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株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu204.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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NECも日立も、スパコンを止めてしまった。富士通だけがやってくれている。
世界一の競争ができなくなれば、一番喜ぶのは米国メーカーである。
2009年11月20日 金曜日
◆スーパーコンピューターを復活してほしい -11月17日 西 和彦
http://agora-web.jp/archives/802222.html
先日のNHKテレビの報道を見ていて、ソファから転げ落ちると思うほどびっくりしたことがあった。蓮舫参議院議員が鬼のような顔をして、「スパコンで世界一になる意味はあるのか?」と仕分けしていたからである。仕分けされているときに、それに反論している文部科学省の役人を有り難いと思った。日本のスパコンのために頑張ってくれている!官僚をこんなに有り難いと思ったのは久しぶりだ。しかし、スパコンは「来年度の予算計上の見送りに限りなく近い縮減」つまり中止に仕分けされてしまった。
私は、このプロジェクトに直接の利害関係はない。民主党員ではないし、自民党員でもない。週末にこのことに対する論調をネットで読んでいたが、誰も反論しないので、民間人として、スーパーコンピューターの世界に関係があるものとして、この文章を書くことにした。
日本のスパコンは世界一であった
日本はかつて世界一のスパコンを作った国であった。NECが地球シミュレーターとして作り、スポンサーは国であった。私は当時、学術・産業用のコンピュータを作るベンチャー会社、ビジュアルテクノロジー社の仕事をしていた。私はこのスパコンが世界一に選ばれているときに、ドイツのハイデルベルグであった学会の会場にいた。その世界一のスパコンを作って賞をもらった日本人はうれしそうであった。そのスパコンはベクトル計算方式という、いわばこれから無くなると私は思っていた方式なので、「お金さえ掛ければ世界一になれるよな」と思い、そのようなお金を使うことのできる研究者とNECがうらやましかった。その日の晩御飯で同僚とやけ酒を飲んだ。
その会議の最終日、私は少なくとも日本一の新しい方式のスパコンをお金を掛けないで作りたいと思ったのである。新しい方式とは、スカラー方式といい、マイクロプロセッサを多く使うのである。2003年、私達の作ったスパコンは同志社大学に納入が決まり、10月 同志社大学知能情報センターにAMD Opteron Cluster 512 プロセッサシステムが設置された。一瞬ではあったが、11月にAMD Opteron Cluster 512 プロセッサシステムがスーパーコンピューティングサイトTOP500 にて世界第93 位、日本国内PC クラスタ第1 位、AMD Opteron クラスタ世界第2 位になった。NECのスーパーコンピューターに負けたくないという気持ちが、われわれの原動力になったのであった。
日本の世界一を超えたのは米国
この時に私が目をつけた競争相手がいた。それがアメリカのブルックヘブン国立研究所(BNL) と日本の理研が共同で行なっていた研究であった。当時、値段の安かったDSPというプロセッサを数万個使ったQCDシステムを考えていた。後にブルックヘブン研究所のメンバーはIBMワトソン研究所に移る。IBMでIBMのパワーPCのCPUをコアにしたカスタムのLSIを作って、同じ考えのスパコンをIBMが作ることになった。これがIBMのBlueGeneである。今、世界中のトップのスーパーコンピュータはこのIBMのBlueGeneが独占している。
このたびの理研のスーパーコンピューターは、このIBMのBlueGeneのもうひとつの流れを正統に汲むものである。そして、それは世界でIBMと理研しかできないシステムである。日本でするならば、理研がやらなくてはならないのである。
経済産業省の配下に産業総合研究所というのがある。ここのスーパーコンピューターの受注を争ったことがあった。われわれは同志社大学という実績があった。敵はIBMであった。IBMは台湾製の部品を安く仕入れて、入札に勝った。私はこのとき、この競争で、まさか産総研がIBMから買うとは考えていなかった。お金のある会社の力にはかなわない。IBMは戦略的な値段で入札を取っていった。産総研のスパコンはその後いろいろなトラブル続きで、世の中には大きなインパクトにはならなかった。お金がいくらあっても実現できないこともあるのだ。
IBMのBluegGeneより早いスパコンは理研が作ることができる
BlueGeneが世界一になってから、ある国立大学の研究所から名指しで呼ばれた。「西さん、IBMのBlueGeneより速いスパコンが作れないか」と聞かれた。「なぜですか?」と問うと、「BlueGeneは32ビットである。できないことが沢山ある。そのうち10年ぐらいしたらIBMは64ビットのBlueGene64を投入してくるだろう。でも、私はそれまで10年間も待てないんだよ。」
このたびの理研のスーパーコンピューターは大体において、このIBMのBlueGeneを64ビットにしたような機械である。理研はこのコンピュータを富士通から買うという意識ではないはずである。理研が作っているという気概があるであろう。これを速やかに実現すれば、数年は世界一がとれる。そしてその後、IBMが必ず取り返すであろう。そしたら日本はまたそれより速いのを作ればいい。
世界の競争のために、日本も世界一を取るのだ
日本のために世界一を取るのではなく、世界の競争のために、日本も世界一を取るのだ。IBMに対抗して、それが取れるのにもっとも近いのは、もともとの兄弟分であった理研だけである。NECも日立も、スパコンを止めてしまった。富士通だけがやってくれている。富士通には日本のために頑張ってもらわなくてはならない。富士通のスパコンは最後の希望ではないか。少しぐらい儲けてもらってもいい。世界一の競争ができなくなれば、一番喜ぶのは米国メーカーである。日本が世界一になるから、その次の競争がある。米国は当分世界一を続けるであろう。しかし、競争はそこで停滞する。(中略)
文部科学省はパブリックコメントのWEBを作成
まさに、このコラムを送ろうとしていた今、文部科学省のWEBを見に行ったら、パブリックコメントを求める掲示が11月16日付けで出ていた。私のこのコラムに賛成いただける人は、「スパコン賛成」というコメントを是非、文部科学省のパブリックコメントに送って欲しい。もちろん私もコメントを送りたい。文部科学省に送らないで、このBLOGにコメントを付けていただいてもいい。心からお願いします。はっきりとした民意を示すということが、今、我々に求められていると思う。それがないと閣議にも予算委員会にも上げようがない。それが今の私の最後の希望である。
◆遠ざかるスパコン世界一の座 5月20日 伴大作
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0905/20/news009.html
科学技術行政の投資の問題点
日本の科学技術行政、中でもコンピュータに関する支出判断には違和感が残る。次世代のスパコン、それも、世界一の性能を目指すのであれば、金に糸目をつけないぐらいの覚悟は必要だ。
NECがこれまで蓄積したベクター型スパコンのノウハウを結集した最先端のシステムを国費で構築するのなら、あるいは既に世界の主流となったスカラー型で世界一を目指すのなら、それはそれで納得できる。どちらかを選択することが重要なのだ。
問題は、両者の長所を引き出して融合させようという狙いからか、ある意味で水と油の関係にある両者で合同のプロジェクトを組ませようとしたことにある。それほど潤沢とはいえない予算で、このような試みを行うなど暴挙に近い。公共建築を建てるときに業者を集めて談合する感覚なのかもしれないが、ノウハウの結晶であるスパコンでは、どの会社も技術情報の流出を極端に嫌う。共同プロジェクトなど不可能に近いのだ。
それにしてもなぜ、理化学研究所のプロジェクトは2つのアーキテクチャのどちらかを選択するのではなく、両者の長所を取り入れようとしたのだろう。同研究所の意欲は買うが、結局「二兎を追うものは一兎をも得ず」という結果は見えていた。
日本の科学技術行政ではこのようなケースがかなり多く見受けられる。関係者の意向を尊重するあまり結論を出さず、三方一両損のような進め方をする場合が結構多い。今回の件では、スカラー、ベクターいずれかを選択すべきではなかったのだろうか。
(私のコメント)
蓮舫参院議員が「一時的にトップを取る意味はどれくらいあるか」と言う事で、スーパーコンピューターの開発予算をばっさり切ったことが話題になっていますが、その問題点はどこにあるかが素人には分からない。しかし科学者たちも必殺仕分け人に対しての説明の仕方が悪くて予算の削減が求められてしまった。
スーパーコンピューターと言うから特殊なコンピューターと考えがちですが、パソコンと原理は同じだ。日本はNECが開発したベクター型のスーパーコンピュータの「地球シュミレーター」が有名ですが、世界のスーパーコンピューターの主流はスカラー型に代わりつつある。
最近のパソコンでもCPUが分散型になってきていますが、スーパーコンピューターでもCPUを並列に並べて高速化を図るほうがコストも安く作る事が出来る。だからNHCや日立の開発してきたベクトル型のスーパーコンピューターは撤退を余儀なくされた。性能がいくら良くても高ければ誰も買わないし開発も行き詰まってしまう。
理研では富士通のスカラー型の開発一本に絞るようですが、文部省では当初はNECや日立などを加えたジョイントベンチャー方式で折衷させようとした事に問題がある。これは池田信夫氏が批判するようなITゼネコンのやり方であり、戦艦大和になってしまう。文部官僚が技官であってもスーパーコンピューターの主流がベクター型からスカラー型に変わる事が理解できていないからこうなるのだ。
西氏が書いているように理研が開発しようとしているのは、32ビットのCPUを使ったスーパーコンピューターから64ビットのCPUのコンピューターを開発しようと言う事であり、完成すれば数年は世界一のスーパーコンピューターになる。蓮舫参議院議員は世界一になる必要があるのかと発言しましたが、パソコンを操作していてインターネットを表示するのに数分もかかる様なパソコンでいいというのだろうか?
高性能パソコンでなければ動画も見れないし音声も再生できないようなパソコンでは今では使いものにならない。確かにワープロや表計算が出来るからいいではないかといった理屈ですが、科学計算で早いかどうかは致命的であり、スーパーコンピューターでは早ければ早いほどいい。今の計算機でも何年もかかるような計算プログラムがあるようですが、次世代機では数時間で計算できるようになれば不可能が可能になる。
中央官庁の技官でも専門分野では取り残されているのであり、新型インフルエンザでも厚生省の医療技官は全く対応が出来ていない。それが数千億円の予算を握ってしまっているから無駄に国家予算が使われて赤字財政になってしまうのだ。文部省の官僚がスーパーコンピューターの意義を説明が出来ないのも現場を知らないからであり、実権だけを握りしめて離さない。
蓮舫氏らの「スパコン、世界一になる必要あるのか」の発言にソファから転げ落ちそうになった西氏の気持ちが分かりますが、池田信夫氏のスーパーコンピューターは戦艦大和だというほうが素人には分かりやすい。しかし池田氏が批判するのはベクター型とスカラー型を折衷させようとして巨額な費用がかかるやり方を批判したのだ。
ベクター型にはベクター型のよさがあり、現在NECや日立のスーパーコンピューターを使っているユーザーはスカラー型の計算機を使うことが出来ない。64ビットのパソコンは64ビット用に作られたプログラムでなければ意味がない。もちろんパソコンもソフトが無ければただの箱でありほどほどの性能のパソコンで優れたソフトを開発した方がいいという意見もある。
しかし科学計算は早くなければ実用にならないのであり、世界一でなければ新しい発見も出来ない。32ビットの計算機を64ビット化する事はプログラムもそれ専用のプログラムを組む必要があり実機が無ければ作ることが出来ない。ITもソフトとハードがあって役に立つようになるのですが、スーパーコンピューターは金で買えばいいは暴論だ。
ITもかつては日本が最先端を行っていたのですが、国産OSがアメリカの圧力で潰されて情報産業では遅れをとるようになってしまった。NEC、東芝、富士通、日立と各メーカーがバラバラに開発したパソコンは皆ダメになってしまった。スーパーコンピューターも同じ道を歩むのだろうか? 技術革新のスピードが非常に速いから世界一のものを作っても直ぐに追い抜かれるから無駄だと言うのは技術を知らない人が言うことだ。
NECも日立も業績不振で理研のプロジェクトから撤退した。技術革新競争に遅れを取れば日本の科学技術立国は成り立たなくなりますが、今回の事業仕分けでは科学技術予算がばっさりと切られてしまった。必殺仕分け人の質問に答えられない科学者もだらしがないのですが、国民もある程度の理解がないと話が進まない。
旧社会党は宇宙開発ロケットの開発にも反対してきた経歴がありますが、蓮舫参院議員は旧社会党の亡霊が甦ったようだ。コンピューターにしても今ではあらゆる物に組み込まれて使われていますが、戦争だって兵器にはコンピュータが組み込まれている。ミサイルが飛びかう時代にはスーパーコンピューターの性能が無ければミサイルの迎撃すら出来ないだろう。
蓮舫参院議員が中国のスパイだからではないかと言う意見もありますが、そうだとすればスーパーコンピューターを戦艦大和だという池田信夫氏もアメリカのスパイなのだろうか? 戦艦大和は蒸気タービンエンジンでジーゼルエンジンではなかった。だからアメリカの新鋭戦艦はジーゼルエンジンで速力も速くて航続距離も長かった。だから大和は作られたとたんに旧式化して戦争では使いものにならなかった。当時のエリート海軍技官も蒸気タービンからジーゼルへの時代の流れが読めなかったのだ。