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アップルに降伏したフェイスブックとHTML5の行方 (前篇)
http://www.asyura2.com/09/it11/msg/752.html
投稿者 SOBA 日時 2012 年 9 月 14 日 11:35:28: LVbi13XrOLj/s
 

iPhone向けに作り直されたFacebookアプリ〔PHOTO〕gettyimages
 
 
2012年09月13日(木) 小林 雅一
アップルに降伏したフェイスブックとHTML5の行方 【前篇】
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33517

 ここ数年で膨れ上がった次世代ウエブ技術「HTML5」への期待感が、最近急速に萎(しぼ)んでいる。その大きな要因の一つが、先月下旬にフェイスブックが起こした動きだ。同社は、以前から評判が悪かったiOS(つまりアイフォーン、アイパッド)向けのフェイスブック・アプリをゼロから作り直して、これをアップストアから再リリースしたのだ。

 この記事をお読み頂いている方にも、普段フェイスブックをアイフォーンからお使いの方がおられると思うが、「確かに以前よりもアプリの動きが速く、滑らかになった」という感触を持たれたのではなかろうか。実際、多くのユーザーはそのような感想を抱いているようだ(実は筆者自身は、以前とそれほど大差ないように感じているのだが、ここは大方の見方に従っておこう)。

 それ自体はとても良いことなのだが、一方で今回のフェイスブックの動きを複雑な思いで見つめている人たちもいる。それは冒頭に記した、「HTML5」と呼ばれる新しいウエブ技術を支持してきた人たちだ。その説明に入る前に、HTML5とは何かを簡単に解説しておこう。

 HTML5とは、私たちが普段使っているホームページ(ウエブページ)を制作するためのコンピュータ言語「HTML」のバージョン5である。今までのバージョンと何が大きく変わったかというと、それは「JavaScript」や「CSS」などプログラミング関連の機能が大幅に強化されたことだ。つまりHTML5を使うと、従来の単なる静的なホームページのみならず、もっとダイナミック(動的)なアプリケーション・プログラム(アプリ)も作ることができる。これがHTML5の最大のメリットだ。


閉鎖的なモバイル・アプリ市場を解放するHTML5

 このHTML5の応用領域は、パソコンからスマートTVのような次世代家電、さらには自動車に搭載される車載システムなど実に広範囲に渡っている。が、まず真っ先に期待されているのが、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末への応用だ。なぜか? それはHTML5が、アップルやグーグルなどが支配する「クローズド・プラットフォーム(閉鎖的プラットフォーム)」の世界を解放してくれるかもしれないからだ。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33517?page=2
 クローズド・プラットフォームとは、文字通り「自分たちのプラットフォームは同業他社には使わせない」というスタンスだ。その典型は、アップルが持っている「アップストア」というアプリ・マーケットである。つまりアップストアから配信されるゲームや電子書籍など各種アプリは、アイフォーンやアイパッドなどアップル製のモバイル端末でしか使えない。

 同じことはグーグルについても言える。彼らのマーケット「グーグル・プレイ」から配信される各種アプリは、やはりグーグルの提供するモバイルOS「アンドロイド」を搭載したスマートフォンやタブレットでしか使えない。アップルやグーグル以外にも、アマゾンやマイクロソフト、さらにはノキア、RIM、サムスンなど、モバイル産業の主要プレイヤーはいずれも、基本的には「クローズド・プラットフォーム」戦略をとっている。

 なぜか? それは「クローズド・プラットフォーム」が客(消費者)の囲い込みに使えるからだ。たとえばアップストアから配信される便利で楽しい各種アプリが「アイフォーン」でしか使えないとなれば、消費者はますますアイフォーンを買うようになるだろう。これに負けじと、グーグルを始めとする同業他社も各社のアプリ・マーケットの品ぞろえを充実させて、アップルに対抗する。これがモバイル産業のクローズド・プラットフォーム化に更なる拍車をかけている。

 クローズド・プラットフォームは別名「ウォールド・ガーデン(壁で仕切られた庭園)」とも呼ばれ、実は消費者にとって好ましい状態ではない。なぜなら彼らは一旦、アップルやグーグルの壁で囲われてしまうと、その外に出られなくなってしまうからだ。

 さらに各種アプリを開発・製品化するソフトウエア開発業者にとっても、クローズド・プラットフォームは悩みの種と言われてきた。なぜなら同じ内容のアプリでも、アップル、グーグル、アマゾン、マイクロソフト、その他大勢のプラットフォーマーに向けて、何度も作り直さねばならないために、開発コストが大幅に膨らんでしまうからだ。


HTML5を巡る、アップルやグーグルの思惑

 ここ数年、HTML5がモバイル・ユーザーやIT関係者の間で強い期待を集めてきたのは、上記の問題をHTML5が解決してくれるからだ。HTML5で作られた各種アプリは、ウエブ・ブラウザ上で動くことから「ウエブ・アプリ」と呼ばれる。

 これに対し、「iOS」や「アンドロイド」、あるいは「ウィンドウズフォン」など、各社固有のモバイルOS上で動く従来型のアプリは「ネイティブ・アプリ」と呼ばれる。前段までの話を整理しておくと、ネイティブ・アプリはアップルやグーグル、マイクロソフトなど各社のクローズド・プラットフォーム戦略に使われる武器と言うことができる。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33517?page=3
 しかしHTML5は「W3C(World Wide Web Consortium)」と呼ばれる標準化団体が策定する世界標準言語なので、この言語で作られたウエブ・アプリは、アップルのアイフォーンでもグーグルのアンドロイドを搭載した端末でも、あるいはマイクロソフトのウインドウズフォンを搭載した端末でも、基本的には同じように動く。従ってユーザー(消費者)はIT各社のウォールド・ガーデンから解放されるし、ソフト開発業者も一本のソースコード(プログラム)を作るだけで、あらゆるメーカーのあらゆる端末に対応するアプリを提供できる。つまり開発コストを劇的に節約できるのだ。

 このように一見、良いことづくめにも思えるHTML5だが、実は重大な問題を抱えている。と言うのも、HTML5で作られたウエブ・アプリはその機能や性能面で、ネイティブ・アプリに劣る点が幾つかあるのだ。たとえばウエブ・アプリからは、スマートフォンに内蔵されたカメラや各種センサーなどを操作できない(ネイティブ・アプリからはそれができる)。またウエブ・アプリはネイティブ・アプリに比べて、動作がかなり遅い。

 これらの問題のせいで、IT業界の関係者、特にゲーム開発業者などの間では「HTML5(ウエブ・アプリ)は理想ばかり高くて、実際は使い物にならない」という批判的な意見がしばしば聞かれた。が、その一方で「HTML5こそ、ウエブとIT産業の未来である」として、この技術を強く支持してきた人たちや企業もいる。なかんずくアップル、グーグルというIT産業の二大巨頭は、ずっと以前からHTML5の強力な推進者として知られてきた。

 ところがアップルとグーグルは最近、共に利己的な理由からHTML5への支持を前面に押し出さなくなってしまった。そもそもアップルがHTML5を支持したのは、アドビの「フラッシュ」と呼ばれるプラットフォームをモバイル業界から排斥するための、一種の口実であった、と見られている。その目的が達成された今、HTML5は「アップストア」に対抗する存在として、アップルにとって、むしろ煙たい存在になってしまった。

 同じようにグーグルも、当初はマイクロソフトの「ウィンドウズ」を攻撃するための武器としてHTML5を推進してきた。ところがスマートフォンを中心とするモバイル業界においては、HTML5は「アンドロイド」や「グーグルプレイ」に対抗する存在として、グーグルにとっても煙たい存在となってしまった。以上が、アップルやグーグルが最近、HTML5に冷淡な姿勢を見せるようになった理由だ。


フェイスブックもアップルの力に屈する

 そうした状況下にあって、HTML5支持派の「最後の砦」と見られていたのがフェイスブックだった。フェイスブック自身は、アップルやグーグルのように自社固有のスマートフォンやそこに載せる独自OSを持たない。またフェイスブックは元々、パソコン向けのウエブ上で成長してきた経緯から、新しいウエブ技術には全面的に賛成である。さらにフェイスブックは、IT業界におけるアップルやグーグルとの主導権争いにおいて、iOSやアンドロイドに対抗するオープン・プラットフォームの台頭を望んでいる。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33517?page=4
 これらの理由から、アップルやグーグルがHTML5に冷めてしまった後でも、フェイスブックは(オープン・プラットフォームの代表とも言える)HTML5の強力な支持者として、この新技術の普及に全力をあげて取り組んできた。 その強力な証拠が、フェイスブックがアイフォーン向けに提供してきた「フェイスブック・アプリ」である。これはアップストアから配信される以上、形式的には「ネイティブ・アプリ」に分類される。

 ところが従来、このアプリ(プログラム)の90%以上はHTML5で作られており、アイフォーン独自の「Objective C」という特殊な言語で作られている残りの部分は、プログラム全体のほんの数%に過ぎなかった。つまりアップストアから提供されてきたフェイスブック・アプリは「ネイティブの仮面を被ったウエブ・アプリ」だった。

 ところが「ウエブ・アプリは遅い」という一般的な評判に違わず、アイフォーン向けのフェイスブック・アプリもユーザーの間では「動きがトロい」「イライラする」など散々悪評にさらされてきた。これに耐えきれなくなったフェイスブックは、これまでのポリシーをかなぐり捨てて、アイフォーン向けのアプリを「Objextive C」を使ってゼロから作り直した(つまり正真正銘のネイティブ・アプリにした)。そして、これを先月下旬にアップストアから再リリースしたのだ。この新しいフェイスブック・アプリに対する、ユーザーの評判はすこぶる良い。

〈後編に続く〉  

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コメント
 
01. 2012年9月16日 22:23:28 : eS5CPZpets
しかしHTML5陣営が勝とうとネイティヴアプリ陣営が勝とうと、
結局アメリカ主導という感は否めない。

02. 2012年9月20日 13:12:41 : 28s2OZySuE
HTML5も存続するし、iOSネティブアプリーも増殖するし、両者対抗のするよう捉え方はおかしい。LAMP系+ASP+JSP系のウェブアプリーにNative Code並の動きを望むのは、仕組み上の理由から、いつまでたっても無理な話。ウェブアプリーにNative Codeで包むのはその場しのぎのやり方で、Appleをごまかすためにやったなら話が分かる。通常ならパイロットなもので性能テストしてから方針を決める。結局2度手間となったシナリオは予測をたてるはず。詳細経緯は分からないが、Facebookの技術責任者は果たして大丈夫かな。

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