01. 2011年3月29日 11:10:47: cqRnZH2CUM
ミャンマーの治安はどうなのかね日経ビジネス オンライントップ>企業・経営>津山恵子の「NY発 メディア新世紀」 ハイチ大地震と東日本大震災の違いとは 日本の震災が投げかける、世界の災害危険度 * 2011年3月29日 火曜日 * 津山 恵子 ハイチ大地震 ソニー 米国 福島原子力発電所 ハワード・ストリンガー オバマ 東日本大震災 ニューヨーク 「東日本大震災とハイチ大地震との違いは何ですか?」 私は昨年3月、大地震に引き裂かれたハイチにボランティアと取材を兼ねて行った。このことを知っている友人は、今回の日本の震災が起きてから、私に決まってそう尋ねる。今回は、「最新メディア」リポートをちょっと小休止して、メディアが流す日本の震災が世界にどんな影響を与えているのか考えてみる。 「ハイチと比較して違いは」と聞かれると、まず2つのことが思い浮かぶ。 油断すればすべてが奪われる 1つは、日本の被災地で、「安全」が被災者たちの意識の高さと助け合いの精神でいかに守られているかという点。そしてもう1つは、東日本大震災に続いて起きた福島第1原子力発電所の問題が、いかに広く世界の注目を浴びているかという点だ。 ハイチ大地震は2010年1月12日の夕方に発生した。首都ポルトープランスを直撃し、大統領府、財務省などがある官公庁街の建物がぺちゃんこになった。死者は、現在までのところ約31万人。 昨年、震源地に最も近いレオガンという街と首都ポルトープランスに11日間いたが、強く印象に残ったのは、「貧しさ」だった。国民1人当たりの平均年間所得が約500ドルと、日本や米国より2桁も低い。 そんな貧困にあえぐ国の政府機能とインフラが壊滅したわけだから、地震が起きてから2カ月たっていたが、本当に何もなかった。電気も、食べ物も、靴も、衣料も、薬も無い無い尽くしだった。その状態はほぼ今も続いている。 東日本大震災についての米国メディアの報道をみていて思い出したのは、ハリウッドも含めて「ハイチ支援」一色になった米国の中では、あまり言えなかった「安全」に関する懸念だ。 ハイチにいた間、外出時は貴重品をすべてカメラマン用ジャケットの内側に入れていたが、すぐに出せるようにと外側のポケットに入れていたものは、知らないうちになくなった。サングラス、日焼け止め、乾電池、飴、ティッシュなどなど。 ボランティアグループがキャンプをしていた水のパッケージ工場内でも、置いてあったスーツケースの中からも、ボランティアが持って来た食料やハードディスクドライブ、携帯電話の充電コードが1日で消えた。 私たちのグループが行く2週間前には「国境なき医師団」の医師2人が誘拐されて、行方不明になったままだった。米国の弁護士グループによると、女性に対するレイプは地震発生後、2〜3割も増加している。 スウェーデンの赤十字がキャンプで角材を配る場面を撮影しに行ったが、ここでも、日本のように淡々と並んで静かに待つ避難所の風景とは全く違う「殺気」が漂っていた。列はできているのだが、女性と男性で列が分かれている。しかも女性の列は、摂氏40度以上の炎天下だというのに、前後の人が体をぴったりとつけるように隙間なく並んでいる。赤十字によると、割り込みがあった場合に、つかみ合いの喧嘩になるため、ボランティアが隙間なく並ぶように指導しているからだという。 大地震後のハイチは明らかに危険だった。いや、だからこそ、大地震の被害に遭って、肉親や家屋、財産を奪われてもなお、自らの生命や健康の危険にさらされるような過酷な「生存競争」が続く中で、生きる人々の姿が「強靭」に思えたのだ。 一方、日本では、寒さに耐え、考えもしなかった食料・物資不足にも我慢を続ける中で、被災地の人々が支え合い、救援チームに手を貸して、避難所の秩序を守り続けている姿を見て、米メディアは驚いている。 ニューヨークの原発は大丈夫か? 「スーパーマーケットです。とても静かです。みなさん、列に並んでいます」 そんな米NBCテレビ局記者のリポートを見た。日本語で「何を買うんですか?」と女性に尋ねる。 「ええ、あるものはみな買おうと思っています」と丁寧語で答える女性。 「買えるものはみな買いたいと言っています。とにかく静かです」とリポーター。 日本ではニュースにならないが、海外では日本のこうした「秩序」を保とうとする姿勢がニュースになる。 ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、ソニーのハワード・ストリンガー会長兼最高経営責任者(CEO)はこう書いていた。 「日本で『不屈の精神』に負けず劣らず重要なのは、共通の目的意識だ。社会は隅々まで強いきずなで結ばれており、自らを守るだけでなく、助け合おうとする強い姿勢がある。海外のメディアは、被災者が救援物資の食べ物や水、ガソリンを受け取るために、落ち着いて忍耐強く列にならぶ姿に驚きの声を上げた」 そしてもう1つは、福島原子力発電所の問題だ。 米東部時間の3月11日正午ごろ、オバマ米大統領が記者会見を開いた。東日本大震災の発生後、半日しか経っていないが、大統領は被災者に対して「胸が張り裂ける思い」と述べるとともに、米国の支援体制について発表した。このとき、ホワイトハウス担当記者から出た唯一の地震関連の質問が、福島原発の様子についてだった。この時点で、日本でもほとんど情報がなく、大統領は「菅直人首相から、『注意深く見守っている』と説明を受けた」と述べるにとどまった。 ニューヨーク市の近くには、北に約56キロいったところに、インディアン・ポイントという原子力発電所がある。ここの停止を長く求めていた市民団体「リバーキーパー」は11日のうちに、日本の被災者に対するお見舞いとともに、再び停止を求めることをブログで発表した。 原発に対する反応は、このように驚くべき早さで出てくる。 また、米ニューヨーク・タイムズは、地震発生後、米国内にいる核問題専門の記者まで動員して、原発問題を詳しく報じてきた。そして、3月21日には福島第1原発1号機が、運転開始から40年経っているにもかかわらず、経済産業省原子力安全・保安院が今後10年間の運転継続を認めていたと報道。「東電と関係当局の不健全な関係」を糾弾した。 と同時に、ニューヨークのインディアン・ポイントで放射能漏れ問題があった場合、50キロ圏内に800万人が住むニューヨーク市があることなどを詳しく指摘している。 全米の原発がある街の地方紙やラジオ局で、「原発が必要か」という議論が急増している。 1年前のハイチ取材を思い出して書いたが、指摘した2つの点は、1つは間違いなく日本の「美点」である。そしてもう1つは、世界にとって「原発とその安全性」について考え直し、背景にあるエネルギー政策についても再検討するきっかけになる「ウェイクアップ・コール(警鐘)」になったことだ。 このコラムについて 津山恵子の「NY発 メディア新世紀」 世界の情報メディアの中心、ニューヨーク。元共同通信記者のジャーナリストは、朝からニューヨーク・タイムズに始まりタブロイド紙、ニューヨーク・ポストなどを読みあさってインクで指が黒くなる。テレビ画面はCNN、MSNBCといったテレビニュースが世界中から生の映像と音声をわめきたてる。手元のPCではフェイスブック、ツイッターを回遊し、メインストリームからこぼれた情報にも舌なめずり。新手のソーシャルメディアにも挑戦するため、 iPhoneは指紋だらけ…。そして生のメディア、人間との飲みニケーションも欠かさない。iPhoneでニュースをチェックしながら、いつしか眠りにつくニューヨーカー兼ジャーナリストが地球の裏側から送る、最先端メディアの実情とその裏側。 ⇒ 記事一覧 著者プロフィール 津山 恵子(つやま・けいこ)氏 津山 恵子ニューヨーク在住ジャーナリスト。ウォール・ストリート・ジャーナル日本版コラムニスト。「アエラ」「週刊ダイヤモンド」等に、米国の政治やビジネスの記事を広く執筆。フェイスブック、ツイッター、フォースクエアなど多数のソーシャルメディアにアカウントを持ち、メディアウォッチすることが最近の趣味。元共同通信社記者。著書に『カナダ・デジタル不思議大国の秘密』等3冊
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