05. 2011年3月31日 21:00:22: sHkbotZDCo
( http://jp.wsj.com/var/plain_site/storage/images/media/images/jobless/4498425-1-jpn-JP/jobless.jpg) 宮城県名取市は津波で壊滅的な被害を受けた(27日)被災地の支援、雇用問題が焦点に 2011年 3月 31日 17:50 JST ウォール・ストリート・ジャーナル http://jp.wsj.com/Japan/node_213847 【宮城県亘理郡山元町】この海沿いの町の役場には、政府の支援や通話可能な電話を求める人々の長蛇の列ができている。列を作るという点では、命令を待つ救助隊も例外ではない。しかし今週、また新たな列ができた。仕事を探す人々の列だ。
今月、日本のこの地域を襲った地震と津波は、1万1000人以上の犠牲者と1万6200人以上の行方不明者を出しただけではない。何十万という人々を失業の危機にさらし、再開した職場にさえたどり着けない状態にしている。 オオタ・トシオさん(56)は、28年間タクシーを運転してきた。彼が務めるタクシー会社の事務所は仙台市の空港近くにあるが、3月11日の津波で大部分が損壊した。彼にはガソリンがなく、事務所の電話も鳴らないため、1時間かけて現地に行き、会社がどうなったか調べる手段はない。彼は最悪の事態を覚悟している。 そこでオオタさんは29日、仙台の南にある郊外の町、山元町の役場の列に並ぶことを決意した。失業保険と新たな職を求めて、政府の支援を受けるためだ。 オオタさんは、他の50人と列に並び、ハローワークの職員との相談を待つ間、「28年間、政府の世話になったことは一度もない。申請のしかたさえわからない」と話した。 震災に見舞われた時、日本の雇用市場は回復に向かっていた。2月の失業率は2年ぶりに低い水準の4.6%となり、一段の低下が見込まれていた。 多くの小さな町で雇用が悪化していたとはいえ、東北地方では比較的経済が堅調な仙台に勤める町民の多い山元町では、ある程度の雇用改善はみられていた。しかし、より自律的な回復が失われた今、大規模な失業が今後数年間にわたって問題として重くのしかかるとエコノミストは予測している。 国連は30日、大きな震災被害を受けた岩手、宮城、福島3県で働く80万人のうち大半が生活に影響が出たとする日本政府の報告を紹介した。これまでに約2万3000人が、求職相談や失業保険の申請のために地元のハローワークに訪れたという。 日本政府は、失業者に地域の職業安定所――「ハローワーク」という楽しい呼び名で知られている――に訪れるよう呼びかけているが、求人は少ない。あったとしても、雇用主は求職者と同様、「安心」を求めており、仙台ハローワークには、事業継続が不可能な場合の手続きに関する問い合わせなど、数百件もの電話が雇用主から殺到している。 仙台のハローワークの職員によると、現時点で、雇用主からの求人申し込みの電話はほぼゼロだ。同職員は、建設業の求人はまもなく増えるとの見方を示したが、雇用をすべて満たすには十分ではない。 仙台の中心街にあるハローワークは、求職者について現時点で数千人と見込むが、まだその数字は顕在化していない。多くの人々は生きるのに必死で、地域の公共交通機関が壊滅状態にある今、地元から出て来られないのだ。 仙台ハローワークは、失業した被災者が置かれた状況を勘案し、今週、山元町やその他の地域に臨時出張所を設けることを決定。被災者の来所を促すために新聞広告も掲載している。 それでも、当局が被災者をどれだけ支援できるかは不明だ。政府は29日、一時的に避難を余儀なくされている人やまだ正式に解雇されていない人が申請できるように失業保険の要件を緩和した。しかし、企業が事業閉鎖を選択した場合、長期的な問題の解決にはそれでは不十分だろう。被災者への支援金が増額される可能性もあるが、日本が巨額の赤字を抱える時期にさらなる財源不足が追い打ちをかける。 29日には一般会計総額92兆4116億円の2011年度予算が成立したが、野党が特例公債法案に抵抗を示しており、予算の財源確保の見通しは不透明だ。 どんな災害復興も、人々の雇用が重要なステップとなる。インド洋津波や米国のハリケーン「カトリーナ」の後、国際支援団体は、地域の片づけに参加すると賃金が支払われる労働プログラムを後援した。しかし、賃金が国際基準より大幅に高い日本でそういったプログラムを実施するのは難しく、コストがかかる可能性がある。 「人々の精神衛生上、職に戻ることは重要」と米国を拠点とする人道支援団体、マーシーコアのコーディネーター、ダイアン・ジョンソン氏は指摘する。マーシーコアは過去に労働プログラムを実施しており、今週日本入りした。ジョンソン氏は、「職場に通い、同僚がいることは日常生活の一部で、それから切り離されることは不安なことだ」と語った。 マーシーコアは既に、臨時雇用プログラムを日本で行わないことを決定している。日本の賃金は高く、泥まみれの困難な仕事への抵抗感も強い。また当面、大規模な撤去作業は大半をバックホーやトラックなどの重機に任せるほかはない。 その代りに、マーシーコアは、小さな町の雇用の大半を占める中小企業が自力再建に必要な融資を受けられるようにするため、地域のNGO(非政府組織)と銀行との連携を模索している。 東北の漁業の町、気仙沼でも問題が山積している。今週、現地の関係者から情報収集したジョンソン氏は、多くの大型漁船が津波を逃れたが、陸地では電力の供給がストップし、魚を保存する氷がないと指摘する。多くの加工会社も壊滅状態にあるものの、大型発電機を使って稼働するところも一部にあるという。 この地域の牡蠣(かき)養殖農家も、将来的に一段と厳しい現実に直面している。津波で壊れた牡蠣棚を回復させるまでには、最長で7年かかる場合もある。 山元町も、イチゴ栽培や観光など、地元産業の復旧は難航が予想される。創建800年の古寺は損壊がひどく、砂浜にはゴミやがれきが散乱、イチゴ畑の残骸といえば、「イチゴ狩り」の看板が2、3とビニールハウスの潰れた金属パイプくらいだ。 塗装会社を営むササキ・イサムさん(65)は29日、従業員の処遇について相談するために町役場に現れた。ササキさんは、家や企業の塗装の仕事がやがて増えると考えている。しかし、そうなるまでに数カ月かかる可能性がある。 彼の倉庫、車、設備は破壊され、顧客からの注文はすべてキャンセルされた。5人の従業員を維持する余裕はない。 ササキさんは、役場を去る時、「給与の一部を払って従業員を一時休業にするよう」勧められたと話す。ササキさんは、「こんな書類を渡された。これを全部記入するのは大変」、と厚さ1.5センチはありそうな書類の束をバサバサと振ってみせた。 記者: ERIC BELLMAN http://jp.wsj.com/Japan/node_213847
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