01. 2013年8月29日 01:41:06
: niiL5nr8dQ
JBpress>イノベーション>マーケティング [マーケティング] 途上国のネット接続実現で格差なき世界をつくる ソーシャル化する社会が世界を大きく変え始めた〜第39回 2013年08月29日(Thu) 小川 和也 「発展途上国の50億人にインターネット接続を提供する」 フェイスブックは8月21日、そのためのイニシアチブとして「Internet.org」をテクノロジー企業6社(エリクソン[Ericsson]、メディアテック[MediaTek]、ノキア[Nokia]、オペラ[Opera]、クアルコム[Qualcomm]、サムスン[Samsung])と協同設立した。 インターネットの恩恵を全人類に届けるという“大義” この7社は、主に次の3つの課題にフォーカスし、発展途上国のネット利用を実現するという(参照:フェイスブックによるプレスリリース)。 1.データ伝送の効率化によるインターネットアクセス料金の減額 2.アプリの効率化による使用データ量の低減 3.インターネット普及の新モデル構築 フェイスブックCEO、政治団体を設立か 教育・移民制度の改革狙い フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO〔AFPBB News〕 フェイスブックのさらなるユーザー拡大には、発展途上国の利用者を増やすことが重要であるという背景はあるものの、それを超えた大義のための活動であるには違いない。 そのことは、CEOのマーク・ザッカーバーグの次の発言からもうかがえる。 「不公正な経済の現実とは、すでにフェイスブックにいる人々は、それ以外の世界すべてを合わせたよりも多くのお金を有しているということだ。我々が今後非常に長い期間にわたってインターネットの恩恵に浴していない数十億人の人々に仕え続けることは、可能であったとしても、利益にはつながらないかもしれない。それでも我々は、誰もがネットに接続できるようにすべきだと信じている」 彼らは既にそのための素案を公開し、その改良意見を世に求め始めている。 現在のインターネットユーザーは27億人で、世界人口のおよそ3分の1にあたる。 しかしその増加率は毎年9%以下で、インターネットが成長過程の初期段階にあることに鑑みて低い成長率だということを彼らは危惧している(参照: “Is Connectivity A Human Right?)” この視点を持つのはフェイスブックだけではない。 2012年11月8日、米グーグルは発展途上国の利用者を対象とした Google Free Zone(グーグルフリーゾーン)というサービスを発表している。その1つ目のパイロットプログラムとしてフィリピンの通信キャリアである Globe Telecom と提携し、同国での提供を開始している。 このフリーゾーンは、インターネット接続機能を持つ携帯端末のユーザーが、検索、Gmail、Google+等のグーグル主要プロダクトを無料(データ通信契約も不要)で利用できるサービスだ。検索結果に表示されたリンク先のページにも無料でアクセスできる。 フィリピンのモバイルマーケットは既に飽和状態にあるものの、97%のユーザーがSMSを利用しており、モバイルインターネットの利用はわずか9.8%だ(2011年度 World Bank データ)。 フリーゾーンを通じてフィリピンでモバイルインターネットの利用を普及させ、より高性能な端末の買い替えとグーグルの利用を促す狙いはあるが、これもフェイスブックと同じく大義の下での取り組みと言えるだろう。 インターネットへの接続は経済格差や文化摩擦の解消を促す 「デジタルデバイド」という言葉がある。 これは、インターネットを中心とした情報通信技術を利用できる人とできない人の間に生じる経済格差を指す言葉として使われている。 1996年、当時の米国副大統領であったアル・ゴアがこの言葉を初めて公式に使用したと言われている。 これを受けて当時の大統領であったビル・クリントンが引用し、「人々は技術を開発し知識を共有しないことは不平等や摩擦、不安を生むきっかけとなるため、それらの課題に一丸となって取り組まなければならない」と述べている。 そしてここ日本においては、2000年前後からこの言葉が使われ始めている。 僕はこの数年、スリランカの児童養護施設の支援に携わらせていただいているが、その子供たちが将来活躍するための武器として、ITスキルが重要な意味を持つことを目の当たりにしている。 ちなみにスリランカのインターネット普及率は15.0%、バングラデシュ5.0%、カンボジア4.4%、ミャンマーになると1.0%というのが実情(参照:Internet World Stats / Internet Users 30-June-2012)であり、そのような国々でデジタルデバイドの解消がなされる意義は大きいと考えている。 例えば、電子メールの送受信や様々なデータベースの利用、商品の購入や音楽の受信配信、金融取引などが可能になることで、生活やビジネスの利便性が上がる。さらには新しい産業も生まれて育つ。 これらにより、経済的には労働生産性の向上、文化的には相互理解が深まることにつながる。また、国民が等しく国際情勢を手に入れることができ、政治的には民主化の推進を促すと考えられる。 そして重要なのは、インターネットのインフラ環境にとどまらず、その活用に関する教育や教育をする人を育てる仕組みづくりだ。いくらインフラが整ったとしても、それが有効に利用されなければ、その価値も半減する。 インターネットの普及が当たり前な先進国においては、世界全体で見た場合にはいまだにそれが普及しきれていない事実、しかも低成長率の中にあることを忘れがちだ。 だからこそ、発展途上国でのインターネットの普及がその国の姿を大きく変える余地があること、そしてそれが世界全体の発展にも寄与する可能性があることを、いま改めて思い返してみる必要がある。 スリランカの子供たちも、ある一定のITスキルが伴うだけで、人生が大きく変わっていく。一定のスキルといっても、インターネットが普及した国においてはごく当然のものばかりだ。 アル・ゴアが言及してから15年以上経ったいまもなお残存する「デジタルデバイド」の解消の意義を、僕も日々痛感している。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38542 |