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フェイスブックも嘘ばかり
皆さん、ウソを見抜く能力が低下していない?
2012年10月19日(金) 田代 真人
山中伸弥・京都大学教授によるノーベル賞受賞の興奮が冷めやらぬなか、読売新聞の誤報問題が世間を賑わせた。読売新聞が1面トップで報じた、看護師・森口尚史氏が米ハーバード大学の暫定承認を受けて人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床応用を実施したとの記事が誤報だった問題だ。
嘘を見抜く能力の必要性
以前、巨大掲示板で有名な2ちゃんねるの創設者である西村博之氏の「嘘は嘘であると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という言葉を紹介したが、今回は大メディアがまんまと騙されたわけだ。
私が講師をしている大学で、学生たちに新聞記事の信憑性についてアンケートを採ったことがある。学生たちは、毎日、新聞を読んでいるわけではないが、新聞の信頼性は80%から90%だと思っている。つまり、8割くらいが正しい情報で、嘘が2割程度混ざっていると認識しているのだ。ちなみにネットは40%くらい。雑誌が70%くらいだ。
これは非常に正しい認識であろうと思う。昔であれば新聞の記事はほぼ100%正確であり、正しい情報と見なされていた。しかしいまは違う。情報がネットで手軽に入るおかげで、学生たちも逆に疑ってかかるリテラシーがついてきている。
新聞は、基本的に1次情報を書くメディアだ。念のため書いておくと、1次情報とは、ある事象=ニュースを見た本人が伝える情報だ。その本人から聞いて書くことは2次情報となる。テレビやネット、新聞、雑誌で見た読んだ情報を元に伝えた情報もそう。そして2次情報を伝えるのが3次情報……と実際のニュースから遠ざかるにつれて、それは伝言ゲームとなり、どんどん情報の質が劣化していってしまう。
1次情報といっても今回のようにニュースの主体が虚偽の発言をする可能性もある。虚偽の発言を紙面に掲載してしまうと新聞への信頼性が損なわれる。だからこそ、新聞記者などは、新入社員として入ったときに、その情報の“裏”を取る必要性をたたき込まれるわけだ。
今回の誤報は、記者の裏を取る行為が足りず、森口氏の発言を鵜呑みにして記事化した非常に初歩的なミスである。しかも社内チェック体制も杜撰であったことを露呈させた。
今回、森口氏を責める報道もあるが、それはお門違いだ。まるで自分たちが騙された被害者だと言わんばかりに、森口氏の過去の言動を検証している。
しかし責められるべきは読売新聞ほか騙されたメディアだろう。そもそも森口氏の言動のおかしさをプロとして“直感”で見抜き、ハーバード大学などに裏を取れば済んだ話だ。虚言癖をもつものなどどこにでもいる。現に朝日新聞は「最終的に研究データや論文の信頼性は低いと判断し、記事化はしていない」とのこと。日経新聞なども同様だ。読売新聞そのほかが嘘に躍らされたということだ。
これではいよいよ新聞の信憑性が低くなっていく。ほかの新聞社も常日頃から小さな誤報を繰り返している印象もあるが、これだけ目立ってしまうと信頼性の低下に歯止めがかからない。
ツイッターの1次情報と2次情報
ツイッターにリツイートという機能がある。自分がフォローしている人のコメントを自分をフォローしている人たちにも流す機能だ。これには公式リツイートと非公式リツイートがある。公式リツイートとは、文章を改変することができず、コメントも付けられない。ツイートをそのまま自分がツイートした形になる。つまり自分が読んだ新聞を何も言わずそのまま友人に渡すようなものだ。
一方非公式リツイートは、コメントを付けることもできるし、そもそも元の文章を改変することもできる。つまり公式リツイートは発言者の1次情報であるが、非公式リツイートは2次情報以上となり、たとえ手を加えてないとしても信頼性が大きく劣るということになる。伝言ゲーム状態だ。
もちろんもともとの発言が嘘やデマであれば、それはいくら公式リツイートであっても、それら嘘やデマを拡散するだけにほかならない。1次情報だからと言って正しいとは限らない。世の中どこにでも嘘は転がっている。
嘘をついて周りを混乱させる愉快犯もいれば、ウソをつく気もなく単に勘違いや記憶違いなどして発言する場合もある。さすがにメディアで働くプロの記者が勘違いしたまま記事を書くことはないと思うが、ブログやツイッターでは大いにありうる。だからこそ学生のいうようにネットの信憑性が40%となるわけだ。
しかも今回の件のように、平然と嘘をつく人もいれば、なかには虚言癖のある人物もいる。そういう人たちもネットでは自由に発言できる。しかし、虚言癖がある人物は、自分が話していることが嘘だと思っていないので、それこそ嘘発見器に掛けたとしても見抜けないだろう。
恥ずかしい話だが、私もそういう人物に騙されたことがある。普通の言動をおこなっているのですぐにはわからないのだが、ある程度時間を掛けて話していると次第に内容の整合性がとれなくなってくる。それを相手に質していって初めて気付いた。私の場合1年かかったのだが日ごろから付き合っていた人物なので、裏を取ることなどみじんも思わなかったのだ。
物品の取得が目的で嘘をつけば、それは詐欺になるが、そうでなければ罪を問われることが少ないので、これら偽の情報はなくならない。だからこそコミュニケーションは難しい。嘘を嘘と見抜けなければならないのだ。
経歴詐称は犯罪だ
経歴詐称問題については、いつもなにかしら話題になっている。米国Yahoo!では、前CEOスコット・トンプソン氏が「会計学とコンピュータ・サイエンスの学位を取得」としていた経歴に詐称があり、実は会計学しか取得していなかったという理由でCEOを退任させられた。
日本でも慶應義塾大学の人気“特任”准教授が経歴詐称で話題になった。自分という商品を高く売るためには、いかに魅力的に見せるかが大事だ。いきおいその価値を高く見せるために経歴も高く見せてしまうのだろう。しかし学歴の詐称は罪になる。
日本の軽犯罪法第1条15項には以下の文章がある。
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
(省略)
十五 官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者
学位の詐称は「拘留又は科料に処」されるわけだ。ちなみに科料とは刑罰に規定された金銭罰だ。1000円以上1万円未満と軽いが、法を犯す行為であることに間違いはない。
通常、軽犯罪法で罪を問われることは少ないので、少しくらいは大丈夫だろうと自分を大きく見せるために経歴を“盛る”。また、それを続けるとだんだん本人もそれが真実だと思い込んでしまい、罪の意識も消えるという。
フェイスブックにも嘘が満載
フェイスブックでも嘘は満載だ。イギリスでの調査だが、10人のうち8人はフェイスブックで嘘を書いているとのこと。こちらの記事では、“Fakebook”と揶揄されている。
みんなが自分をより良く見せるためにやっていることがおもしろいので引用してみよう。
TOP ‘FAKEBOOK’ LIES
1. Use an old photo as a profile picture to look more attractive
2. Remove ‘ugly’ photos
3. Read articles on newspaper app to appear clever
4. ‘Like’ something to appear intellectual
5. Edit a picture to make yourself look more attractive
6. Message someone on Facebook you’ve never met
7. Write a status or tweet which is a lie
8. Use a profile picture of someone that wasn’t me
9. Write a status exaggerating how ‘fun’ a party or social event was
10. Had a relationship status that’s wrong i.e. in a relationship when actually single
11. Sent a friend request to someone just because they were attractive
12. Make up a status or tweet because you want attention
13. Dress up/ exaggerated job role
14. Exaggerate qualifications
15. Tag yourself or check in to a location you weren’t at
16. Made your education look better than it is
17. Edit books/movies/music to look a bit cooler
18. Edit things you like to have more in common with someone you like
19. Pose for a photo next to a car/house/motorbike that wasn’t yours
20. Create a fake photo album
“フェイクブック”の嘘トップ20
1. プロフィール写真により魅力的な写真を使用。
2. 醜い写真は外す。
3. より賢く見せるために新聞アプリから記事を読む(ように見せかける)。
4. インテリに見えるものに「いいね!」を付ける。
5. より魅力的に見えるように自分の写真を加工する。
6. 会ったこともない人にメッセージを送る。
7. 高い地位を書き込んだり、そのような嘘を呟く。
8. プロフィール写真に他人の写真を使う。
9. パーティやイベントで楽しそうに誇張して書き込む。
10. 本当は独りぼっちなのに他の人と関係があるように装う。
11. 魅力的に人たちに友達申請を送る。
12. 気を惹くために自分の身分(地位)を“盛る”。
13. 仕事の役職などを誇張してみせる。
14. 誇張した資格などを書き込む。
15. 実際にはいない場所を自分にタグ付ける。
16. 良い学校を出たかのように作る。
17. より賢く見せるために、(自分が読んだ)本や映画、音楽情報をいじる。
18. 好きな人と同じものが好きかのように書き込む。
19. 自分のものでもないクルマ・家・オートバイなどの横でポーズをとった写真を掲載。20. 偽物のフォトアルバムを作る。
なかには完璧な嘘とは言えないものもあるが、いやはや、なんとも作り込むものである。ちょっとしたお遊び気分もあるだろうし、個人情報をそのまま出す怖さもあるだろうから、多少事実と異なる掲載もあるだろう。こうなるとフェイスブック自体を真実とは異なった“お遊びソーシャルツール”と思ったほうがいい。実名性だからといって、すべてが真実ではない。
ネットの時代だからこそ、自分の情報を簡単に外に発信できる。しかしそれはまた、簡単にあなたの情報が多くの人の目にさらされることでもある。だから嘘をつけば簡単に見破られる。発信した情報の間違いもすぐに指摘されることになる。
今回の誤報は、いままで新聞など大メディアが担っていた情報のフィルタリング機能、つまり正しいものを見極める目としての機能が劣化していることが露呈された。ネット以前、私たちは、新聞などが「この情報は多くの人に伝えるべき情報だ」と情報自体を判断して掲載した情報のみに接してきた。
しかしいまは違う。伝えるべき情報かなどと判断するのは自分なのだ。自分が知るべき情報なのか、その情報は正しいのか、自分で判断しなければならない。いままで言われてきたメディア・リテラシーとは、新聞その他のメディアの真偽を図る能力を指していた。
しかし、メディアがチェック機能をなくし、また、情報の主体が直接ネットで発表したり、書き込んだりしている現在、ネットはすでにいままで言われてきたメディアではない。個人の日記であり、発表ノートである。
であれば、我々に必要な能力は、メディア・リテラシーではなく、“対人リテラシー”とでも言えばいいのであろうか、その人が信用するに値するかどうかを見極める能力なのである。
田代 真人(たしろ・まさと)
編集者。株式会社メディア・ナレッジ、株式会社マイ・カウンセラー代表。駒沢女子大学講師。1986年九州大学機械工学科卒業。その後、朝日新聞社、学習研究社、ダイヤモンド社と活躍の場を変え、ファッション女性誌からビジネス誌まで幅広く取材・編集。20年以上にわたるメディア経験のなかでインタビューした経営者は1000名を超える。2007年メディアプロデュースを専業とする株式会社メディア・ナレッジを創業。同時に携帯メール悩み相談サイト、株式会社マイ・カウンセラーの代表就任。著書に『電子書籍元年』(インプレスジャパン)、構成作品に『もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら』(日経BP社)がある。
「売る」と「売れる」境界線のコミュニケーション力
著者がこれまで取材してきた経営者やものを売る現場の担当者たちの言葉や経験から、ものを“売っていく”コミュニケーションと、ものが“売れていく”コミュニケーションの違いに焦点をあてて解説。ものが売れるとはどういうことなのか。論理的に解明していきたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121015/238081/?ST=print
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