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スパコン開発競争、米国を凌駕する中国の取り組み  WIRED
http://www.asyura2.com/09/it11/msg/809.html
投稿者 ダイナモ 日時 2013 年 6 月 21 日 19:03:22: mY9T/8MdR98ug
 

中国のスパコン「天河二号」は、300万個以上の中央演算処理装置を搭載する世界最速のスパコンだ(日本語版記事)。このスパコンの計算速度は毎秒3京回以上で、2位につける米オークリッジ国立研究所の「Titan」(毎秒1京7,590兆回)をはるかに上回るものとなっている。

スパコンの世界(日本語版記事)で長年優位に立ってきた米国では、エネルギー省が2016年前後に「Trinity」という天河二号に匹敵する性能のシステムを開発すると見込まれている。つまり、それまでは天河二号が米国のあらゆるスパコンを打ち負かす状態が続くことになる。これは米国の威信に関わると同時に、米国がスパコン分野でのリードを保つために十分な研究開発予算を投じているのか、疑問を投げかけるものだ。

「天河二号に関してもっとも重要なのは、処理速度が世界一ということだけでなく、このシステムがテクノロジーへの多額の投資から生まれたということだ」とテネシー大学でコンピューターサイエンスの教鞭をとるジャック・ドンガラ教授は述べている。

実際、天河二号には驚くほど多くの中国製部品が使われている。同システムは中国人民解放軍国防科学技術大学が開発した「Kylin(麒麟)」(日本語版記事)と呼ばれる特別製のLinux OSを搭載し、利用されているネットワーク機器も国産のもの。また、スパコンの管理ツールにも中国製プロセッサが利用されている。このため、米国製の部品は計算処理を行うインテル製のプロセッサのみとなっている。

もちろん、システムの心臓部に当たるインテル・プロセッサがもっとも重要な部品であることは間違いない。しかしドンガラ氏は、将来の中国製スパコンではこのプロセッサさえも中国製のものになると予想している(ただし、正確な時期についてはわからないと同氏は述べている)。「中国はスパコン向けとなるさまざまな部品の開発を進めており、最終的には純国産のシステムを実現するつもりだ」。

2001年の時点では中国がスパコンランキング「Top500」に入るようなシステムを1つも保有していなかったことを考えれば、これは驚くべきサクセスストーリーといえよう。また、これは欧州や日本、中国がスパコン開発の取り組みを強化するなかで、米国が同分野でのリードを失いつつあることを示す、警告のサインでもある。


http://wired.jp/2013/06/21/tianhe/  

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コメント
 
01. 2013年8月13日 15:04:23 : 88JBmMxGiU
【第9回】 2013年8月13日 佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
クラウド、モバイル、セキュリティが激変する!?
チップスケール原子時計の影響力
角砂糖大の原子時計が秘める可能性

 原子時計の小型化が進んでいます。それはチップスケール原子時計と呼ばれ、製品化も始まっています。例えば米国のベンチャー企業、シンメトリコムが製品化したチップスケール原子時計は、4×3.3×1センチですから、だいたい消しゴムぐらいの大きさですし、その中で原子時計そのものは1立方センチ、つまり角砂糖よりも小さいサイズです。現在、日本標準時として使われている原子時計は大きめのサーバ筐体くらいあり、それを考えると、チップスケール原子時計は格段の小ささになります。

 なお、チップスケール原子時計では標準時の計時で利用されているセシウムではなく、小型化が容易なルビジウムが使われていますが、ルビジウムの場合、セシウム原子時計と比べると誤差が3桁ぐらい大きくなってしまいます。だいたい100億分の1秒の誤差となります(わかりやすく書くと300年に1秒ずれることになります)。セシウム原子時計より誤差が大きいと行っても、コンピュータや腕時計に内蔵されている時計、つまりクオーツ(水晶発振子)と比べると1万倍ほど正確な時計となります(クオーツ時計の誤差は100万分の1秒)。

 チップスケール原子時計は半導体技術を使って作られるので、今後いっそうの小型化と低価格化が進むでしょう。そうなると、サーバなどの高性能コンピュータに原子時計が内蔵されることは十分想定され、「すべてのコンピュータに原子時計が搭載される」こともまったくの荒唐無稽の話とはいえなくなってきています。

 コンピュータにチップスケール原子時計が搭載されるようになると、測位、認証、インターネット、無線、暗号化などの多方面に大きな影響がおよぶだけでなく、新しいアプリケーションや産業を生み出します。

あなたの位置が誤差15センチで正確にわかる

 空間的位置と時間とは無関係に見えますが、時計の精度が上がると位置を計る、つまり測位の精度が格段に上げられます。

 例えばスマートフォンを含む電波の発信源の測位では、到着時間差方式と呼ばれる方法を用いることがあります。電波は基本的に光と同じ速度で伝搬することがわかっているので、発信された電波を3ヵ所以上の地点で受信して、地点同士の受信時間の差を調べ、その差から発信源を測位します。

 しかし、各受信地点の時計がクオーツ時計の場合、クオーツ時計の誤差の影響を受けてしまい、正確な受信時刻がわかりません。受信地点を増やしたり、最新の補正技術を駆使しても、例えば30メートル×30メートル程の室内空間ならば1メートル以上の測位誤差が出てしまいます。

 しかし、各受信地点がチップスケール原子時計を内蔵していれば、測位誤差を15センチ程度に抑え込める可能性がでてきます(ただし、電波状況や受信装置によります)。スマートフォンの電波には端末識別番号も含まれています。もし、あなたのスマートフォンの端末識別番号が知られていれば、あなたがいる位置が15センチの精度でわかることになります。

 さらに、仮に測位が15センチの精度であれば、ある人のスマートフォンと、別の人のスマートフォンが同時に同じ場所にあることは、ゼロではないですが、可能性は低くなります。同じ位置に同時にいる人は他にいないと考えることができます。さらに正確な時刻もわかるので、あなたがある時刻に、ある場所にいたという情報が、あなたと他人を区別するIDになりえます。高精度な測位は新しい位置サービスを生み出す一方、プライバシーを含めて、新しい問題を生み出す可能性があります。

株取引と原子時計

 原子時計は経済活動、特に株取引や為替にも影響を与えます。株価や為替レートは時々刻々と変化します。売買タイミングがわずかに遅れただけでも多額な損失が出ることがあります。仮に顧客が売買注文を出しても、証券会社がその売買処理に遅れたために損失が出てしまったとしましょう。損害賠償の裁判などで顧客は証券会社の売買処理が遅れたことを証明できるでしょうか。取引形態にもよりますが、その証明は困難です。

 というのは顧客のPCや証券会社の取引システムに、注文内容とその依頼または処理時刻は売買ログとして残ったとしても、その時刻を刻んだ時計が正確である保証はなく、売買処理が遅れたことの証明にならないのです。

 現在、株取引の高速化が進んでおり、顧客のPCや証券会社の取引システムに内蔵されたクオーツ時計の誤差が売買処理よりも大きくなることも考えられます。しかし、チップスケール原子時計になれば計時そのものは正確性が担保できます。

 このとき重要になってくるのは時刻の証明です。標準時の掲示に利用される原子時計では互いに誤差を補正し合う仕組みができています、そうした仕組みを利用することで、コンピュータが行った処理の時刻に偽りがないことを証明する方法も実現できるでしょう。その場合、前述のトラブルも防げるでしょう。

 また、株取引において売買発注依頼をした時刻が正確かつ保証できていれば、その時点で売買処理を行わず、あとから、その発注時刻における株価により、売買を成立させる方法も、まったくの不可能ではありません(もちろん取引内容によります)。そうした時刻ベースの売買処理が許される場合、売買処理システムは必ずしも現在のような高速処理は必要ないかもしれません。

グーグルがクラウドに原子時計を使う理由

 グーグルはSpannerと呼ぶシステムを導入しており、世界の各所に作ったデータセンターに原子時計を設置し、さらにGPS信号を使って時刻合わせをしています。どうして原子時計が必要だったのでしょうか?遠く離れた二つ以上のデータセンターにおける処理のどちらが先に実行されたのかを知るためです。

 詳しい説明はクラウドコンピューティングの基礎となる分散システムに関する知識が必要なので割愛し、ここでは物流を例にして説明してみましょう。

 問屋が小売店に品物を出荷したケースで考えてみましょう。問屋と小売店の時計が正確ならば、問屋が出荷した時間は、小売店に納品された時間より先になります。でも時計が不正確だと、納品が出荷よりも先に見えてしまうことが想定されます。実際の物流では輸送にはそれなりの時間がかかるので、時計が多少不正確でも、出荷の時間と納品の時間が逆になることはないでしょう。

 しかし、コンピュータ間通信では、コンピュータに内蔵されたクオーツ時計では十分に正確とはいえず、順番が入れ替わったように見えてしまうことが実際に起こります。このことはシステム停止の原因となりますが、原子時計であれば解消できてしまいます。

 グーグルはデータセンター単位に原子時計を導入しましたが、サーバ単位に原子時計を導入できる段階に来ています。詳細は省きますが、サーバが原子時計を内蔵すると、データセンターのサーバ数の削減も可能になり、クラウドコンピューティングの姿を変えてしまう可能性があります。

現在、一番有用なのは軍事系

 現状でチップスケール原子時計の重要な応用先は軍事系です。冒頭に紹介したチップスケール原子時計の製品を開発したベンチャー企業は米国防省から資金を得ていますし、他の米国のチップスケール原子時計関連のベンチャー企業も米国防省の支援を受けているところは多いです。というのは軍事系では正確性の高い時計は有用なのです。内容上、詳しく書きませんが、その一例を簡単にご紹介しておきましょう。

 ご存知のようにGPSによる測位は、スマートフォンによる道案内だけでなく、ミサイル誘導にも利用されています。さてミサイル攻撃による被害を小さくする手段の一つは、ミサイルに現在位置を見失わせて、間違った場所に着弾させることです。具体的にはミサイルにジャミング信号を照射してGPS信号を受信させない方法や、または間違ったGPS信号を受信させる方法があります。一方で今度はミサイル側も対策をたてることになりますが、そのときミサイルが正確な時計をもっていると、ジャミング信号などの妨害による影響を最小化できるそうです。

 また軍事系の通信では、通信内容を傍受されないために暗号化してから送信されますが、その暗号化における鍵の生成方法は、送信側と受信側で時間情報を共有していると、強力な鍵を作りやすくなるといわれており、結果的にセキュアな通信が実現できることになります。

 また、敵軍の船舶や戦車などの対象物の位置をレーダーで推定する場合、対象物から反射波を複数地点で受信します。このとき原子時計により反射波の到着時刻が正確にわかれば、前述の測位システムと同様に対象物の位置も正確に捕捉できることになります。

センサーネットワークの高度化で防災

 センサーネットワークとは、現実世界に設置した各種センサーを搭載したセンサーノードをネットワークで結び、そのセンサーが計測したデータを、ネットワークを介して集めるシステムのことです。例えば火山監視で使われるセンサーネットワークでは、火山の各所に地震計や加速度センサー、角度センサーなどを設置して、ネットワークを介して振動や隆起の情報を集めます。例えば地中で爆発が起きますと、各センサーノードでその爆発による揺れを計測することになりますが、そのとき複数地点で揺れが到着した時刻を調べれば、地中のどの当たりで爆発が起きたのかが推定できます。

 このときに問題になるのは各センサーノードに内蔵された時計の誤差です。この誤差が大きいと、各センサーノードに揺れが到着した時刻を正確に測れませんし、爆発が続けて起きているような状況では、別の爆発による揺れと区別ができないこともあります。

 これが原子時計になるとどうでしょうか。前述のように時計の誤差は大幅に小さくなります。時刻合わせも、センサーノードの設置場所が野外ならばGPS信号を受信できますが、そのGPS信号に含まれる時刻情報は百万分の一秒程度の誤差であり、一般の野外センサーであれば十分な精度で時刻合わせができます。さらに地震を含む自然界の振動や揺れは比較的遅い周期ですし、伝播速度も遅いことから、地震計などはチップスケール原子時計が内蔵していれば、工場出荷時に、一度だけ時刻合わせをしておけば、10年程度であれば、地震計測に十分正確な時間を維持できると想像されます。

 なお、チップスケールの原子時計の消費電力は大きなものではないので、長期の運用も不可能ではありません。つまり、通信による時刻合わせよりも、チップスケール原子時計の方が維持コストを減らせる可能性もあります。

 センサーネットワークというと研究レベルの話と思われがちですが、いまは現実世界でも広く利用が始まっていますし、今後の普及が重要となります。笹子トンネルの事故のように、日本ではトンネルや橋などの公共インフラの多くが高度成長期に作られたために、一斉に老朽化しています。トンネルや橋にセンサーネットワークを設置して、その老朽化状況を把握することが望まれています。そのときチップスケール原子時計により、センサーノードが正確な時計を持つことは、センサーによる状況把握の正確性もあげますし、センサーネットワークの運用を含めたコスト削減にも役に立つはずです。

まだ実現していない新しい技術に否定的な研究者たち

 これまでも人類は各種方法で時間を測ってきました。クオーツ時計は人間にとっては十分に正確な時計かもしれませんが、いまのコンピュータやネットワークの性能を考えると、大雑把な時間しか測れないといって過言ではありません。チップスケール原子時計はクオーツ時計による精度の問題を解決してくれますし、多方面に大きな影響を与えます。そして、ここで説明した事例はその影響のほんの一部にしか過ぎません。

 最後に個人的雑感を書かせてください。著者は6年前ですが、チップスケール原子時計が実現していなかった頃、チップスケール原子時計が登場することを仮定した上で、クラウドコンピューティングの基礎となる分散システムへの影響を調べる研究をしたことがあります。その当時は同業の研究者のほとんどは否定的で、前述の「すべてのコンピュータに原子時計が内蔵される状況もありうる」と話すと、「荒唐無稽」や「ナンセンス」「ありえない」などと否定というか、拒絶するような言葉ばかりいただいていました。

 まだ実現されていない、新しい技術に対して否定的な見解をするのは簡単です。しかし、チップスケール原子時計のように大きな影響が想定される技術は、頭ごなしに否定、拒絶する前にどんな影響が出るかを考えることもたいせつなはずです。
http://diamond.jp/articles/print/40022


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