になる自分の娘にまでロドニーと一緒に保険金殺人をそそのかしたとされたこと。判事は2003年に彼女に死刑判決を下したこと。
しかし、実際は、彼女はIQが72と精神遅滞の境界(IQ70)ぎりぎりであり、2002年以降、精神遅滞者を処刑することはアメリカで違憲とされていたこと。テレサの友達によれば、テレサは買い物でお金の管理をすることがやっとできる程度の状態であったこと。
精神科医はテレサが依存性パーソナリティ障害であり、男性に操られやすい性格だったと診断したこと。犯人のマシューは自分が書いた手紙の中で「テレサは簡単に操れる、金のために結婚したアバズレで、俺が探していた女そのものだった」と告白した後、刑務所の中で自殺したこと。
犯行当時、テレサは、母親の死から立ち直れず、一ヶ月に600錠も服用するほど鎮痛剤に依存しており、それは判断力を鈍らせるのに十分な量であったこと。それがテレサが2003年の裁判の時に後悔も感情も見せなかった理由と考えられること。そのためにテレサが判事に悪い印象を与えた可能性があること。
さらに不可思議なのが、実行犯である共犯者の二人の男に出された判決は、実行犯ではないテレサとは違って死刑ではなく終身刑であったこと。
テレサは刑務所内では模範囚であったこと。
記事によっては、テレサは処刑の日に、息子と弁護士と神父の訪問をうけたこと、シャワーを浴びての最後の食事がチキンと緑インゲンにデザートはチョコレートケーキとアップルパイだったことまで書かれています。
薬物注射による彼女の処刑前の最後の言葉は「(義理の娘)キャティには私が彼女を愛していることを知ってほしい。ごめんなさい」だったそうです。
これらを全部考え合わせると、バージニア州知事が恩赦請求まで退けて、精神遅滞者のテレサに死刑を執行したことへの疑問を打ち消すことはできません。そして、彼女と二人の男それぞれに対して下された刑罰のあまりにも大きな差、その不公平さがそれに輪をかけます。
日本でこの事件がどのように報道されているか、検索してみると、これが見つかりました。いえ、むしろ、これしか見つかりませんでした、と言うべきかもしれません。
24日(金)朝の時点での報道です。
●時事通信 - Yahoo!ニュース
1世紀ぶり、女性への死刑執行=全米で12人目―バージニア州
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100924-00000054-jij-int
時事通信 2010年9月24日(金)11時40分配信
【ワシントン時事】夫とその息子を愛人ら2人に殺害させた罪で死刑が確定していたテレサ・ルイス死刑囚(41)への刑が23日夜、米バージニア州で執行された。同州での女性への死刑執行は、1912年以来約1世紀ぶり。米国で死刑制度が復活した76年以降、死刑が執行された女性は12人となった。
ルイス死刑囚は、再婚した夫とその息子を殺害し、多額の保険金を得ることを計画。2002年10月、2人が就寝中、共謀者の男2人に射殺させたとして、03年5月に死刑判決を受けた。
(転載ここまで)
●MSN産経ニュース
米国で5年ぶりに女の死刑執行 保険金狙い夫と義理の息子の殺害依頼
http://sankei.jp.msn.com/photos/world/america/100924/amr1009241138007-p1.htm
2010.9.24 11:38
米南部バージニア州で2002年、保険金目当てに夫と義理の息子を仲間に殺害させたとして死刑判決を言い渡されたテレサ・ルイス死刑囚(41)の刑が23日、同州で薬物注射により執行された。AP通信などによると、女に対する死刑執行は、同州で1912年以来。全米では5年ぶりという。
ルイス死刑囚は02年10月、25万ドル(約2100万円)の生命保険金を狙い、男2人に夫と義理の息子の殺害を依頼。男2人は散弾銃で殺害を実行、後に終身刑を受けた。(共同)
(転載ここまで)
いくら字数に制限があるとはいえ、重要な情報がごっそり抜けていますね。この記事からはこの事件について公平に判断することは到底できません。
翌日25日(土)に出たこちらはまだ少しましな記事です。
●asahi.com(朝日新聞社)
知的障害の疑いある女性の死刑執行 米で是非巡り議論
http://www.asahi.com/international/update/0925/TKY201009250245.html
2010年9月25日19時16分
【ニューヨーク=田中光】米南部バージニア州で23日夜、テレサ・ルイス死刑囚(41)に対する死刑が執行された。AP通信などが伝えた。同州での女性死刑囚の執行は1912年以来。弁護団や支持団体が「彼女は知的障害があり、死刑判決は違憲」と主張するなど、執行の是非が議論を呼んでいた。
ルイス死刑囚は夫と息子の殺害を計画し、2002年10月に男2人に実行させたとして死刑判決を受けた。だが現在の弁護団は、ルイス死刑囚に知的障害や依存性人格障害があったという新たな証拠を提示。事件直後の弁護士がこれらの要素を見落としていたとして、執行停止と再審を求めたが、バージニア州のマクドネル知事は「知的障害と結論づけた医師はいない」などとして退けた。
(転載ここまで)
この朝日新聞の記事も不十分だと思いますが、特に最初の二つ、「時事通信 - Yahoo!ニュース」と「MSN産経ニュース(共同)」の報道は非常に不完全で、事件と犯人についての誤った先入観を持たせる問題の多い記事だと思います。
最初の「時事通信 - Yahoo!ニュース」では、ヤフーの「みんなの感想」も見ることができます。こちら↓。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100924-00000054-jij-int
死刑賛成派が多い日本でこういう一方的な報道を見たら、なおさらこういうコメントが並ぶだろうと思われる殺伐としたコメントが並んでいます。マスメディアの役割は、犯罪を材料に不公平で不完全な報道で憎しみと死刑への賛成をあおることではないはずです。死刑とは、一度執行したらどうしても取り返しのつかない重大な刑罰なのですから、特にこの事件のように強い疑問が呈されている場合、それを報じる記事はていねいであるべきです。
死刑制度について、個々の死刑執行について公正に考えようとするなら、それらをめぐるありとあらゆる論点や情報について冷静に考えることをうながすことが報道機関の役割ではないでしょうか。しかし、特にこの最初の二つの「時事通信 - Yahoo!ニュース」と「MSN産経ニュース(共同)」の報道はそれを全く満たしていないと思います。
たいへんに残念です。
なお、先ごろ限定的に公開された日本の死刑執行場ですが、きれいに片付けられて絞首のための縄も、死刑囚が吊られて落ちてくる下の階も見せない死刑執行場公開よりも、この記事の最初に要約引用したフランスでの報道を読む方が死刑の現場をリアリティをもって感じられるような気がしました。
さて、報道記事を検索しながら、この死刑執行について書いているブログ記事を見つけました。ブログ主のぴんぐーさんが死刑存置派の人か死刑廃止派の人かはわかりませんが、それはこの際重要ではありません。だけど、ぴんぐーさんが受けたショックはよくわかります。私も同じようなショックを受けましたから。
●ぴんぐーの1日
テレサ・ルイス
http://blogs.yahoo.co.jp/hop_step_pingu/62066017.html
2010/9/24(金) 午後 11:49
減刑を認められなかったアメリカの女性死刑囚、テレサ・ルイスに
今日刑が執行された
国内ニュースでは、アメリカでは珍しい女性への死刑執行というのが前面に出ていたけれど
それだけ彼女が凶悪だったのかというと、ここに驚きの背景があった
昨夜フラフラと海外ニュースを眺めていたときに
BBCで彼女のニュースを見かけた
「テレサ・ルイスの死刑執行が確定」 といった見出しで
そりゃあまたどんなヒドいことをしでかした悪女なのかと
アメリカ側のニュースページへ飛んで
彼女に関する記事を読んで
胸が詰まった
(中略)
そして、国内ニュースで彼女の死を知った
彼女の事件の背景や、こうした論争が今まであった事は何も触れられていなかった
ただ、愛人に夫と義理の息子を殺害させて死刑判決を受けていたと
それだけ、全部でも五行くらいで
あっさりと彼女の人生の終わりを告げていた
昨夜彼女の記事に出会っていたことは
私には大きな出来事だった
今、Save Teresa Lewis ウェブサイトのトップページには
彼女への哀悼の意と支持者への謝辞
そして、彼女が同じ刑務所で服役していた友人受刑者へ宛てた手紙の抜粋が載せられている
死刑執行時、最後に遺した言葉は
殺人の目撃者となり、ひとり遺されてしまった義理の娘に
"I just want Kathy to know I love her. And I am very sorry." だったと報道されている
(引用ここまで)
死刑の適用がこのように恣意的で不公平になりうる実例のひとつとしてこの事件を記憶しておきたくて、この記事にしました。
この事件の被害者であるテレサの夫と、テレサ自身に哀悼の意をささげます。
ぴんぐーさんも触れている、彼女を支援していた支援団体のサイトです。
●Teresa Lewis
http://www.saveteresalewis.org/
村野瀬玲奈の秘書課広報室
信心深いと想像されるテレサの手紙の一部が引用されています。
"Man wants me to die, but I’m not worrying over this, I’m trusting Jesus ."(私に死んでほしいそうです。だけど、心配していません。私はイエス様を信じています。)
処刑された彼女と、共犯の男たちと、どちらが卑劣なのでしょうか。この判決を出した裁判官と、恩赦請求を却下したバージニア州知事は、何の疑問も感じないのでしょうか。
{投稿者による転写終了}
ブログではさらにこの事件を扱ったフランスの記事(原文のまま)を載せています。
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