★阿修羅♪ > IT11 > 797.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
アマゾンがアップルのビジネスを侵食しようとしてきています。秋のiPhone5Sからのドコモ取り扱いの可能性は五分五分
http://www.asyura2.com/09/it11/msg/797.html
投稿者 TORA 日時 2013 年 1 月 19 日 13:30:21: CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu280.html
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
--------------------------------------------------------------------------------
アマゾンがアップルのビジネスを侵食しようとしてきています。秋のiPhone5S
からのドコモ取り扱いの可能性はゼロから五分五分までは高まってきた。

2013年1月19日 土曜日

◆アップル帝国に挑むアマゾン 1月18日 大西宏
http://blogos.com/article/54287/

ビジネスは生き馬の目を抜く世界といわれていますが、アマゾンがアップルのビジネスを侵食しようとしてきています。もちろんKindleが、タブレット市場で勢いづき、この成長分野でサムスンやASUSとともにアップルからシェアを奪ってきていることもありますが、それよりは、これまでアップル製品とプラットフォームに顧客を囲い込み、ハードで稼ぎ、さらにコンテンツ販売でも稼ぐ土俵に土足で乗り込み、この構図を崩そうという動きが起こって来ています。

それにしてもASUSはよくやりますね。以前、ASUSの販売力を過小評価しNexus7は日本では売れないだろうと見誤ってしまいましたが、2012年12月では、国内ではサムスンもアップルをも抜いてトップに躍り出ていました。たとえiPad miniの品薄が原因だとしても立派にポジションを固めたという感じです。
ASUS、「Nexus7」でAppleの「iPad」を上回るータブレットシェア :

さてアップルの動きがなにか遅い、もうジョブズ時代のようなサプライズがなくなってしまったと感じ始めている人は多いと思います。もうイノベーションの切り札を生み出せなくなってしまったのでしょうか。勢いが鈍るとかならず、ライバルはその市場を奪いにやってくるものです。

日本では、アップルの電子書籍が出遅れているために、iPadとかiPad miniを持っていても、電子書籍はアマゾンなどで購入しています。それが当たり前になってくると日本での電子書籍は、これまでのようにiPadとかiPad miniユーザーを自動的にコンテンツ販売でも囲い込めるという図式は成り立たなくなります。

そしてさらに、アマゾンはiPhoneとiPod touch向けに最適化した「Amazon MP3 Store」をオープンするそうです。いやはやこれが成功するかどうかは見ものです。
米Amazon、iPhoneとiPod touch向けに最適化した「Amazon MP3 Store」をオープン (1/1):MarkeZine(マーケジン) :

アマゾンとしては、アンドロイドユーザーだけでなく、アップルユーザーにもコンテンツの販売を広げていこうということですが、この流れができると、アップルが差別化できるのはハードとアプリだけになってしまいます。
これまでなら価格主導の市場はアンドロイド、クオリティ志向の市場はアップルと棲み分けてきたと感じるのですが、その際も崩れかねないのではないでしょうか。ユーザーの立ち位置からすれば歓迎そのものですが。

◆状況一転!ドコモがiPhoneを扱う条件 1月18日 大関暁夫
http://blogos.com/article/54288/

ドコモ側の考えうるiPhone取り扱いに向けたネックは、年末に私が書いたとおり、@既存のコンテンツサービス維持、Aアップル製品に市場を席巻される電波行政面での懸念、Bドコモと二人三脚でガラケービジネスモデルを支えてきた大手家電各社の擁護、です。しかしこのいずれもが、アップル側が提示する高い販売シェアノルマにかかわるものであり、そのシェアが交渉によって引き下げる余地が生まれるのなら、俄然ドコモのiPhone取り扱いは現実味を帯びてくるでしょう。

では、どのくらいの販売シェアノルマまで下がるならドコモは取り扱いにGOを出すのかです。ランチェスター戦略にけるシェアの考え方から探ってみます。有名な目安数値に42%というのがあります。これは特定の市場において「独走」を決定付ける数値であり、アップルはこれまで戦略的に考えてこの42%を上回る販売シェアノルマを提示し、ドコモの携帯販売においても独走を実現しようと目論んでいたに違いありません。ドコモ側(および大株主の日本政府側)とするなら、この42%は最低でも下回らなくては話にならないわけで、これまでの交渉がたびたび決裂してきた理由はここにあります。

42%の次にある目安数値は、26%。これは市場争いをする際に言われる「強者」を決定付ける数値です。すなわちiPhoneが販売ノルマで26%以上のシェアを持つなら、ドコモの全製品内で「強者」に位置づけられることは確実であり、ドコモや日本政府の思惑からすればこの数値も上回ることは好ましくないはずなのです。

さらにその次は、19%と11%です。19%は市場における上位グループの目安、11%は市場に影響を与える存在の目安数値です。すなわち、少しアバウトに言うなら10〜20%あたりが「存在感がありながらも強い存在にはあと一歩」といった市場シェアになります。ここらあたりがドコモや日本政府的には、どうにか納得でアップルと握手できる限界点ではないのかと考えられるところです。問題はアップルがこの数値をどう考えるかです。現実的には恐らく20〜25%ぐらいが両者の攻防ラインになるのではないかと考えます。

ドコモがアップルとの交渉を継続していることは確実であり、これまでは隔たりが大きかった両者の主張ですが、シェアの面でアップル側からの歩み寄りが見られるなら、一気に交渉成立ということもありうる展開だろうと思います。ドコモもiPhoneの勢いが落ちているとはいえ、今年度の業績下方修正を受けて迎える加藤体制にとって2年目の来年度は正念場。販売台数、ナンバーポータブル大幅増加が見込めるiPhoneは製品の勢いは落ちていようとも確実に欲しいアイテムではあります。一方のアップルもジョブズ後の新製品開発力の低下が否めない中での減速で、販売戦略の強化は至上命題でもあります。

両者の思惑の変化による歩み寄りも現実味を帯び、秋のiPhone5S(?)からのドコモ取り扱いの可能性はゼロから五分五分までは高まってきたとみていいでしょう。秋からの取り扱いを前提で考えるなら、来年度入り前の2〜3月が交渉のヤマ場になるのではないでしょうか。両社の動向を注目して追いかけたいと思います。


(私のコメント)


最近の情報家電戦争はめまぐるしく状況が変化して来ています。一ヶ月前に書いた事が引っくり返されるような事も起きます。デスクトップパソコンも隅に追いやられて、主力のノートパソコンもだんだんとタブレットパソコンに侵食されて来ています。インターネットを主に使うユーザーならパソコンでもスマホでもかまわないわけですが、その中では7インチのタブレットパソコンが新品で1万円台で売りに出されています。

特売品なら新品でも1万円以下でも売っている機種もあります。タブレットでも10インチでは大きくて持ち歩きには不便ですが、7インチならポケットに入る大きさです。持ち歩きならスマートフォンが便利ですが、インターネットには画面が小さすぎる。せいぜいメールなどにしか使えない。しかも価格的にも軽さから言っても7インチタブレットが安くて実用性があるように思える。

要するに7インチタブレットは、インターネットに特化したパソコンであり、ハードもソフトも不必要なものは取り払って、なおかつ持ち歩きも出来て、画面も何とか見るには十分な大きさと言うと7インチタブレットになるのだろう。アマゾンからキンドルが1万円台で発売されて、グーグルからネクサス7が2万円そこそこで発売された。これでは小型ノートパソコンは売れなくなるだろう。

10インチクラスのタブレットは、大きさから持ち歩きにくいし、家で使うにはノートパソコンで十分だ。私自身は相変わらずデスクトップとノートパソコンでスマホもタブレットも持っていない。外に出歩く時は財布だけで十分であり携帯もスマホも持ち歩くには面倒だ。ゲラケーもスマホも買ってはみたが使わないから引き出しの中にしまいっ放しだ。

もし使うとすれば、7インチのタブレットであり、アマゾンのキンドルなら通信料金もかからない。電子書籍にもなるしネットやメールも出来るしポケットに入るから携帯性もある。iPhoneが追ったほど売れずに生産を半減すると言ったニュースがありましたが、アンドロイドスマホやタブレットに売れ行きが分散しているからだろう。ニュースでもNexus7がiPadを上回る売れ行きだ。

iPhoneとiPadも、いずれは安くて高性能なアンドロイドが出てくれば負けることは予想が付きましたが、状況の変化はあまりにも急激だ。 ビジネススタイルもアマゾンはキンドルを原価割れで売っていますが、その分はサービスで稼いでいくための道具に過ぎないと言う事だ。私もアマゾンで多くの物を買うようになりましたが、このようなネット販売は、テレビ通販も脅かすほどになり、物流に革命が本当に起きつつある。

iPhoneの売れ行き不振が、ドコモがiPhoneを売り出すきっかけになるかもしれないと言う話があります。それだけアップルは強気で有利な条件を突きつけていたからですが、「総販売台数の50%近いシェアをノルマとして要求」と言うのはドコモは飲めないだろう。それは国産メーカーを切り捨てる事になるからですが、もしそれが20%台ならドコモはiPhoneを扱うようになるかもしれない。

性能的にもiPhoneとアンドロイドスマホとは、そんなに差がなくなってきたようだ。何よりも価格ではアンドロイドスマホが安くて性能も大差ないとなれば、高いiPhoneより安いアンドロイドスマホが売れるようになった。タブレットでもNexus7がiPadを上回るようになった。それに対抗して廉価版のiPhoneを開発していると言う事ですが、製品単体では価格競争になって利益が出なくなってくるだろう。

そうなればアップルも強気にはなってはおれずに、ドコモに有利な条件でiPhoneを売るようになるだろう。しかしながら私は幾らタブレットが安くなっても買う気にはなれない。日本では電子書籍に期待したが、未だに出版業界では電子書籍に消極的であり、著作権の問題もなかなか進展せずに新刊書の電子販売が進まない。仕方が無いから自分で電子化する自炊も検討したが、本をばらさなければならない。

「株式日記」も一種の電子書籍ですが、ネット環境があればスマホでもタブレットでも読むことが出来る。私が欲しいのはスマホでもなくタブレットでもなく、本をばらさずにスキャンが自動的に出来るスキャナーであり、それが出来れば多くの書籍を自分で電子化してタブレットで読むことが出来るようになるだろう。電子書籍端末は一台のタブレットに数千冊も蔵書が出来るから、自宅に溢れかえった本を整理することが出来る。


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2013年1月19日 23:32:41 : 8XRO7gSBc6
IT は電子図書館、電子出版の仕組みを構築することが目的で有る。このことは1945年に始まった。Amazon,Apple はその事を忠実に行ってきた。特にAmason は、本を押さえることで着々と準備してきたのである。ジョブズは分かって製品を開発してきたが、後継者はわかっていないのではないだろうか。秀吉と家康のようなものか。

02. 2013年1月21日 01:50:23 : PqjmrbHmZ6
松下幸之助が生きていたら、この分野(隙間ビジネス)は

現在でも日本の独壇場だったのにな。


03. 2013年1月25日 00:35:37 : xEBOc6ttRg
「すべてを公開せよ」と宣言した若きネット活動家の最期

アーロン・スワーツが目指した理想のネット世界

2013年1月25日(金)  The Economist

 若き天才プログラマーであり、ネット活動家として知られたアーロン・スワーツ氏(26歳)が自殺した 。同氏は、何の規制も制約もない自由な情報の公開・流通を目指した。スワーツ氏は、どのような人物だったのか。

 アーロン・スワーツ氏*1の人生には、狭くて暗い、散らかった場所が欠かせなかった。極端な近視だったスワーツ氏は、ケーブルの束が床を這い、ハードディスクが積み重なる寝室で、ノートパソコンのMacBook Proの上にかがみ込み、画面に触れるほど顔を近づけて日々を過ごした(どうしてノートパソコンの画面は目の高さにないのだろう、と彼は疑問に思っていた)。

 多くの利用者を集めるコミュニティサイト「レディット」*2のシステムを猛烈な勢いで開発していた2005年、スワーツ氏は同サイトの3人の共同創業者と一緒に、マサチューセッツ州サマービルのシェアハウスで暮らしていた。彼のベッドはクローゼットの中だった。

 スワーツ氏が2010年11月に、自分のノートパソコンを密かに隠しておいたのも、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の地下にある狭い配線室の中だった。そこは鍵のかからない小部屋で、ホームレスがここに荷物を置いたりしていた。スワーツ氏はこの部屋で、隠したパソコンをMITのコンピューターネットワークに直接接続した。

囲い込まれた学術論文を“解放”

 スワーツ氏の目的は、学術誌のアーカイブ、JSTOR*3から、できる限り多くの論文をダウンロードすることだった。JSTORを利用するには有料登録が必要。図書館や学術機関などからしかアクセスできなかった。

 スワーツ氏は、JSTORのこのようなあり方は道徳的に間違っていると考えた。そこに収められた知識は、誰でも無料で利用できなければならない、と(結局のところ、その知識の多くは公的な資金によって得られたものなのだ)。

 そして、この知識を誰でも利用できるようにすることは、ばかばかしいほど簡単だった。スワーツ氏は図書館のネットワークへのアクセス権を既に有していたため、システムに不正に侵入する必要などなかった。自分のパソコン上で「keepgrabbing.py」というプログラムを普通に走らせ、JSTORから480万本の論文を恐ろしいほどの速度で“解放”した。

 MITはこの流出を食い止めようとしたが、スワーツ氏はその都度対策の裏をかいた。ついにはMITの配線室でネットワークに直接ノートパソコンをつなぐという手段に出たのだった。

 スワーツ氏は、これ以外でも同じことをしている。それも何度もだ。2006年には連邦議会図書館の蔵書目録(この閲覧には法外に高い利用料が必要だった)を手に入れ、「オープン・ライブラリー」*4に投稿して誰でも無料で閲覧できるようにした。

*1=Aaron Swartz。カタカナでシュワルツとも表記されるが、実際にはスワーツまたはスウォーツに近い音で発音されることが多い。

*2=Reddit。誰でも自由にコメントや他サイトへのリンクを投稿できるスレッド形式の掲示板。投稿やコメントをプラスとマイナスで評価することができる。このタイプの掲示板としては、現在最も多くの利用者を集めている。

*3=Journal Storage。現在約1500タイトル、40万号の学術誌を電子化してアーカイブしている。非営利団体のITHAKAが運営する。

*4=Open Library。スワーツ氏自身が主導して立ち上げたウェブ上のデジタル図書館。カリフォルニア州立図書館とケール・オースティン財団が出資する非営利団体が運営する。

 2009年には、連邦裁判所のすべての電子記録を保存するPACERシステムから誰にも気づかれないうちに1990万ページの文書をダウンロードし、クラウドのデータベースにアップロードした。この時は、PACERシステムが試験的に無料利用を実施したのに乗じて、ある公共図書館からアクセスした。これもまた容易な仕事だった。Perl(パール)というエレガントで軽量なプログラム言語を使い、文書を手にした。

ウェブの進化に貢献

 プログラムを書いて情報を自由化すること――どうやらスワーツ氏は、幼い頃からこの作業をずっとやってきた。父親はIT企業の経営者で、アーロンが生まれた時、家の書斎にごく初期のマッキントッシュがあった。ぽっちゃりとした読書好きのアーロン少年は、12、13歳の頃には、ウィキペディアの先駆けとも言える「theinfo.org」というサイトを立ち上げた。世界中の知識を1つのウェブサイトに集めようという試みだった。

 それからほんの1年ほど後、ワールドワイドウェブの開発者であるティム・バーナーズ=リー氏と協力して「セマンティック・ウェブ」の構想を立ち上げた。そして、データ共有の方法を進歩させ、動画やニュース記事の配信に用いるRSS 1.0という規格の開発に携わった。

 また、著作権のライセンス供与を単純化するクリエイティブ・コモンズの開発にも貢献した。

 スワーツ氏はこういった活動で莫大な収入を得られたかもしれない。だが、金銭的なことにはあまり関心を抱かなかった。彼は世界をより良く、より自由で、より進歩的な場所にすることを望んでいた。

ネット自由主義の活動家として

 スワーツ氏は、高校もスタンフォード大学も中退した。その後、膨大な本(それも多くは哲学書)を読み、独学で学んだ。友人を作っては大喧嘩をして別れた。理由は、彼らが自分のような完全主義者ではないことだった。会合に出席する時は、髪の毛はぼさぼさで無精髭も剃らず、内気なオタクといったいでたちだった。だが黒い目の光は強く、ときおり、社会をひっくり返してやるというような青年らしい不敵な笑みを浮かべた。

 レディットを2006年に米コンデナスト*5に売却した時には大金が入ってきたが、新しいオフィスでの仕事には惨めな思いが募った。米グーグルからの誘いがあったが、刺激的でないからと断った。スワーツ氏の気持ちを捉えたのは政治運動だった。

 スワーツ氏は、オンラインですべてが自由に入手できる世界−−エリートや金持ちによって何かを隠されたり、検閲を受けたりすることがない――を求めた。2008年に書いた「ゲリラ・オープン・アクセス・マニフェスト」で、彼はこう宣言している。情報は力である。ネットに接続する自由を得るための戦いは、「こっそりと」「暗闇の中で」「秘密裏に」行わなければならない、と。

*5=Conde Nast Publications。ファッション誌『ヴォーグ』、『GQ』のほか、技術カルチャー誌『ワイアード』(ウェブ版も含む)などを発行する世界的な出版社。

 米下院の超党派グループが2011年にオンライン海賊行為防止法案(SOPA)*6を提案した際、スワーツ氏は最も激しく反対の声を上げた。2012年、法案の死を最も誇らしげに宣告したのもスワーツ氏だった。

心身を病んだ末に

 だが、JSTORの一件が大問題となって降りかかってきた。MITの配線室にノートパソコンを取りに戻ったスワーツ氏を、大学警察が逮捕したのだ。容疑は通信詐欺、情報窃盗など13件。この春には裁判が行われることになっており、有罪になれば最大35年、刑務所に入る可能性があった。

 連邦検察官の起訴内容は、実際にスワーツ氏が行ったことに比べてあまりにも大げさすぎた。MITもJSTORもスワーツ氏と和解していた。特にJSTORは、その後、アーカイブの一部を公開した。まるでスワーツ氏に言われて目が覚めたと言わんばかりだった。だが検察官は、盗みは盗みだと言い張った。

 こうした事柄が長年にわたり、スワーツ氏に少しずつのしかかっていった。彼はブログの読者に向けて、「上を見よう。下を見るな」と書いている。「自分の欠点を認めよう」。「痛みを進んで受け入れよう」。だが、自身がそのアドバイスを受け入れることは難しかった。

 体調は崩れていった。同時に複数の病気に苛まれた。偏頭痛が頭を切り刻み、身体は焼けるように痛んだ。1日の大半の時間を暗い気持ちで過ごした。悲しみが痛みの筋となって身体を貫いた。本も、友人も、哲学も、ブログでさえ救いにならなかった。唯一彼が望んだのは、部屋の灯りを消し、ただひたすらベッドに横たわっていることだった。

 スワーツ氏は2002年に、自分が死んだらどうしてほしいか、という希望を自身のサイトに投稿した(最後に「まだ死んでないけどね」と付け加えている)。

 墓に埋めるのはかまわないが、身体の上に土をかけずに、酸素が通るようにしておくこと。そして自分のハードディスクに残っている内容はすべて公開すること。何も削除してはいけない。何も公開を控えてはならない。何も秘密にしてはいけない。一切、課金してはならない。あらゆる情報を白日の下にさらすこと。すべてがそうあるべきであるように。*7

*6=Stop Online Piracy Act。著作権者や行政の権限を大幅に拡大する法案。ある著作物のオンラインでの掲載を禁止するよう、裁判所に求められるようにする内容だった。スワーツ氏らの反対運動や、オバマ政権による一部条項への反対などにより、2012年初めに事実上の廃案となった。

*7=この部分は、スワーツ氏の言葉を引用したものはない。

©2013 The Economist Newspaper Limited.
Jan 19th 2013 All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


英国エコノミスト


1843年創刊の英国ロンドンから発行されている週刊誌。主に国際政治と経済を中心に扱い、科学、技術、本、芸術を毎号取り上げている。また隔週ごとに、経済のある分野に関して詳細な調査分析を載せている。


The Economist

Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。


04. 2013年1月25日 01:11:33 : xEBOc6ttRg
【第418回】 2013年1月25日 岡 徳之
“IGZO搭載スマホ”はなぜヒットしているのか?
崖っぷちの電機各社を救う「ミラクル家電」の条件
熱気溢れる世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)の直前、その盛り上がりに水を差すような調査結果が家電協会から発表された。2012年のデジタル家電の世界売上高が、リーマンショック直後となる09年以来の前年割れになったというのだ。業績不振に喘ぐ日本の家電メーカーにとっても、不安なニュースである。しかし一方で、一筋の光も見え始めた。シャープの高画質新型液晶「IGZO」(イグゾー)を搭載したスマホの売れ行きが、絶好調だというのだ。苦境のなかでもヒット製品を生み出すことができれば、各社は復活への道筋をつけることができる。「IGZO搭載スマホ」がヒットしている背景をリサーチし、今ユーザーが本当に求めている技術・製品の条件を探ってみたい。第二、第三の“ミラクル家電” は出るか。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)

4Kテレビのフィーバーに水を差す
「世界家電市場前年割れ」の一報

 今月8日、米国はラスベガスで世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)が開催された。毎年、家電業界の関係者やファンの間で話題になる催しだ。

 今年の目玉は「4Kテレビ」。家電などのマーケティング調査を行なっているBCNによると、これは表示パネルの解像度がフルHDの4倍もあるテレビのことで、あたかもそこに実体があるかのようなリアルで高精細な映像を楽しめるという。

 デジタル家電ファンにとって、4Kはテレビで起きる久しぶりの革新である。今春から国内、海外メーカーから続々と発売される予定で、待ちわびている人もいるだろう。

 しかしこのCESの直前となる1月6日、関係者の盛り上がりに水を差すような調査結果が発表された。米家電協会(CEA)によると、2012年のデジタル家電の世界売上高が、リーマンショック直後の09年以来の前年割れとなり、前年比1%減の1兆580億ドル(約93兆1040億円)になった模様だと伝えたのだ。

 大赤字に苦しみ、大規模なリストラを推し進めるソニー、パナソニック、シャープなど、日の丸家電メーカーの惨状を見るにつけ、長引く不況による需要減とそれに伴う低価格競争は、深刻の極みにある。

 2013年は前年比4%増の1兆1050億ドルと、緩やかな回復を見込んでいるというが、従来花形といわれた白物家電の不調が続くなか、その穴を埋めるデジタル家電に期待をかけていた業界関係者は、肩を落としたことだろう。

 海外でデジタル家電が前年割れに陥っている背景について、月刊『IT&家電ビジネス』の川添聡志編集長は、「ここ数年、世界の売上は新興国市場のニーズで支えられてきたが、その反動がきている」という。

 テレビについて言えば、放送網のインフラは世界的に整備されつつあるものの、新興国企業は低価格帯で勝負をかけて来ているため、金額ベースで見ると全体のパイが大きくなっていないというのだ。

 こうした世界情勢に対して、日本のデジタル家電市場はどうか。BCNが16日に発表した分析によると、スマートフォン・タブレットの市場拡大が続く一方、薄型テレビは年末商戦も低調。昨年12月は、例年のような盛り上がりには至らなかったという。また、テレビ本体への録画機能の搭載が主流になる中で、レコーダも過去3年間で最も低迷するという結果になったという。

 国内の動向について、川添編集長は次のように分析する。

「薄型テレビについては、これまで地上デジタル放送への切り替えやエコポイント還元による、半ば強制的ともいえる買い替え特需の創出により、消費者に無理に買わせてきた反動が大きいと思います。だから、必ずしも不調ということではないでしょう」

 しかし一方で、中長期的な視野で見ると、少子高齢化の影響で世帯数は減少し続けている。一世帯当たりの人員数も2.5人ほどに減っていることを考えると、注視が必要だ。

「低消費時代」が定着した日本市場
苦境に喘ぐ家電各社が募らせる不安

 またもう1つ、日本ならではの不安要素もある。それは「低消費時代」の到来だ。これまで年末のボーナス商戦と言えば、大物家電を買うことが多かったが、最近は低額で小さな家電を買う傾向へとシフトしている。

「リビングに置くテレビを選ぶ基準も、まずは予算ありき。10万前後が売れ筋で、60型のような大型製品は20万円以下でやっと検討の俎上に載るほどです」(川添編集長)という状況である。

 また、デジカメの買い替えサイクルは5年、白物家電は10年と言われる昨今、ユーザーは「急いで買わなくても、半年も待てばすぐに安くなるだろう」いう感覚を持っている。各社が似たような機能やビジュアルの商品を取り扱う家電業界は、価格競争に陥りやすい。

 さらに、安くしたからと言って、数がたくさん売れるわけではない。一昔前とは違い、今や可処分所得の高い20代でさえ「低消費」に慣れ切っている。「お金をバンバン使って、欲しいものを揃えたい」という欲求は乏しく、必要なものを安く買いたいという欲求が大きい。

「スケールメリットで安くする代わりに、販売数を最大化して利益を出す家電量販店のモデルや、一部のヒット商品に頼るやり方は、家電メーカーとってこれからさらに難しくなるでしょう」(川添編集長)。

足もとで見え始めた一筋の光
「IGZO搭載スマホ」の快進撃

 こうした状況を見る限り、しばらく各社の苦難は続きそうだ。構造不況に陥った日本の家電市場は、もう盛り上がることはないのか。そして、このまま衰弱していくしかないのか。

 実は、そうとも言い切れないトレンドが見え始めている。足もとでは、窮地に陥っている家電メーカーから、意外なヒット商品も出ているのだ。

 それが、シャープの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」(アクオスフォン ゼータ SH-02E)である。BCNによれば、同製品は2012年11月下旬の発売以降、「スマホ機種別販売台数ランキング」にて、「iPhone5」を抑えて6週連続の1位を獲得している。過去3年間で見ると、「iPhone」(アップル製)、「Xperia」(ソニーモバイルコミュニケーションズ製)シリーズに次ぐ人気ぶりだ。

 その理由は、シャープの高画質新型液晶「IGZO」(イグゾー)を搭載したことで、バッテリーが長持ちすることにある。「充電しても1日もつかどうか」というスマホのバッテリーが、2日間ももつように設計されているのだ。

 防水機能や赤外線通信、おサイフケータイに至るまで、従来の携帯電話に付いていた機能を全て搭載しているのもウリだ。スマホが好調なKDDIやソフトバンクに比べ、「一人負け」と揶揄されていたNTTドコモにとっても、一筋の光と言える。

 特需で買い替え需要が食いつぶされ、「低消費時代」でユーザーが動きにくいなかでも、「IGZO」搭載スマホのように受け入れられるものもある。苦境下でもそうした製品を生み出せる企業とそうでない企業との間には、どのような差があるのだろうか。

 これについて川添編集長は、「日本の家電メーカーの最大の弱点は、テクノロジー至上主義にこだわり、顧客至上主義ではないところにあります」と分析する。

 高度経済成長時代の家電は、三種の神器(白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)、3C(自動車=カー、クーラー、カラーテレビ)などが、生活水準向上の象徴として崇められ、普及していった。これらは人々の暮らしを便利にするという「本質的な機能」にユーザーのニーズが集まった。

 しかし、世の中の生活水準が向上し、バブル期に入る頃には、本質的な機能ではなく「付加的な機能」を重視した製品が増えて行った。家電の進化に伴い、買い替えサイクルも長くなって行ったのだ。

 その後、「失われた20年」と呼ばれる長い不況の中で、ユーザーのニーズは再び本質的な機能へと戻って行ったが、これだけ不振を極めている現在でさえ、テクノロジー至上主義から抜け出せていないケースもある。高性能のハードウェアを買ってもソフト(コンテンツ)の量が少なく、当初の予想よりも普及に時間がかかっている電子書籍端末は、メーカー主導、テクノロジー至上主義の最たる例と言える。

ポケットドルツにロボット掃除機
売れる秘訣は「生活提案型」にあり

「今後は、むしろ “生活提案型”の家電でニーズを掘り起こしていくことが必要であり、その意味では、商品力よりもマーケティング力が重要になるでしょう」(川添編集長)

 たとえば、パナソニックの電動歯ブラシ「ポケットドルツ」。携帯できる電動歯ブラシは、これまでも腐るほどあった。しかし同社は、「働く女性がランチ後にポシェットから出して使う」というイメージを打ち出し、新たな商品活用シーンを掘り起こして、新規需要をつくり出すことに成功したのだ。

 単に電動歯ブラシの性能競争だけなら、こうしたヒットは生まれない。隠れたニーズ(潜在需要)をいかに掘り起こすかが重要なのである。たとえば、デザインや形状、機能を加算するのではなく逆に絞り込むという、マーケティングに基づいた商品開発の発想も必要だ。

 この視点で言うと、ロボット掃除機やハンディ型の掃除機が人気なのも、“生活提案型”としての機能が受け入れられているせいだろう。家をきちんとキレイにできる一方で、それを使う主婦は従来よりも体力的、手間的な負担を減らせる。

 また、掃除の仕方にも新しい提案を投げかけている。「充電しなくても一部屋くらいは掃除できるため、日替わりで違う部屋を掃除すればいい」というメッセージが、主婦の潜在ニーズを捉えているのだろう。消費者目線で「生活がどのようによくなるのか」を明確に示し、スペック勝負からの脱却につながっている。

 シャープのロングセラーである 「穴なし」洗濯機も、それに当たる。従来の洗濯槽の周囲には脱水のための穴が空いており、洗濯槽の外側に水が溜まることから、黒カビが発生し易かった。

 この黒カビが水と一緒に槽内へ侵入すると、きれいな水で洗うことができないが、穴なし槽なら黒カビが入り込む穴がないので、いつも清潔な水で洗うことができる。

 穴なし槽のメリットは洗濯時だけではない。洗濯槽の周囲に穴がないため、乾燥の温風が逃げず、槽内の温度が短時間で上昇する。そのため、効率よくスピーディに乾燥できるようになった。

今使っているスマホではなく
タブレットが必要な理由を伝えよ

 その反面、今まさに旬と思えるデジタル機器の中には、「生活提案型」への訴求が十分ではないものも見られる。それが、アップルの「iPad mini」、グーグルの「Nexus」、アマゾンの「Kindle」といったタブレット端末だ。川添編集長は、「このままでは他のデジタル家電と同じ道を辿りかねません」と警鐘を鳴らす。

 タブレット端末は今、「アップルというブランドで選ぶか、それとも価格の安さで選ぶか」という二択の状況にある。またそもそも、売れている背景は話題性のみの感もある。

 これからさらに市場を発展させていくためには、これを使うとどうなるのかを示し、さらに関連商品やケアサービスも含めてビジネス化していく必要がある。何も、訴求するのは最新の機能でなくてもよい。今使っているスマホではなく、タブレットでないといけない理由を伝えていくべきなのだ。

 生活提案は商品だけではなく、売り場の工夫でも可能だ。高い炊飯器を買う人は、よいお米を買ってきて、冷蔵庫の野菜室で冷やし、炊いたお米を冷凍室で凍らせて食べる。それなのに、家電量販店における炊飯器と冷蔵庫の売り場は別々でいいのだろうか。

 たとえば、家電以外の小売店に目を移すと、家具や雑貨を扱うFrancfrancや無印良品は、生活提案のイメージが似た製品が1つのフロアでディスプレイされている。「これらの店舗に行った消費者は全商品の5%程度を目にしているのに対して、家電量販店では1%程度しか見ていない」(川添編集長)。ビックカメラとユニクロがビックロを展開するように、「生活提案」という切り口から、消費者にもっと色々な家電を見てもらう工夫をするべきだろう。

 さらに、米国と違って日本は1つの家電量販店が全ての家電を網羅して売っている。それは一見、消費者にとって便利に見えるが、あまりにも総花的で、逆に各々の製品の訴求力を弱めているきらいもある。

 家電市場全体における家電量販店の販売シェアは、かなり高い。製販が手を組み、マーケティングに基づいたプロモーションやチャネルづくりをしていかなければ、今の店頭は楽しく、魅力的なものにならないだろう。

一旦マインドリセットが必要に
「IGZO」に続く救世主は出るか?

 家電各社にとって、これまで日本という市場は恵まれ過ぎていたとも言える。テレビの画質にここまでこだわるのは、日本人くらいだ。そのため、「付加価値さえ付ければ製品が売れる」という錯覚に、多くの関係者は囚われてきたのではないか。

 新興国をはじめ、生活スタイルも生活水準も異なるグローバル市場を相手にするには、一旦マインドリセットを行ない、「本質的な機能」と「生活提案」を重視した戦略へと回帰する必要がありそうだ。

 目下、「IGZO」の生産は安定軌道に乗っていないという報道もある。しかし、この新技術がシャープの家電事業の将来を少なからず左右するインパクトになることは、間違いないだろう。家電各社は、「IGZO液晶搭載スマホ」に続く技術・製品を生み出し、奇跡の復活を遂げることができるだろうか。


05. 2013年1月25日 01:14:10 : xEBOc6ttRg
三度・税金を払わないIT企業
あとで読む
三国大洋 2013年01月09日 14時16分

クラウドの種類は一つではない!賢いIT担当者は、「ハイブリッド」を選ぶ
導入事例、製品情報、調査・レポートなど、ホワイトペーパー多数掲載


「ハイパー節税」問題を担当する米議会の委員会が間もなく終わろうとしている
 アップルやグーグルなどの米多国籍企業による「ハイパー節税」の話については、この連載でも過去に何度か取り上げてきた。

税金を払わないIT企業
続・税金を払わないIT企業
ハイパー節税策の先駆者 アップル
アップルの過剰な節税を嘆く地元民

 New York Times(NYT)が年明け、この問題を担当する米上院小委員会の調査がまもなく終了しそうだという話を報じた。また、この話題を取り上げたWIREDの記事が米国時間1月7日に掲載されてもいる。

 これらの話のなかで目を惹くのは、この調査でもっとも重点的に調べられたのがアップルの節税策の実態だったという点だ。ただし、「アップルに焦点……」という部分は、事情を直接知る複数の関係者の話とあるだけで、同小委員会の委員長を務めるカール・レビン議員(ミシガン州選出の民主党議員)などがどこかの企業を名指しで批判したというわけではない。

 一方、事実として挙げられているのは、アップルに加えて、グーグル、マイクロソフト、ヒューレット・パッカード(HP)などもそれぞれ調査されたという点。また、9月に開かれた聴聞会には、マイクロソフトやHPの関係者が呼ばれて証言していたという点については、「レビン上院議員が両社(の税金逃れ)を厳しく批判していた」という記述が見られる。さらに、同議員がこの聴聞会の場でアップルの繰延法人税債務に関し、「2009年〜2011年の3年間で354億ドル超にのぼった」と発言したという記述もある。

 この件に関するNYTからの問い合わせに対し、アップルは「多額の法人税(地方税、州税、連邦)を払っている」とする声明を発表。具体的な例として、2012会計年度(同年9月末締め)に納めた連邦法人税が60億ドルに上り、「この額は米連邦政府に支払われた法人税の全体の2.5%(40分の1)に相当する」と主張したという(なお2011年度に納めた法人税は33億ドル)。

 これだけの額を一社で負担しているとなると、普通なら「まったくたいしたもの」となりそうだ。しかし、少なくとも今のアップルが超金満企業であることは周知の通り。さらに報道のタイミングも最悪で、「財政の崖」回避に向けたオバマ政権と共和党側の話し合いがもつれにもつれ、妥協案で合意に達したのが大晦日の夜9時前後、あと2〜3時間で時間切れというギリギリのタイミングという背景もあり、NYTはここぞとばかりに「ダブル・アイリッシュにダッチ・サンドウィッチを組み合わせて……」などと書き立てている印象もある。

 うがった見方をすると、アップルが重点的に調査されたという記述は、NYTの「手前味噌」という感じがしなくもない。NYTはこの問題を昨年前半に詳しく報じていたし、この記事の書き手が例のチャールズ・ドゥヒッグであることもそう感じさせるゆえんだ。ドゥヒッグはNYTが昨年一年間にわたって断続的に続けた「iEconomy」シリーズの口火を切った書き手だからだ。また、Googleで検索してみても、一時情報を伝えた記事はNYTのものしか見つからなかったので、あるいは小委員会関係者がNYTになんらかの意図でリークした可能性も思わずにはいられない。

 さて、本題の話を進めよう。

「アップルの税負担、最大280億ドル以上に」とWIRED

レビン委員長は9月の聴聞会の際、「一部の米国企業のハイパー節税策が米政府の財政赤字の大きな要因になっている」「この税金逃れのツケが、ふつうの米国民に負担増という形でまわされている」との見方を口にした、という点が興味深い。

 同小委員会では、調査終了後に結果を踏まえて「多岐にわたるレコメンデーション」をまとめる、といった記述もある。

 大晦日にまとまった財政再建に向けた妥協案は「一時しのぎ」「2カ月ほどの時間稼ぎ」という見方が有力で、税制見直しと歳出削減をめぐる議論がしばらくは続きそうなこと(オバマ政権としては連邦政府の債務額上限の引き上げを3月上旬までに認めさせる必要がある)、さらに法人税制の大幅な見直しが、企業にとっても、政府にとっても、他のステークホルダーにとっても数年来の課題となっていることなども考え合わせると、ごく限られた残り時間のなかで――しかもその間に1月21日の大統領就任式、その後の議会での年頭教書演説など、重要イベントが目白押し――、この小委員会がまとめる報告の内容が比較的早い時期に大きな注目を集める可能性も考えられる。あるいは反対に、あまりの重要事項であるため、法人税見直しをめぐる議論は債務額上限をめぐる交渉の片が付いた後で……という可能性もまた充分にありそうだ。

 WIREDの記事には「アップルの税負担が最大で280億ドル以上にのぼる可能性も」といった見出しが躍っている。この金額は2012年9月末時点でアップルの国外での繰延法人税債務(米国外の利益に対するもの)があわせて285億ドルに上るという点を踏まえ、「これをもし全額収めることになったら……」と仮定した場合のものだから、一種の「釣り見出し」といも言えるだろう。

 こちらの記事には目を惹く数字がいくつか含まれている。曰く、

「2012年度末の現金残高1210億ドル、そのうち約7割にあたる826億ドルが米国外(の子会社)に」
「同年度に米国外で収めた税金は利益の1.9%」
「今年夏からはじめた株式配当金の支払いに、今後3年間で450億ドルを予定」
「アップルやグーグル、マイクロソフトらの利害を代表するロビー団体“WIN America”には160人以上のロビイストが在籍」

 ただし、この記事でいちばん興味深いのは、これらの企業に対する風向きの変化、あるいは風当たりの強まりだろう。

オバマにハンマーで叩かれるかもしれない

 WIREDは、財務省にエコノミストとして務めた経験もあるマーティン・サリバンなる人物(現在は「Tax Analysts」というニュースレターを発行)のコメントとして、「国外に利益を溜め込んできた企業各社は、また(2004年の時のような)タックスホリデーがあると期待していたが、(今や)それと正反対の結果になる可能性もある――オバマにハンマーで叩かれるかもしれない」という見方を紹介している。

 さらに、ロバート・ウィレンズなる法律家(法人税が専門)の次のような見方も出ている。「国外に留め置いてある利益を効率的なやり方(=かなり安い税率)で米国内に持ち込む方法がないとなれば、これらの企業が利益をそのまま米国外に置いたままにしようとするのはほぼ間違いない」「800億ドルもの資金を海外に寝かしてある企業が、その金を米国内に持ち込んだら、米国で支払う税金の額は285億ドルにもなる」

 むろん、こうしたシナリオが現実になると決まったわけではない。もっと実現可能性の高そうな別のシナリオ、たとえば「海外の企業買収やその他の資産獲得(設備投資なども含まれるのだろう)を一気に加速させる」とか、「また新たな節税方法を見つけ出す」といった展開も挙げられている。ただ、「アップルが今よりももっと社会的な意識の高い企業になりたいと考え、自社の評判に傷がつくのを懸念して285億ドルの税金をそっくり納めるという可能性もなくはない」とする機関投資家関係者(グリーンクレスト・キャピタルのチーフエコノミスト、マックス・ウォルフなる人物)の見方が存在すること自体がちょっとした驚きにも感じられてしまう。というのも、お金の使い方が下手な政府への不信感を抱くティーパーティのような集団、あるいは「自分たちの分け前はどうなる!?」という投資家筋からの反応や批判の声などがすぐにも想像されるからだ。

 これからどんな展開になるのか、具体的な道筋はまだはっきりとしていない印象。それでも、米国を代表するグローバル企業となったアップル、その舵取りを任された最高経営責任者(CEO)のティム・クックにとって、大きな決断を迫られる時が近づいてきている、そのことはほぼ間違いない、という印象が強く伝わってくる。

(敬称略)

Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページ、Twitter、RSS、Newsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。

« 1 2 3
年間3万円リリース,イベント,キャンペーン配信は企業情報センター
関連企業: Apple , Apple Online Store , アップルジャパン , Google , グーグル , 日本マイクロソフト , Microsoft , 日本ヒューレット・パッカード , Hewlett-Packard
関連記事

続・税金を払わないIT企業
タックスホリデーが悪例になった3つの理由
アップルの過剰な節税を嘆く地元民
ハイパー節税策の先駆者 アップル
税金を払わないIT企業
「三国大洋のスクラップブック」 バックナンバー

デルのLBOにマイクロソフトが手を貸す「もう一つの理由」
HPに再び波乱の予兆--分社化めぐる議論が再燃か
「アメリカでいちばん意地悪な会社」ディッシュ・ネットワーク
http://japan.zdnet.com/cio/sp_12mikunitaiyoh/35026672/3/


06. 2013年1月29日 00:55:00 : xEBOc6ttRg


「スマートフォンの時代は終わる」

サイバーアイ・エンタテインメント社長兼CEO、久夛良木 健氏に聞く

2013年1月29日(火)  白石 武志

連載2回目に登場する賢者はソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の家庭用ゲーム機「プレイステーション」の生みの親で、現在は自ら設立したサイバーアイ・エンタテインメントで次世代技術の開発に取り組む久夛良木健氏。クラウドコンピューティングが加速することで、ネット社会の主役はスマートフォンやタブレット端末ではなくなっていくと予言した。不振を極めている日本の家電メーカーが復活するカギも、そこにある。

プレイステーションの開発において、インターネットはどのように意識されていたのでしょうか。

SCEが初代のプレイステーションを発売したのが1994年。プロジェクトの段階から数えるともう20年以上が経ちますが、私はプレステの開発を始めた当初から、どこかの時点でプレステをインターネットに“溶かしたい”という思いを持っていました。

プレステをネットに“溶かす”というのは、ゲームソフトの情報をクライアント(端末)側ではなく、通信回線でつながったネット側で処理するという意味です。今で言う、クラウドコンピューティングに近い考え方ですが、当時はネットに常時接続するサービスがなかったため、構想を実現するにはあまりに早すぎました。


写真:丸毛透
その後、「プレイステーション2」を発売した2000年に、NTTドコモの携帯電話向けネット接続サービス「iモード」の普及が始まり、無線を使っていつでもネットに接続できる通信環境が整いました。私はプレステ2の次の段階では、なんとかプレステをネットに溶かしたいと考えていましたが、残念ながら、「プレイステーション3」は、今もクライアント側で情報を処理しています。ゲーム機の世界はなんて進化が遅いのかと不満に感じることもあります。

現在では米アップルのスマートフォン「iPhone」など、新たなネット端末が登場し、様々なクラウドのサービスが普及し始めました。10年前にはできなかったサービスが、これからの10年では十分に実現可能になっています。いよいよ、すべてのゲーム機がネットに溶け始める時期が到来したと確信しています。

今のネットにはリアルタイム性がない

ネットの世界では今後、どのような変化が起こると思いますか。

 今のネットに欠けているのは、時間の概念です。そもそもネットを記述するプログラムには、更新日時を記録する「タイムスタンプ」の機能がありません。ネット上に、ありとあらゆる情報が蓄積されるようになったにもかかわらず、いまだにグーグルで検索した結果を時間軸で並べ替えることができないのは不自然です。今後、時間という概念を取り込むために、ネットを作り変えようとする動きが加速するはずです。

 同様に、今のネットにはリアルタイム性が不足しています。「ツイッター」などのサービスは興味深いものですが、まだまだリアルタイム性は不十分。今後、金融や医療、セキュリティー、ゲームなどの分野では、様々なデータベースを基にリアルタイムに情報を処理するニーズが高まるはずです。

特に株取引など1000分の1秒単位の遅れも許されない情報処理は、ネット上の彼方にあるクラウドのコンピューター群で対応するのは不可能です。データベースと演算システムが密接に結合した、専用システムが求められるようになると考えています。

スマホは理想のネット端末ではない

すべてをネットの向こう側で処理するクラウドには限界がある、ということでしょうか。

 米グーグルや米フェイスブックなどのネットサービス会社が互いの技術仕様を公開し、さまざまなコンピューター群が有機的につながっているのが、今のネットの姿です。こうした時代を言い当てるうえで、「雲」の中に各種のサービスが溶け込んだ状態を表現した「クラウドコンピューティング」という言葉はとても優れた言い回しだと思います。


写真:丸毛透
 ただし、ネットの世界でいつまでも曇り空が続くはずはありません。いつか晴れ間が覗いた時には、金融や医療などの各分野で、それぞれの目的に応じて個性的に進化を遂げた専用のコンピューター群が姿を現すはずです。


クラウドの先にあるネットの世界は、どのようなものになるのでしょうか。

 極論すれば、今のネットサービスの多くは、映画や音楽など、既に完成したものをデジタル化してどこかの場所に記録しておき、利用者の要望に応じてコンピューターを使ってネットで配信しているにすぎません。米アップルが手がける「iTunes」も、基本的にはこうした考え方に基づいています。これは20世紀的な発想だと思います。

 消費者がネットに求めているのは、スタンリー・キューブリック監督のSF映画「2001年宇宙の旅」に登場する人工知能「HAL9000」のように、1つの問いに対して答えを1つだけ返してくるような能力です。そのためにはコンピューター側で情報を処理する機能を一段と高める必要があります。これからのネットは単なる配信用としてではなく、膨大な情報を処理できる超巨大コンピューターのようなイメージを目指すのではないでしょうか。

スマホは理想のネット端末ではない

ネット端末はどんな姿になりますか。

 スマホブームは一時的なものだと思います。本来、ネット端末は消費者に持っていることを意識させてはいけないのに、今のスマホはCPU(中央演算処理置)がどんどん高機能化して、1日で電池を使い切ってしまうようになっています。これは端末メーカーの発想が古いままで、クラウド側で十分な情報を処理できないことに原因があるのではないでしょうか。

 一般には、スマホの高機能化がこれからも続くように思われているかもしれませんが、これは端末メーカーにとって都合のいい進化、願望に過ぎません。そもそも、数100グラムもの重さがあって、すぐに電池を消耗する現在のスマホやタブレットを何台も持ち歩くのはわずらわしくはありせんか。私は理想のネット端末とは言えないと思います。

 今後10年の間に、クラウド側であらゆる情報を処理する環境が整えば、端末が豊富な機能を持つ「リッチクライアント」の時代から、端末には限られた機能しか持たせない「シンクライアント」の時代へ大転換が起きると予想しています。スマホはクレジットカードのような薄さに、タブレット端末は下敷きぐらいの薄さになるのが理想的です。そうなれば、消費者は様々なサイズの端末をいくつも持ち歩き、状況に応じて使い分けるようになるはずです。

ボックスからネットワークへ

そうなれば、ネット端末はコモディティー化を免れられなくなるのでしょうか。

 今後、「ボックス(箱モノ)」よりも「ネットワーク」が力を持つことは明らかです。コンピューター産業における重要な経験則である「ムーアの法則」に従うとするならば、トランジスターのコストは毎年37%ずつしか低減しません。テレビに使うコンデンサーなどに比べればペースは早いものの、その程度です。

一方、通信規格の高速化などによって、ネットワークのコストは毎年60%ずつ低減しています。いくらスマホメーカーが努力して端末側の情報処理能力を高めたとしても、それを上回るペースでネットワークのコストが下がっていくのです。

 ネットの世界で成長しようとするならば、スマホなどの端末側ではなく、クラウド側で情報を処理し、ネットワークコストの低減による恩恵を最大限に受けられるようなビジネスモデルを考えるべきだと思います。テレビやスマホ事業の不振が伝えられる日本の家電メーカーの再生のカギも、ここにあるのではないでしょうか。


白石 武志(しらいし・たけし)

日経ビジネス記者。


賢者が描く10年後のインターネット

農業革命、工業革命、そして情報革命――。
20世紀の終わりに発生した第3の革命はまだ始まったばかりだ。
しかし、20年前と比べれば生活の変わりように気づくはず。
圧倒的利便性によって、インターネットは急速にライフラインになった。
もはやこの便利な生活を放棄して後戻りすることはできない。
2008年に1兆だったページの数は現在、30兆。
ネット利用者数もまた現在の23億人からさらに膨れ上がっていく。
あらゆる情報がネット上に集約され、人が互いにつながる世界、世界全人口の70億人がネット化する未来とは。
「インターネットの父」や「AI(人工知能)研究の第一人者」と呼ばれる賢者の言葉から、10年先のネットの世界を展望する。


07. 2013年1月29日 01:40:37 : xEBOc6ttRg
JBpress>海外>IT [IT]
10〜12月期の世界のスマホ市場、勢力図にまた異変
サムスンは記録更新、アップルも堅調、中国勢が突如台頭
2013年01月29日(Tue) 小久保 重信
 市場調査会社の米IDCが先週までにまとめた最新の調査(速報値)で、世界のスマートフォン市場にまた大きな動きがあったことが分かった。

 これによると、昨年1年間の携帯電話の世界出荷台数は17億3590万台で、前年から1.2%の伸びにとどまった。しかしスマートフォンだけで見ると、同44.1%増の7億1260万台と急増しており、スマートフォンの携帯電話全体に占める割合は41%にまで高まった。

 これを直近の四半期(10〜12月期)で見ると、45.5%とさらに高まり、従来型携帯電話からスマートフォンへの移行が急速に進んでいることが分かる。

アップル、サムスンとの差を縮める


昨年10〜12月期にはアップルがサムスンとの差を縮めた〔AFPBB News〕

 スマートフォン市場を大きく牽引しているのは依然として韓国サムスン電子だ。

 昨年10〜12月期の出荷台数をメーカー別で見ると、同社が6370万台と最も多く、この台数は四半期ベースの業界最高記録。また同社の昨年1年間の出荷台数は2億1580万台で、こちらも過去最高を更新している。

 サムスンの出荷台数の前年比伸び率は、四半期ベースで76%、年間ベースで129.1%と驚異的だ。米グーグルのモバイル基本ソフト(OS)搭載の「ギャラクシー(Galaxy)」シリーズの豊富な品揃えや、低・中価格端末の需要が高い水準を維持していることが寄与したとIDCは分析している。

 そしてサムスンに次いで出荷台数が多かったのは米アップル。アップルは10〜12月期に4780万台、昨年1年間で1億3590万台を出荷しており、その前年比伸び率は四半期ベースで29.2%、年間ベースで46.9%だ。

 昨年7〜9月期に15%だった同社のスマートフォン市場シェアは、10〜12月期に21.8%へと拡大した。これに対しサムスンのシェアは31.3%から29%に低下。2社のシェアは7〜9月期に2倍以上の差が開いていたが、年末商戦でアイフォーン(iPhone)が堅調に推移し、アップルはその差を縮めることができた。

 IDCによると、アイフォーンは中国本土、台湾、香港を合わせた中華圏で出荷台数が倍増したほか、米大手通信事業者1社だけでも620万台の新規契約があった。

 ただし、アイフォーンの伸びを支えたのは「アイフォーン4」など値引き販売している旧端末だ。これに先立ち同社は10〜12月期の利益率が低下したと報告していたが、やはりその背景にはアイフォーンシリーズにおける販売比率の変化があったようだ。

中国ファーウェイが3位に浮上

 10〜12月期のスマートフォン出荷台数は、サムスン、アップルに続き、ファーウェイ(華為技術)、ソニーモバイルコミュニケーションズ、中国ZTE(中興通訊)がトップ5に入った。

 このうち、ファーウェイは1080万台で、1年前からの伸び率は89.5%と上位5社の中で最も高い。

 IDCによると、同社はこれまで、常に6位以下のメーカーだったが、ここに来て突如3位に浮上した。その理由は、従来の廉価版スマートフォンに加え、高価格端末も売れだしたこと。同社は昨年、世界最薄の高機能モデルを市場投入したほか、今年に入って6.1型端末を発表するなど、技術革新が見られるとIDCは評価している。

 このほかソニーの出荷台数は前年同期比で55.6%増、ZTEは同48.4%増だった。ソニーはモバイルエンターテインメント戦略と高機能端末の品揃えが奏功した。ZTEは同社が強みを持つ中国市場に加え、先進国市場でも成長が見られたという。

ノキアとRIM、トップ5から消える 

 さて、こうして見ると、かつてスマートフォン市場で上位に入っていたメーカーが消えていることに気づく。フィンランドのノキアとカナダRIM(リサーチ・イン・モーション)だ。

 ノキアは、米マイクロソフトの「ウィンドウズフォン」搭載端末に力を入れているが、昨年7〜9月期に2004年以来初めてトップ5圏外となり、この10〜12月も巻き返せなかった。一方RIMは7〜9月期に770万台の出荷台数で3位に浮上したが、この時、同社の後を今回5位になったZTEが750万台という僅差で追っていた。


08. 2013年1月31日 11:41:03 : xEBOc6ttRg
コラム:アップル叩きは米国の自滅
2013年 01月 30日 09:50 JST 記事を印刷する | ブックマーク | 1ページに表示 [-] 文字サイズ [+]


1 of 1[Full Size]
コラム
コラム:日本が円安相場を正当化して良い理由=唐鎌大輔氏
コラム:日本発「通貨戦争」リスクを語る欧州の本音=嶋津洋樹氏
コラム:米金融市場、年明けの楽観は行き過ぎ
コラム:キャメロン英首相が描く「欧州連合」とは
By Zachary Karabell

米アップルが先に発表した第1・四半期(2012年10─12月)決算に対する反響は、そのほとんどすべてが否定的なものだった。ほぼ全ての数字が堅調だったことを考えれば奇妙なことだが、証券アナリストとはそういうものだと考えれば、必ずしも驚きではない。

しかし、アップルの栄光と一時的ではあるが転落の物語の背景にあるのは、もっと厄介な私たちの文化的側面だ。私たちは、いとも気まぐれにヒーローを抹殺してしまう。

アップルの株価は、昨年9月に700ドルを突破して過去最高値を付けた後は急降下していたが、今回の決算を受けてさらに10%以上も下落した。過去4カ月で同社の株式時価総額は約2350億ドルが吹き飛んだ格好。S&P500種採用企業のうち、株式時価総額がこの数字を上回るのは3社しかない。また、2350億ドルという数字は、世界140カ国以上の国内総生産(GDP)より大きい。

こうした株価の下落は、金融・ITメディアの極めて悲観的な分析に歩調を合わせたものだ。CNBCのジム・クレイマー氏は、故スティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)の後を引き継いだティム・クック現CEO率いる現在の経営陣が、人の心をつかんで離さないようなビジョンを打ち出せていないと批判した。

さらに、今のアップルには製品開発パイプラインもビジョンもなく、成長もほとんどないとの声さえ聞こえてくる。著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏は「破綻した企業」と一蹴する。

しかし、アップルはさまざまな点で重要な意味を持つ会社だ。米国のイノベーションを代表する企業であるだけでなく、消費者にとって同社の製品は自己表現の一部であり、単なるハードではない。過去数年、同社の株価はそれを雄弁に物語ってきた。

では、一体何が起きたのだろうか。アップル株の急落で最も驚かされることは、決算の内容が実際には素晴らしい内容であることだ。アップルは成長が止まったどころか、まだ急成長している。2012年10─12月の売上高は545億ドルで、前年同期比では18%増加した。「iPhone(アイフォーン)」の販売台数は4700万台と前年の3700万台から1000万台増え、「iPad(アイパッド)」も前年の1500万台から2300万台に販売台数を伸ばした。

確かに、純利益はほぼ横ばいであり、アナリストは懸念材料として利益率の低下を指摘する。ただ、だからと言って、ブラックベリーやノキアにとって致命的となった市場シェアの縮小を意味する訳ではない。アップルは、最大のライバルとなった韓国サムスン電子と競争しながら、これまでスマホの世界市場でシェアを伸ばしてきた。

また、低い利益率などの問題はアップルに限ったことではなく、アマゾンやリンクトインのような企業にしばしば認められる言い分でもある。

アナリストが奇妙なやり方で企業を評価することはこれまでもあったが、今回のアップルは特にそうだと言える。アップルが現代の偉大な企業だと称賛され、ベストセラーとなった伝記本でジョブズ氏が稀代の天才ともてはやされたのは、つい昨日のことではなかったか。

アップルの最近の叩かれぶりは驚くほどだが、それ以前の栄光もまた驚くほどだった。1990年代後半には死んだも同然として忘れ去られていたが、2000年半ばまでには卓越した革新的IT企業としてよみがえったのだ。

アップルは今、過去の企業とみられつつある。サプライチェーンの合理化を得意とするCEOが率いる同社は、中国メーカーが作るような携帯電話や、世界のどの企業が作っても同じようなタブレット端末しか作れず、もはや大きな夢など存在しないと。

アップルが社会の変革者だというのは迷信だと言うのは正しいかもしれない。ヒーローを抹殺するのも今の時代に限ったことではないだろう。それでも、持ち上げて落とすそのスピードは息を飲むほどだ。それは文化的な創造的破壊に等しい。創造的要素がどこにあるかを見極めるのは、経済的な創造的破壊に比べて困難なことではあるのだが。

競争が激しく、移り気で容赦ない業界にアップルが身を置いているというのは事実だ。電話やタブレットは生活必需品となっていると同時に、ファッションにもなっている。ある時はクールでも、次の瞬間には飽きられる。アップルでさえ、それは例外ではない。

もしかしたら、市場とメディアは、避けては通れない過程を単に早めているにすぎないのかもしれない。頂点に立っていられるのは、騒ぎや関心が他に移るほんの一時のこと。その意味において今のアップルは、大企業ではあるものの、人気の入れ替わりが激しい子役のようだと言えるかもしれない。

しかし、アップルたたきに込められた文化的メッセージは、消えていく若手女優に対するそれより苛烈なものだ。

騒ぎの中、アップルは業績を伸ばし続け、顧客のニーズと要望に応え続けている。差し当たり、アップルの死亡記事を書いているのは主にメディアと証券会社のアナリストであって、顧客ではない。

メッセージは正しいと証明されるかもしれないし、そうではないかもしれない。どちらにせよ、おとしめることの容易さに比べ、価値ある何かを創造することがいかに困難であるかという視点が完全に欠如していることで、前向きなメッセージはおろか、私たちの「良き本性」も現れることはない。

アップルには常に頂点からの転落の可能性があった。ただそれは、自らの失敗からではなく、他の企業の成功によってだ。アップルの物語は、近年の米国にみられる物語を象徴している。つまり、結末を見るのを急ぐ傾向だ。

アップルの成功は、米国の輝かしい一面を示している。他方、同社に対する最近の反応は、われわれが自滅を得意としていることも物語っている。

(25日 ロイター)

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

© Thomson Reuters 2013 All rights reserved.

関連ニュース

米エクソンが時価総額でアップル抜く、約1年ぶり首位奪還 2013年1月26日
米国株式市場・序盤=下落、アップルは10.5%安 2013年1月25日
アップル株下げ幅広げ12%安、S&Pは一時1500の大台突破 2013年1月25日
アップル下げ幅広げ12%安、S&Pは一時1500の大台突破=米株式市場 2013年1月25日


09. 2013年1月31日 17:41:47 : xEBOc6ttRg
コラム:スマホ黄金時代の「終わりの始まり」
2013年 01月 31日 15:04 JST 記事を印刷する | ブックマーク | 1ページに表示 [-] 文字サイズ [+]


1 of 1[Full Size]
コラム
コラム:折悪しく金融環境が引き締まるユーロ圏
コラム:第4四半期の米成長率、弱い数字の裏には明るい材料
コラム:日本が円安相場を正当化して良い理由=唐鎌大輔氏
コラム:アップル叩きは米国の自滅
By Robert Cyran

[ニューヨーク 28日 ロイター] 米アップル(AAPL.O: 株価, 企業情報, レポート)も韓国サムスン電子(005930.KS: 株価, 企業情報, レポート)も、いつまでもスマートフォンから巨額の利益を計上できると期待しない方がいい。

昨年のスマホ販売台数は7億台に達し、前年比43%増と信じがたいほどの伸びを示した。調査会社ストラテジー・アナリティクスによると、今では携帯電話の5台に2台以上がスマホとなっている。

このペースでいけば、いずれ成長が鈍化するのは自明だ。単純な計算でも、スマホの台数は2年以内に携帯電話全体より多くなってしまう。そしてITの歴史は、端末の価格が下がり続けていくであろうことを教えてくれる。メーカーの利益率にとっては「有毒な組み合わせ」だ。

パソコン(PC)市場がどういった歴史をたどってきたか振り返ってみよう。1990年代半ばから米国の家庭に急速に普及したPCは、1998年末までには全世帯の半数が所有するようになった。そこから普及のペースは鈍り、やがて「徐行スピード」にまで減速した。

不幸なことに、PCの価格は下降線を描きを続け、政府統計によると、1998年以降で90%以上も下がった。半導体などの部品がコモディティー化したことが背景にある。

PCメーカーは新たな客層を開拓するのではなく、値下げ競争でライバルメーカーから顧客を奪う道を選んだが、それが自らを傷つける結果となった。

米デル(DELL.O: 株価, 企業情報, レポート)の利益率は1998年と1999年には8%に達していたが、その後は右肩下がりとなり、過去5年は平均4%前後となっている。1998年以降、同社の株式時価総額は4分の3ほど減少した。

スマホメーカーにも、こうした兆候は出始めている。アップルが先に発表した第1・四半期(2012年10─12月)決算では、純利益はほぼ横ばいとなった。粗利益率は前年同期の44.7%から38.6%に低下し、その原因の一端は最新のiPhone5が背負わされている。

サムスン電子は先週、2013年の世界の携帯端末市場の成長率が1桁台半ばになるとし、その中でもスマートフォン市場の成長率が鈍化するとの見通しを示した。

ただ、パソコンの歴史がすべて繰り返されるとは限らない。1998年当時のデルの株価収益率(PER)は70倍を超えていた。投資家は利益率の低下を見越しておらず、いざ低下が始まると売りに動いた。その後、デル株のPERは低下し、2013年の予想利益をベースにしたPERは8倍以下となっている。

アップルの予想PERは現在約9倍。同社が保有する1200億ドルに上る現金資産と全体的な業績を考慮すれば、それはかなり割安と言える。しかし、投資家は今回は、利益率の低下に十分に備えているのだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

© Thomson Reuters 2013 All rights reserved.

関連ニュース

米ブロードコムの今期売上高が前期割れも、スマホ市場に懸念 2013年1月30日
焦点:米アップルの威光に陰り、通信キャリアへの影響力低下も 2013年1月29日
サムスン電子、第4四半期スマホ販売は6300万台=調査会社 2013年1月25日
サムスン電子、第4四半期スマホ販売は6300万台=調査会社 2013年1月25日


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > IT11掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > IT11掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧