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地方創生を実らせるのは地域住民の本気を引き出す工夫
単なる補助金バラマキやコピペの地域活性化プランに終わらせるな
2015.4.16(木) 多田 朋孔
地域活性化を外部からの補助金やコンサルに頼るなかれ
「地方創生」の名の下に政府はかなり力を入れて地方への財政的、制度的な支援を行っています。
これは地方に住む筆者としては大いに喜ばしいことではあるのですが、補助金がバラマキになってしまう一因は地方の側にもあると前回の記事でも書きました(『本気で地方創生したいなら「脱・一律」の発想を』)。
何の考えもなしにもらえるお金があると無駄な使い方しかできず、活用しない建物を建ててその後の維持管理に余計な出費や苦労が出てしまう等、かえってマイナスになってしまいます。
宝くじで高額当選した人は当選前よりも不幸になるなどと言われますが、分不相応のお金は人をダメにするのかもしれません。
お金だけではなく、地域活性化のためのプランを考えてもらうことまで外部に依存してコンサルタントを頼む地域もありますが、これもその地域にしっかりとした考えがないと都会のコンサルタントに振り回されて結局あまりうまくいってないという例も少なくなりません。
都会のコンサルタントは他の地域もクライアントとして受け持っている場合が多く、中には金太郎飴のような感じで、ある場所の先進事例をそのまま他の地域にあてはめるということが問題になっているところもあります。
私の住む十日町市でも、中越大震災復興基金の「復興デザイン策定支援事業」という事業で外部のコンサルタントがいろいろな地域の支援を受注したが、その申請書はほとんど使いまわしで中には写真まで特定のものを複数の地域で使いまわしていたという話を伝え聞くほどです。
それでは、今回の「地方創生」をうまく進めるために地方の側に何が求められるのか。それは一言で言えば「地域住民が本気になること」だと考えています。
うまくいかない地域では、行政主導で国と地方自治体間で補助金や政策のやり取りがあっても、地域住民は蚊帳の外になっていて、住民は行政に対して「あんな無駄な税金を使って・・・」と考えるような構図があります。
地域住民が「地方創生」の現場の最前線であり主体のはずなのに、実行することについて全く意見をする機会がなければ他人事になってしまい、うまくいくはずがありません。
「地域の将来ビジョン」をどうまとめるか
私が地域外から来た人間として感じるところは、地域の人たちの中には自分たちの住んでいる地域を良くしたいという思いを持っている人は少なくないということです。このような故郷への愛着は、都会に住む人に比べると地方の人たちの方が強いと思います。
ですが、なかなかそういう思いをみんなで話し合う機会が持たれていないのが現状です。そして、「将来自分達の地域をこんな風にしたい!」ということをそれぞれに語り合い、地域の人々の思いを引き出しながら「地域の将来ビジョン」を一緒に創る場を上手に持つことができると、大きな力になります。
「地域の将来ビジョン」を作る際に注意する点は、以下のとおりです。
(1)その場に参加した人が「自分事」として考える
(2)話を「広げる」段階と「まとめる」段階を分ける
(3)話を「広げる」段階では実現性は二の次にして自由な発想を大事にする
(4)話を「まとめる」段階では実際に取り組むことを意識する
(5)創った「将来ビジョン」はその後も目に触れるところに置いて都度思い出せるようにする
上記のような内容は会社の経営等では教科書的な話かと思いますが、実際に私も今住んでいる池谷集落で実行してみたところ、効果があったのでポイントとして整理してみました。
実例として池谷集落の「地域の将来ビジョン」づくりについて少しご紹介したいと思います。
私は地域おこし協力隊として2010年2月4日に池谷集落に移り住んだのですが、その約1か月後の2010年3月6日〜7日にかけて「5年後を考える会」を行いました。
将来ビジョンを描くワークショップについて、私は前職の時から仕事を通じて携わってきた経験があるので、ファシリテーションを担当したのですが、その時に作った5年後のビジョンが下の写真の絵です。
2010年に実施した「5年後を考える会」の様子(写真提供:筆者、以下同)
この時は3グループに分かれてディスカッションし、あえて3つのグループの意見を1つにまとめるところまではしませんでした。
5年経ち、当時描いた内容の多くが現実となりました。具体的には次のとおりです。
●分校の体育館を多目的ホールにする(2010年度に体育館を改修)
●村全体を法人化(2012年度にNPO法人化し、元々の集落の方は希望する人全員が理事になっています)
●海外からも人が来る
●米は全部直販(お米は個人への直販とお米屋さんへの直接出荷のみで農協には一部付き合いで出している農家以外は出してません)
●集落営農(2014年度から作業委託実施。農業参入が完了したので2015年度からNPO法人名義で土地を正式に借りる予定)
●加工品開発(加工所は作ってませんが2014年度から委託加工で白がゆ・山菜ご飯の素、野菜がゆを商品化)
●若い人の住宅(現在建設中)
当然、これらを実現する上では色々な苦労や困難もあり、必ずしも「地域の将来ビジョン」を作ったからこれらのことが実現したというわけではありません。
ですが、「地域の将来ビジョン」を作ったことで、私は池谷集落の人たちが目指したい方向がある程度わかりましたし、地域おこし協力隊の3年間、どういう動き方をするべきかということが判断しやすくなりました。
なので、多くのプランが絵に描いた餅で終わるのではなく、実現させることができたのだと思います。
自発的に上がった将来ビジョンを考えようという声
池谷集落の3年後(2018年)のビジョン
2015年の今、2010年に5年後を考える会を開いてから5年が経ちました。
すると、「また3年後を考える会を開こうじゃないか!」とのリクエストを池谷集落の方々からいただきました。
この話を聞いたある地域活性化の専門の方は、「地域の人たちから3年後を考える会を開いてほしいと言われる集落なんて聞いたことがないですよ」と驚いていました。
今回5年後ではなく、3年後になった理由は、集落の方々の年齢がご高齢(80代前後)の方が多く、あと5年先は自分自身がどうなっているかわからないが3年ぐらいは頑張れるという理由でした(個人的には100歳まで生きてもらえばまだ20年近くあると思っていますが)。
そこで3月28日に私が住んでいる池谷集落の3年後を考える会を行いました。
今回、将来ビジョンを考える際に感じたこととして、「ライスセンターを作りたい」等といったハード面の話はわかりやすいのですが、そういった取組みの土台となるソフト面のちょっとした意見がもっと重要なのだと実感しました。
池谷集落の3年後を考える会に集まった人たち 意見を出し合い模造紙にまとめる
例えば、今回個人的に一番秀逸な意見だったと思うのは、「農繁期は集落で一緒にお昼を食べる」という意見です。
実はこれまで、各家庭でバラバラにご飯を食べていましたが(これは普通だと思いますが)、農繁期だけでも一緒に集まってお昼を食べることでちょっとしたコミュニケーションがとりやすくなり、それによって一体感がさらに増し、創発的なアイデアも出やすくなると期待できます。
写真上:懇親会でさらに話が盛り上がる。写真下:対話の場が地元住民の本気度をアップさせる
こういった意見は現場の人たちが考えるからこそ出てくる意見だと思います。また、この会の後に集落の皆で飲みながら色々と話をしたのもかなり盛り上がりました。
こういう場を持って対話をすること自体が地域住民の本気度を上げることに直結すると改めて実感しました。
今後、今回の3年後のビジョンも集会場に掲示し、常に集落の方々が意識できるようにしつつ、実現に向けて責任感を持って取り組みたいと思います。また3年後どうなっているのかが楽しみです。
繰り返しになりますが、「地方創生」においては、お金を出したり制度を作る国の努力も必要ですが、地方の側がそれらのお金や制度を有効活用できるような状況になっていなければなりません。
そのためにも地方では「地域住民の魂の入った地域の将来ビジョン」を対話を通じて作り、共有することが重要だと思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43459
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