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【第12回】 2012年10月22日 高野秀敏 [株式会社キープレイヤーズ代表取締役]
学歴・経歴詐称は一目瞭然、悪い評判も明るみに
SNS転職に潜むデメリットと落とし穴
ソーシャルメディアが盛んになり、「転職のきっかけがSNS」という方が増えてきました。代表的なSNSといえばFacebookですが、“転職ツール”という意味で代表的なのはLinkedinでしょう。
Linkedinは昨年、日本語化もされました。外資系企業へ転職するために最初にやるべきことは、Linkedinに英語で登録をすること。すると、ヘッドハンターより英語で連絡がきます。ときには、企業から直接スカウトの連絡が入ることもあります。最近は、企業がコーポレートリクルーターという仕組みをつくり、企業内でヘッドハンターを雇うというケースが増えています。「War for talent」。優秀な人材を獲得することこそが、企業が競争に勝つために必要なこと。詳細にプロフィールを書いておくことで、よく声がかかるようになります。
Facebookでも学歴や社名をオープンしている方も多く、Linkedinと同様にスカウトをされるケースも増えてきました。ツイッターもしかりです。ツイッターを活用したリクルーティングは、主にエンジニアの方を対象に行われています。これだけソーシャルメディアが全盛期の時代になると、ソーシャルメディア経由で転職したというケースが増えるわけですが、良いことばかりではありません。では、ソーシャルメディアを活用した転職には、どんなデメリットがあるのでしょうか。
レファレンスを取られるのは外資系だけじゃない!
それとなく評判を調べる日本企業も
SNSをやっていると、誰と誰が繋がっているのか?というソーシャルグラフが見えてきます。面接を受けにきた候補者の方をフルネームで検索しますと、誰と誰が繋がっているのかは一目瞭然です。そこからレファレンス(人物調査)をこっそり取られてしまうことが現実的にはあります。
面接ではその方の全てを把握することができませんので、企業がレファレンスを取ることはなかなか避けられないところもあります。特に幹部採用の場合は、候補の方の許可を取り、レファレンスを取ることもあるでしょう。外資系企業では幹部ではなくとも、全ての方にレファレンスを取る会社も珍しくはありません。
一方で日本企業の場合は、レファレンスを正式にはとっていない会社もかなりあります。しかし、候補の方に言わずとも、それとなく評判を調べたりしている企業は多いものです。その際、「最近はSNSがあるので楽になった」という声を耳にします。SNSの台頭により繋がりが可視化されたからです。
では、実際にレファレンスを取られてしまい、現実との違いから採用がNGになってしまったケースをご紹介しましょう。
学歴コンプレックスから学歴詐称
仕事ができても嘘をつけば採用されない
【実例@】学歴詐称問題
Aさん(37歳)
サービス系企業の管理本部長
某有名大学出身
対人印象がよく、派手さはないものの、誠実な人柄で腰の低いAさん。実績が素晴らしく、即戦力候補です。実はAさん、ちょうどクライアントX社の経営者から、欲しいといわれている経験、年齢、人物像と合致していました。そこで、以前別の案件でスカウトさせていただき、その際はお断りされていたものの、再度アプローチを試みました。すると、今度は興味をもっていただけたため、早速企業との面談をセッティングし、2度の面接と、1度の会食を経て、正式にオファーすることとなりました。
しかし、こちらの企業の社長はSNSをあまりやらない方だったのですが、詳しい方が役員にいらっしゃり、念のためAさんのことを調べることになりました。調べてみると、Aさんは偏差値の高い大学を出てはいましたが、地方大学出身の方でした。そうしたところ、今回オファーをしようとしているAさんと同じ大学、同じ学部、だいたい同じと思われる年次の方とたまたま知り合いだったことを思い出しました。
そこで、転職相談を受けているとは一切言わず、友人に「大学も学部も年次も一緒のAさんって知っている?」と確認をしてみました。すると、「いたかな?小さい学部だったから、スカウトされるぐらい優秀な方だったらおそらく知っていてもおかしくないはずなんだけど…」との答えが返ってきました。
それを聞き、おかしいなと思った役員は、社長と相談し、候補の方に卒業証明書を提出するように求めました。するとAさんからは、「卒業証明書は必要なものでしょうか?実は申しあげていなかったのですが、中退しておりまして…」との返答が返ってきたのです。「中退」を「卒業」と言う、これだけでも十分な学歴詐称です。X社としては、管理部長候補となる方に詐称があるようであれば、どんなに優秀であっても採用できないということで、本件は流れました。
履歴、経歴をよく見せるということと詐称は、まったく別問題です。当たり前のことですが、履歴書には事実を記載する必要があります。周囲の評判を聞く限り、実力は申し分なかったために、正直もったいない方だなと感じました。叩き上げの方が私自身は好きですが、どうしてもこの方には学歴コンプレックスがあったようです。そして実は、この大学に入学もされていなかったという事実が後に分かりました。そこまで嘘をついていても仕事はできていたわけですから、“仕事ぶり”と“誠実さ”というのは違うものなのだなと感じたケースでした。
パワハラ、暴力で退職、転職活動へ
悪い評判は間違いなくネット上で広がる
次に、社内で起こした問題がSNSなどを通じて広まってしまい、その後の転職活動に大きな支障を与えたケースをご紹介しましょう。
【実例A】退職理由問題
Bさん(36歳)
独立大手IT系企業勤務 プロジェクトマネジャー
PM(プロジェクトマネジャー)の案件は今も多いため、優秀な方には案件が絶えません。そんななかで、ご縁があって、非常に優秀と評判のBさんにリーチすることができました。お会いして話をしていると、非常に聡明な方で、論理的、仕事の成果をきちんと出していることがわかり、社内でもいわゆるS評価を取得し、上位2割以内に入っている方であるようでした。
しかし、退職理由をヒアリングしているときに彼の表情を見たところ、何か本当のことを話していないのではないか?という直感が働きました。本音でお話をしてほしいと頼んではみたものの、本音ですとの返答が。自分のスタンスとしては、胸襟を開いていただける方と長くおつきあいをしていきたいため、退職理由が釈然としない方に転職先をご紹介するのは難しいなと感じ、フェードアウトしていったのでした。そして、Bさんは転職したいとは言っていたものの、おそらく実際には転職しないのではないか?と思っていたのです。
それから半年ぐらい経った頃、Bさんがどうも会社を辞めて、実際に転職活動をしているという情報が耳に入ってきました。しかも、退職理由はパワハラで、飲み会の席とはいえ、メンバーをなぐってしまい、ケガをさせてしまったというのです。どうにも酒癖だけが悪い方で、仕事は間違いなくできる方だったそうなのですが、お酒が入り、深酒をすると暴力的になる特徴があったといいます。
一度こういった情報が明るみにされてしまうと、ソーシャルメディアでウォールに書き込まれることはないとしても、Facebook等で情報が行き交ってしまうのは間違いありません。ネット社会になり情報が加速度的に広がりやすくなっていますので、行動には十分に気をつける必要があるでしょう。
PC版LINEで競合他社への転職活動
現職の社長に発覚し、懲戒免職へ
最後は、SNSを使った転職活動が現職の会社にばれて、懲戒免職にまで追い込まれてしまった事例をご紹介したいと思います。
【実例B】SNSで競合他社へ転職活動
Cさん(40代)
セールスプロモーション関連企業 営業部長
営業力があり、プレイングしながらのマネジメントという意味では、とても優秀なCさん。実力も実績もあるものの、勤める会社は業界縮小の煽りを受けて、売上が伸び悩み、利益も減少という状況にあります。社長との関係もよく、期待されていると感じているものの、あまりのツメの厳しさにやや愛想がつきてきていました。
そんなおり、完全ではないものの部分競合しているZ社から声がかかりました。Cさんとしては、話だけは聞いてみようと、Z社の社長にお会いしました。現職の社長からの当たりが強くなってきたため、ついつい期待をこめて呼んでくれるZ社に興味がでてきたといいます。
Z社との連絡経路として、(PC版の)LINEを使っていたのですが、最近、Cさんの行動が怪しいと社長が気づき始めました。そして、別の社員に指示を出し、離席しているCさんのLINEを立ち上げたところ、転職活動をしているらしいことが発覚してしましました。Cさんが一層、信頼を失ったのはいうまでもありません。会社のPCで、しかも競合的な会社に通じていたということで、懲戒となり、退職に追い込まれることとなりました。
ソーシャルメディアは便利なものですし、FacebookやLinkedinはビジネスパーソンにとっての必須サービスになりつつあります。一方で口コミが伝わりやすい時代といえますので、嘘をつく、悪い仕事をすればすぐに広まってしまいます。ソーシャルメディアの時代だからこそ、ますます個人の中身が大切ということですね。また、TPOをわきまえてソーシャルメディアを使っていくことが大事だといえます。
http://diamond.jp/articles/print/26598
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