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(回答先: 算数のできない人が作った裁判員制度 【読んでムカつく噛みつき評論】 投稿者 きすぐれ真一 日時 2009 年 3 月 21 日 12:39:21)
http://homepage2.nifty.com/kamitsuki/09A/mainichino-kiben.htm
裁判員制度はスリリングで感動的という毎日の下等な詭弁
「Aさんは長年頭痛に悩まされてきたのですが、科学が生んだ○○を試してみたところ、驚くばかりの効果がありました」
体験談を紹介するこのような宣伝方法は効果のはっきりしない怪しい商品などに好んで使われます。「効いた」体験談をいくつも並べられると信じてしまう人がいるわけで、まあ古典的な騙し方といってよいでしょう。体験談は事実だとしても、同時に効果のなかった数を示して、有効率を表示しなければ意味がありません。効果は1万人に1人かもしれないわけです。
このような手法は感情に訴える効果を狙ったものですが、非論理的であり、まともな世界で使われるものではありません。しかし驚いたことに新聞にも同様の手法が使われています。1月27日の毎日新聞の「記者の目」には「充実感あふれていた80年前の陪審員」と題して、裁判員制度について述べています。
記者は裁判員制度への根本的な批判も少なくないと現状を指摘した上で、不人気を解消する妙案はないかと思いながら、1928年12月の東京日日新聞(現毎日新聞)を繰ったところ、帝都・東京で最初に開かれた陪審裁判を見つけたとあります。次にその部分を引用しますが、当時の新聞の様子もなかなか興味深いものがあります。
『被告は21歳の主婦で、保険金目当てで自宅に放火した罪に問われた。12人の陪審員と2人の補充員は実名報道で職業も公開されている。こんにゃく屋、酒屋2人、歯科医、絵具商、機械商、無職2人、八王子在のお百姓2人、会社員とある。名前も職業も伏せられる裁判員制度とは大違いだ。
初日の審理で、被告は全面否認する。以降、夕・朝刊で連日の展開。主な見出しを拾ってみよう。「子を思う(被告の)親心に法廷皆すすり泣く 初陪審の劇的シーン」「陪審員証人の警官にお叱言(こごと) 専門的な質問お見事」「『彼女の涙は何を語る』と病める弁護士の熱弁」「『美人放火』を断定 検事陪審員に迫る」。そして12月22日の朝刊「帝都最初の陪審公判 遂(つい)に無罪の判決下る 感激の美人 光景劇的に大団円」に至る。当時は、陪審団の答申を受けて裁判長が判決を言い渡す仕組み。無罪の答申が受け入れられたのだ。
陪審員は5日間の缶詰め生活だったものの「幾分疲労の色が漂っているが、全力を注いだ熱と誠意の答申を容(い)れられた喜びはさすがに包みきれない」との記事がすべてを物語る。「初めは何が何やら分からなかったが、そのうちに事件の核心が分かってきた」「審理が面白くてノート3冊を請求して皆使った」などその声は充実感にあふれる。
おくせず全力で法廷に臨んだ80年前の日本人の姿に、私は感動を覚えた。裁判員裁判も、法廷での証拠調べが原則だ。陪審裁判に負けないスリリングな審議はできると思う。きっと得がたい経験になるはずだ』
まず、裁判というものをこれほど扇情的に書く当時の新聞の姿勢に驚きます。新聞には、検察=悪、陪審=正義とのシナリオが先にできているようです。被告が美人でなかったなら、また皆をすすり泣かせる表現力がなかったら、違った結果になっていたかもしれません。そして有罪ならば恐らく感動的な物語にはなっていなかったでしょう。
死刑を決定しなければならないかも知れないという重い仕事にスリリングな審議を楽しむというのはいささか不謹慎です。陪審員制度の有罪率は82.1%であり、有罪の場合に感動するのは常人にはちょっと難しいでしょう。
毎日の記事は、484件あった戦前の陪審員裁判の中から、これが例外的なものかどうかを調べないまま紹介して、読者の感情に訴えようとするものであり、怪しい商品を売る手法と同じです。「記者の目」は諧謔風のものではなく、社説に近いものであり、それだけにこの手法には問題を感じます。
記者自ら過去の陪審員記事に感動し、それを無批判に記事にした記者、及び編集者の見識に強い疑問を感じます。裁判は感動する場でなく、冷静な論理が求められる場です。「裁判員制度の導入を決めた審議会などを私は4年近く取材した」という記者は裁判を何と心得ているのでしょうか。
「制度への根本的な批判も少なくない」といいながら、それに対する論理的な反論をせず、論点をずらせて感動ものにする、とても一流紙のレベルとは思えません。毎日は良いコラムも多いだけに残念です。
■その他裁判員制度関連もある資料もと「目次」
http://homepage2.nifty.com/kamitsuki/column-index.htm