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反骨心で開発したPGPを世界に広めた男 〜フィル・ジマーマン氏
現在、ネットでの通信には広く暗号化が使われている。それによって、我々は安全にネットを利用することができるのである。今回は、そんな暗号化技術の1つである「PGP」を開発したフィル・ジマーマン氏(以下敬称略)をキーマンとして紹介しよう。
フィル・ジマーマンは、1954年にアメリカ・ニュージャージー州にて誕生した。幼少時代はフロリダ州で過ごし、1978年にフロリダ・アトランティック大学へ入学した。大学ではコンピュータサイエンスを学んだ。そして当時、多くの若きコンピュータ技術者たちがIT政策を推し進めていた政府に協力していくのに対し、ジマーマンは露骨なほどの反骨心を示すのだった。
その背景には、アメリカの軍備拡大があった。特に冷戦時代の1980年代、レーガン政権の軍備拡大は顕著だったという。ジマーマンは、大学卒業後に自営でコンピュータコンサルタントをはじめたのだが、その業務と平行して反核運動にものめり込むようになった。あるときは核実験場でのデモに加わり、逮捕されたこともあるという。
フィル・ジマーマン氏
1954年アメリカ・ニュージャージー州にて誕生。1978年フロリダ・アトランティック大学へ進学。1991年PGPの開発に成功。1993年FBIによって法廷に召喚されるも、のちに訴えは取り下げられる。1996年PGP社を設立。2010年年PGP Corporation社がシマンテックに買収される。
ITエンジニア以外に、そんな“活動家”としての横顔も持つジマーマンだったが、1980年代になって、友人とコンピュータソフト開発会社を立ち上げた。そこで、彼は暗号ソフトの開発に取り組むこととなる。当時は冷戦のさなかで、政府はコンピュータへの暗号化技術を積極的に導入しようとしていた。しかし反骨の男・ジマーマンは、政府のためではなく、一般ユーザが使える暗号化技術の開発を模索しはじめた。暗号化技術を軍事にだけに使わせるわけにはいかない、そういう強い意志があったのだろう。
ジマーマンはRSA暗号を元にして、オリジナルの暗号化技術の開発に取り組もうとした。しかしRSA暗号方式の特許はMIT(マサチューセッツ工科大学)が所有していて、その技術はRSA Data Security社に独占的に提供されていて、開発はままならなかったのだという。
ジマーマンはMITやRSA Data Security社とライセンス供与の交渉を重ね、1991年にオリジナルの暗号化技術である「PGP(Pretty Good Privacy)」を開発。主に電子メールの暗号化に使われる暗号化技術だ。開発が完了すると、PGPはインターネット上にて無償公開されることとなった。公開暗号化技方式を採用したPGPは、だれでも自由に暗号化技術を利用でき、多くの人から支持されるに至った。
ところが同年、アメリカ政府は一般ユーザが暗号化技術を使用するのを禁じる法案を提出。また、暗号化技術を“武器”として認証したため、その国外流出は武器輸出規制法に引っかかることになってしまった。しかしジマーマンも負けてはいない。PGPのソースコードを書籍として出版した。書籍の輸出は武器に輸出には該当しないのだ。それを入手した海外の有志が「国際版」のPGPを開発することとなった。しかしその結果、ジマーマンはアメリカ政府からマークされる立場となってしまったのだ。
FBIの捜査対象となったジマーマンは、1993年に裁判所に召喚された。しかしその頃になると、ジマーマンは暗号化技術の有名人となっていたし、世間が暗号化に寄せる期待も大きくなっていた。ちょうどその頃、政府はすべてのコンピュータに暗号化チップを埋め込む方策をとろうとしていたが、その暗号化されたデータはいつでも政府が解読できるという事実が明るみに出ると、プライバシー保護の観点から反対が起こって計画は断念された。そのような状況の中、ジマーマンがPGPを武器として海外輸出したという罪は追求されることがなく、政府は1996年に訴えを取り下げることとなったのだった。
訴訟問題が解決した1996年、ジマーマンはPGP社を設立。翌年同社はNetwork Associates社へ売却され、ジマーマンは同社のシニアフェローに就任した。さらにPGPは、Network Associates社からPGP Corporation社へと譲渡され、2010年にはシマンテックに売却されている。彼は同社の暗号化部門の特別顧問に就任しているほか、多くの会社へ暗号化技術のコンサルティングを行なっている。なお、1999年にPGPは一部の国を除いて輸出が認められ、英語版、ドイツ語版、日本語版が公開されている。
ジマーマンがPGPを開発したキッカケは、軍事力を強化する政府への反骨心だった。それが結果としていまの暗号化技術を支え、世界中のネット利用者や国家の安全を支えている1つの安心材料になっているのは、なんだか不思議な感じもする。
http://www.keyman.or.jp/at/30005204/
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