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からの転載です
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せっかくの連休なので、アメリカンポップスに関するネタを提供しつつ、社会問題を。
ていうか、多くの人にとってはJustin Bieberって誰よ?って感じだろう。
アメリカで今やLady Gagaの次くらいに絶大の人気を誇る、ティーンのアイドルです。
知らない人は多いと思うが、彼の叩かれ方を見ていると、アメリカの世相を顕著に表しているなぁと思ったので、書いてみることに。
1. Justin Bieberって誰よ?
Justin Bieberは、現在アメリカのティーンアイドルで一番人気の、男性ポップシンガー。
2009年にデビューした、御年17歳のカナダ人。背はちっちゃく、17歳にしては童顔。
歌はまあまあだが、とても上手いというわけではない。ダンス、楽器などが出来る感じではない。
しかし、アメリカのティーンの女子には大人気。
女の子たちは、彼がテレビに出てくると、キャーキャー言って、気絶しそうな勢いだ。
大ヒットしたファーストシングルはこちら。結構いい感じ。
2. Justin Bieber Hate祭り
このシングルの爆発的なヒット以来、安定した人気を保っていたJustinに対し、昨年頃からネット上での攻撃がひどい。
昨年7月、ワールドツアーで訪れて欲しい国をネットアンケートで募ったところ、
「Justin Bieberを北朝鮮に送れ」という祭りが行われ、組織票で第一位に北朝鮮が選ばれた。
BBC Newsみたいな真面目なニュースでも取り上げざるを得なくなった。
今年2月にリリースされたシングル「Baby」も、ネット上の祭りにより、100万を超えるDislikeを獲得。
Youtubeの「Most Disliked Video」に認定されてしまった。
Most Hated Youtube Video: Justin Bieber Tops with 1 Million Dislikes - The Huffington Post
ティーンの反応を恐れてか、リアルの世界にいる批評家たちも、この曲を批判。
今や「今世紀で最もつまらない曲」などと評されている。
最近では、本人が車に轢かれて死んだとか、お母さんがプレーボーイにヌード出演したとか、
(ティーンが好きそうな)噂がネット上でも絶えず、本人が懸命に反論している様子。
反感の嵐は、アメリカ国内やネットにとどまらない。
先日のオーストラリアのツアーでは、舞台で歌っているときに、観客から卵を投げられている。
3. アメリカの巨大匿名掲示板、4chanの威力
これらの攻撃は、これまたアメリカのティーンの間で絶大な人気を誇る巨大匿名掲示板、4chan 及びそのBBSが震源となり、他の掲示板やTwitter、Facebookなどに波及する、という形で起こっているそうだ。
ちなみに、この4chan、もともとは日本の「ふたば☆ちゃんねる」というアニメについて語るためのサイトの英語版だそうだ。
(私はアニメ事情は詳しくないので、詳しい方は解説してください)
2003年に、当時15歳のNY出身アメリカ人少年 mootがオープン。
現在では一日の書き込み数70万件、アクセス数700万PVを超える匿名掲示板に成長した。
4chan本体は画像アップロードが主であり、トピック別のBBSがテキスト掲示板である。
この見た目が2ちゃんねると同じなので、驚かれる方も多いだろう。
そして、このJustin Bieberのケースみたいな「祭り」も結構頻繁に行われている。
例えば、2009年にTimeがネット上で募集する「今年世界で最も影響を与えた人」で、4chanの創始者mootが堂々圧倒的1位にランクイン。
これも4chan上の祭りによる組織票で、日本で言えばひろゆきがランクインするようなものだろう。
とはいえ、2001年に2ちゃんねるの組織票で、オサマ・ビン・ラディンを抑えて、田代マサシをこのTimeの投票で1位に押し上げた経験のある日本人から見れば、遅れてるし、ちょっとセンスない感じなのだが。
また、かつての2ちゃんねるであったように、巨大掲示板上で犯行予告がなされ、IPの情報などを元に実際に逮捕に至ったとか、
猫を虐待死させた動画をアップした人を、4chanコミュニティが48時間で突き止め、逮捕に至ったなんていう、社会的な側面も見せている。
この4chanのユーザーは、多くがティーンと大学生だが、ネット上への影響は徐々に大きくなって、大人も無視できなくなり始めている。
特に叩き系では大きな威力を発揮する。
最近では、Youtube上に自らの音楽ビデオを公開したカリフォルニア在住の13歳の女の子、Rebecca Blackの”Friday”に対する攻撃がすさまじい。
彼女がビデオをアップロードしたのは、今年の2月10日。
その後やはり4chanを中心に祭りが行われ、250万票を超える、Youtube史上最大のDislikeを集めてしまった。
アメリカのミュージックシーンでも、「最もつまらない曲」と言われる批判を受けている。
歌詞の内容は、平日は、宿題とか習い事がいっぱいあって大変だけど、友達とパーティ出来る週末が待ちどおしい、というものである。
確かに、単調なメロディと特に意味もない歌詞だが、傍目にそこまで批判することないだろうと思うものだ。
だが、YoutubeでのDislikeだけでなく、この曲を馬鹿にするためのパロディ動画が大量に作られている。
さらに彼女個人にも、「死ねばいいのに」「これがきっかけで拒食症になることを望む」といったメッセージが大量に送られている。
彼女は、今までにネット上で活躍したことがあるわけでも、ましてや芸能界に出たことがあるわけでもない、普通の女の子だ。
それが、初めてアップしたビデオで、ここまで叩かれてしまうのは、何故か。
単純にインターネットの掲示板での「祭り」だけが原因とも思えない。
4. Upper-Middle叩きの背景にある、アメリカの二極化現象
Justin Bieberのインタビューやニュースをいろいろ見たり、
叩かれた「Baby」を視聴していると、彼が叩かれる理由がなんとなく理解できてしまう。
視聴していると、私ですら、なんとなく軽い反感を覚える時があるのだ。
それはJustin Bieberが、裕福に育った白人の上流中産階級(Upper-Middle)の生まれであること。
しかも、精神的に苦労した跡も、上流階級という殻を打ち破ろうという跡も見られない。
そして、ミュージシャンとして努力もしていないように見えることにある。
彼の言動にも、彼のビデオにも、彼の母親の言動にまでそれが表れている気がしてしまう。
例えば、Justin Bieberを発掘したミュージシャンScooter Braunは、彼をデビューさせるよう母親を説得したが、彼女は最初承諾しなかった。
その理由は、Braunがユダヤ人だったからだというが、それを公言してしまう。
単に白人のUpper-Middleの出身というだけで、嫌われることはないだろう。
例えば、今世界中で注目されている女性シンガーLady Gagaも、父母がイタリアからの移民とはいえ、NYのUpper-Middleの出身だ。
かのパリス・ヒルトンの母校でもあるSacred Heart(聖心女子)というお嬢様学校に通っていた。
でも彼女は学校に通いながら、周りのお嬢様たちの間で疎外感を感じており、
大学に入ったら、家を飛び出して、ストリッパーのバイトをして自立した過去を持つ。
全ての楽曲を自分で作曲し、衣装も全て考えるという。
ここまで飛びぬけていて、かつ若者に共感できる悩みを共有していると、決して上流出身だからと叩かれることはないわけである。
一方、Justinは特に歌や楽器、ダンスが天才的に上手いわけでもなく、平凡である。
しかも、デビューして2年近く経つのに、努力の跡が余り見られない。
歌っている曲の内容も能天気で、インタビューでも何か深く物を考えている軌跡は見えない。
要は、中途半端なのだ。
先日、Justinはアメリカを代表するインタビュー番組のひとつ、Ellen DeGeneres Showに出演したが、
ホストのEllenとろくなやり取りも出来ず、Justinのファンだという15歳の女の子の家に尋ねて、びっくりさせ、抱きしめてよろこばせる、というだけで終わってしまっていた。
15歳のファンの子の方が、余程饒舌にインタビューに答えている。
裕福な白人の中産階級に生まれ、特に苦労もせず、能天気(に見える)。
自ら、その守られた世界から殻を破って出てこようともしない。
だから、今のアメリカのティーンには嫌われ、叩かれるのではないか、というのが私の仮説。
何故なら、二極化の上のほうにいて、特に努力や苦労もせずに、その地位にいられるような人たちへのティーンの反感は非常に大きい。
この背景にあるのは今、アメリカでは90年代よりも、大きく二極化が進み、固定化が起こり始めていることだ。
お金がなくても、下克上出来る唯一の手段が教育だが、この状況は日本よりずっとひどい。
公立の学校教育は日本は比較にならないほど崩壊し、お金がなければほとんどまともな教育は受けられない。
(アメリカの素晴らしいのは、大学以上の高等教育だけである)
そんな中で、例え人よりちょっと頑張って、公認会計士などの資格をとったり、SEになったりしても、余程の才覚がなければ豊かな生活など出来ない。
企業は、会計士の仕事もSEの仕事も、あらゆる仕事をインドにアウトソースしている状況だ。
昔のように、誰もが中流階級としてそれなりの豊かな生活が出来る時代ではない。
その結果なのか、ほとんどの若者は内向きで、夢がない。
Youtubeにオリジナルのミュージックビデオをアップして、大量の攻撃を受けたRebecca Blackも、豊かな中産階級の生まれだ。
音楽の習い事をしているRebeccaは、ある日、スタジオで自分のミュージックビデオが作れるとクラスの友達から聞く。
そして、母親に4000ドルを出してもらって、ビデオ「Friday」を作ったのだという。
彼女も歌やダンスや楽器が上手いわけでもない。誰もが認める美貌の持ち主でもない。
でも、家は結構お金持ちで、歌を歌うのはすき。だからお金を払って曲を作ってみた。
これは、格差社会で夢も持てないアメリカのティーンズから見たら、格好の叩く材料なんじゃないだろうか。
アメリカのメディアでは、彼らへの攻撃がエスカレートしている状況を見て、一部に4chanのようなネットメディアを過度に批判する動きがある。
(特に4chanでは、日本のエロ漫画などもアップされており、そういうことに全く理解のなく、児童ポルノに結びつける大人からの批判が手厳しい)
しかし、ティーン中心のネットメディアでここまでの反応が起こるのは、単純にネットメディアの存在が問題なのではなく、その背景にある社会環境の影響だと考えるべきではないか。
ティーンたちのJustinやRebeccaに対する反感は、そっくり今のアメリカの大人たちが格差社会と上流階級に対して向けている憎しみを写したものではないかと思う。
叩きを容認するつもりは全くないが、単純に匿名掲示板が悪いとか、ティーンが悪い、という結論は短絡過ぎる。
5.以下余談。
初めてのビデオを出して、これだけの反感を買ったRebecca Blackは、「こんなのに負けないで2曲目を出す」と言っているそうだ。
しかし、彼女がもし音楽の道で有名になりたいと思うなら、
死ぬほど努力して、歌やダンスや楽器の腕を相当磨いて、真のミュージシャンになるか、
奇抜なファッションかセクシー路線など、上流階級を逸脱した手段に出るか、しかないと思う。
お嬢様の殻の中にいては、ますます反感を買うだけだ。
最後に、本編には関係ないですが、Lady Gagaの新曲Judasの、Ellen DeGeneres Showでのパフォーマンスを紹介。
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