★阿修羅♪ > IT11 > 393.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
欧州から眺めるITトレンド 祝「Ubuntu 9.10」リリース! 直後の英Canonical本社を訪問してきました http://journal.mycom.co.jp/column/eutrend/037/?rt=na 10月29日、Linuxディストリビューション「Ubuntu」の最新版が登場した。"Karmic Koala"こと「Ubuntu 9.10」である。翌日30日、ロンドン・テムズ川沿いの高層ビルMillbank Towerにある英Canonicalのオフィスを訪ねた。今回はCanonicalの本社の様子を紹介したい。 Ubuntuは南アフリカ出身のMark Shuttleworth氏が開始したLinuxディストリビューション。初のバージョンは2004年10月20日にリリースされている。 Canonicalは、Shuttleworth氏がUbuntuの開発母体として設立した企業だ。 2004年といえば、欧州でデスクトップLinuxの機運が高まりはじめたころだ。見出しを飾ったのは、政府系でのLinux採用だ。中でも 2005年、ドイツ・ミュンヘン市がデスクトップLinuxに移行すると発表したことは大きく報じられたので、ご記憶の方もいると思う。知らせを受けた米 MicrosoftのCEO Steve Ballmer氏はスキー旅行を中止してミュンヘン市に出向いたといわれている。 政府系では、ドイツのほか、フランス、スペインと欧州各地でLinuxや「Open Office.org」などのオープンソースアプリケーションの採用がじわじわと進んでいる。だが、コンシューマを含むデスクトップLinux全体となると、当初の期待よりも増加のペースは遅いようだ。現在、デスクトップOS市場に占めるLinuxの割合は1 - 2%といわれている。 世界に約300人いるというCanonical社員のうち、本社には約40人が勤務しているという。だが、30日の昼に訪問したUbuntuのオフィスは、実にがらんとしていた。ランチに出かけたというのではないようだ。案内してくれたJerry Carr氏は、「昨夜のローンチパーティのせいだ」と笑う。 Ubuntuの心臓部となるこのオフィスはMillbank Towerの27階にある。総ガラス張りのオフィスに入ると、まず目に入ってくるのは、ロンドンの街の眺めだ。ビックベンこと国会議事堂は目の前。遠くには、ロンドンの新名物ロンドンアイも見える。ビックベンを時計代わりにしている社員もいるとのことだ。 29日のUbuntu 9.10のローンチは、英国にいるUbuntu社員だけではなく世界各地のUbuntuスタッフやファンが集まり、オンラインではTwitterなどで喜びと感動を共有した。この日、UbuntuはTwitterのトピック第2位にランクされたそうで、スタッフが「キッチン」と呼ぶ休憩室にはスクリーン代わりの壁に、Twitterに入ってくる書き込みがほぼリアルタイム投影されていた。反応は「ものすごくいい」とCarr氏は満足の様子だ。 Karmic Koalaのローンチ成功の理由として、「Desktop、Server、ネットブック用Remixなどに盛り込まれた新機能。中でもDesktopの「Ubuntu One」やServerの「Ubuntu Enterprise Cloud(UEC)」など仮想化機能の強化」とCarr氏はまとめる。もう1つ、Carr氏が挙げたのは「Windows 7」だ。「想定外の大きな追い風となった」とCarr氏。 1週間前に発売となったWindows 7で、OSへの関心が高まった。それは、「これだけの価格を払って新しいOSにアップグレードする必要があるのか」という関心であり、代替としての Ubuntuにスポットが当たっているという。実際、BBCの技術ジャーナリスト Rory Cellan-Jones氏が朝のニュース番組中、Windows 7をデモしつつ、他の選択肢として「Ubuntu」に言及したところ、大きな議論となった。Cellan-Jones氏はこのとき、「無償の代替OS」としてUbuntuを紹介、「熱狂的なファンが構成する小さなコミュニティで開発されている」と形容したためだ。その後、Cellan-Jones氏は BBCのWebサイトで展開する自身のブログで、番組中のコメントで表現に誤りがあったと認めている。 眺めのよいオフィスの隅で、真剣な顔で大きな画面に向かって仕事をしていた人が2人いた。Shuttleworth氏とCTOのMatt Zimmerman氏だ。2人の席はオフィスの島(ブロック)の1つにあり、低めのパーティションを挟んで社員と机を並べている。別室にいるわけでもなければ、独立したスペースを持っているわけでもない。他の社員とまったく変わりない環境だ。だが、静まり返ったオフィスの中でそこだけ空気が違った。 Shuttleworth氏は「慈悲深い独裁者」と自身を形容するが、開発をはじめCanonicalのすべてに関わっており、多くを決断している。あるスタッフによると、1日に1度は話しかけられ、作業中のことを詳しく聞かれることもあれば、意見を求められたり、鋭く批判されることもあるという。「複数のプロジェクトを見ていると、通常は進捗がわからなくなるが、Markはそんなことはない。とにかく頭がいい。あんな切れる人はみたことがない」とこの社員は語った。 実は、Shuttleworth氏のことを最後に書いたのには理由がある。「Ubuntu」「Canonical」というと、 Shuttleworth氏が連想されるが、Shuttleworth氏自身は、メディアの中での自分が、AppleのSteve Jobs氏のような存在になることをよく思っていないのだそうだ。 Shuttleworth氏は起業家で、民間人として初めて月旅行した人としても知られる。Canonicalは黒字転換できていないといわれるが、こと財務となると、Shuttleworth氏は隠すことなく「いまのところ目標ではない」と述べている(Shuttleworth氏は、 Canonicalに万が一のことがあってもUbuntu継続を保証するため、非営利団体としてUbuntu Foundationを設立している)。 Shuttleworth氏はCanonicalで何をしたいのだろうか? 「社会的な富につながるツール作りを支えたいのではないか」とCarr氏は言う。「MarkはUbuntuでエンドツーエンドのプラットフォームを作る。それしか考えていないんじゃないかな」(Carr氏)。それは、静かなオフィスの隅で、ジーンズ姿で熱心に仕事をするShuttleworth氏の姿が最もよく物語っていた。 カルマなコアラ「Ubuntu 9.10」が正式リリース 「Windows 7」vs「Ubuntu 9.10」-- それぞれの長所と短所を比較する |