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【日本版コラム】新聞記者の仕事もロボットに置き換わるか?
影木准子の米国ロボット最前線
2012年 3月 8日 10:16 JST
与えられたデータを使って記事を自動的に生成するソフトウエアが開発されたという。しかも、大手経済誌のフォーブスが昨年10月から、このソフトを使って書かれた金融記事を、毎日のように新しくサイトに掲載している。機械化によって、農業や工場がどんどん無人化されたが、いよいよ記者である私の仕事もなくなってしまうのだろうか。
気になるので、このソフトを開発したベンチャー企業、ナラティブ・サイエンス(本社シカゴ)に電話で話を聞いてみることにした。
大学発ベンチャー
「ナラティブ(narrative)」とは「物語」の意味で、同社のソフトは与えられたデータを分析し、その都度、人間のように原稿の切り口を決めてから文章を書く。だから、事前に作成済みの原稿に数字や言葉を穴埋めして行く従来の技術と違って、金太郎飴のような原稿にはならないし、言われなければ人間が書いたものと区別が付かない。
イメージ
ナラティブ・サイエンスのスチュアート・フランケルCEO
例えば、フォーブスがソフトを使って提供しているのは企業業績と株価に関連した記事だ。各社の過去の業績と株価のトレンド、そして将来の業績見通し、株価予測といったデータを総合的にとらえたうえで、利益の増減率や年初来最高値など、最もニュース性の高い情報にフォーカスしながら、記事を書き上げる。人間の記者と比べてコンピューターの強みは、全上場会社の株価を休みなくウォッチできること。また、高値更新といった現象が起きたならば、瞬時に記事を生成し、送り出すことができる点だ。元のデータが正しければ、人間のように計算ミスをすることもない。
「すでに新聞のコンテンツの20%は当社のソフトで自動的に生成できる」とナラティブ社の最高経営責任者(CEO)であるスチュアート・フランケル氏は言う。
もともと同社の技術は、ノースウェスタン大学のクリスチャン・ハモンド教授とラリー・バーンバウム教授が共同開発したものだ。2人は大学でコンピューター・サイエンスとジャーナリズムの両学部を掛け持ちしているのが特徴で、野球の試合のデータを使って、その試合に関する記事を自動生成できるソフトを開発した。それを起業家のフランケル氏に見せたところ、同氏が大きなビジネスの可能性があると判断し、2010年1月に3人で会社を興した。その年の3月に大学から技術のライセンス供与を受け、ひと月後には100万ドル強を資金調達。2011年1月にはさらに600万ドルを調達し、現在の社員数は約30人に上る。
人間の記者がやりたくない仕事、できない仕事
フランケルCEOによると、同社の顧客は現在約30社で、それらは大きく2つに分類できる。1つはフォーブスのようなメディア会社で、記事の値段は1本10ドルからだ。買った記事はメディア会社の所有物となり、いかようにも使える。私も若いころ、企業業績や株式市場に関する記事を書く仕事をしていた時期があるが、面倒で苦痛だった覚えがある。それがロボットに置き換えられ、記者はもっとおもしろい取材に専念させてもらえるのであれば大歓迎だ。もちろん雇用主側にとっては、人件費の削減が技術を導入する最大の目的だろう。
もう1つのタイプの顧客は通常の事業会社で、その業種は様々だ。例えば米国の大手ピザ・チェーンは、全店舗の販売情報を毎週、ソフトに分析させて記事化し、各店舗に売り上げの現状や改善点などを知らせている。以前は各店舗の責任者がシステムにログインして、たくさんの数字とにらめっこをする必要があったのが、ナラティブのおかげで、今は読みやすい文章になった報告書を受け取れるようになった。
また、全米の何千というアマチュア野球チームに得点記録アプリケーションを提供している会社は、それぞれの試合終了直後に、会員に対してニュースを自動配信している。この例などは、そもそも人間の記者がフォローしきれていない分野だ。
このほか、不動産会社や広告会社など顧客の業種は広範囲に及ぶが、「いずれも膨大な量のデータを収集・蓄積している会社で、それらのデータを有効利用したいという願いで共通している」とフランケルCEOは説明する。同CEOによると、大手の顧客では毎年100万本に上る記事を提供しているところもあり、この場合は本数ベースではなく、定額制の料金体系を採用している。
日本語でも書けるのか?
応用領域の広い技術だが、分野と記事の内容によって当然、ソフトのコンフィグレーション(設定)を変える必要がある。そこで、ナラティブではジャーナリズムの経験者を雇っており、物書きのプロである彼らがソフトの設定を担当する。金融記事もスポーツ記事も、それらを実際に書いた経験のあるジャーナリストが、ソフトに教え込んでいるわけだ。いったん設定が完了すれば、ソフトは“独り立ち”し、どんどん記事を生成できるようになる。
これまでナラティブのソフトは、株価や得点といったデータベースに収まる構造化データを用いてきたが、最近、記事のレパートリーが増えた。政治だ。情報源はツイッター。今年は大統領選挙の年であり、みんながツイッターでそれぞれの候補者についていろいろなことをつぶやいている。それらを全部かき集めて分析し、候補者に関する世論や世間のムードを記事にするのだ。(ツイッターを元にした大統領選挙に関連した記事はここで読むことができる。)ツイッターのように、リアルタイムで膨大な量の情報が流れては消えて行く状況では、人間の記者はコンピューターに到底かなわない。
しかも、「ソフトは最初から言語に依存しないように設計されているので、どんな言語でも対応可能」(フランケルCEO)とのこと。今は会社がまだ小さいので英語にフォーカスしているが、日本語、スペイン語、フランス語の辞書を使えばそれぞれの言語で記事を生成できるようになるという。「技術的な制約はなく、今後2年以内には複数の言語でコンテンツを生成できるようになるだろう」と同CEOは予測する。
う〜む。そうなると最後に肝心の質問をしなければ。私の雇用確保はいかに?
「心配しなくて大丈夫。(ソフトには)こんなインタビューはできないし、将来もできないから。」(フランケルCEO)。
ほっ。
********************
影木准子(かげき・のりこ)
影木准子氏
北海道大学工学部を卒業後、日本経済新聞社で13年間、記者として働く。うち1997-2001年の4年間は同社シリコンバレー支局勤務。現在はシリコンバレー在住のフリーランス・ジャーナリスト。コンシューマー向けロボットの開発・市場動向に最大の関心があり、この分野の米国を中心とした海外における最新情報をGetRobo Blog(http://www.getrobo.com/getrobo_blog/)などで発信している。
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