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[真相深層]成田存続ルール はや綻び
羽田の国際線拡充でジレンマ ロンドン便減、行政に見直し迫る
国土交通省が航空業界に求める「成田縛り」という暗黙のルールに早くも綻びが生じている。羽田空港に国際線を就航した場合、同じ国へ向かう成田発着便を残すよう求めた行政指導に反して、路線撤退や縮小を模索する動きが止まらない。成田路線の存続をねらう国交省のもくろみは崩れ、航空行政は見直しを迫られている。
英当局から書簡
9月上旬、英国の航空当局から国交省へ届いた1通の書簡が大きな波紋を広げた。「no longer be allowed」(これ以上の運航は認められない)――。全日本空輸が3月に就航した羽田―ロンドン線を問題視し、路線認可の取り消しをちらつかせる内容だったからだ。
就航から約半年。ようやく定着してきた路線が標的になったのはなぜか。それは航空会社に成田路線の維持を求める国交省の思惑と、来年1月末に成田―ロンドン線から撤退する英ヴァージン・アトランティック航空の決定が関係している。
羽田空港では3月、国際線の発着枠が年6万回から9万回に増えた。深夜・早朝の時間帯に限られていた欧州便は昼間の時間帯でも運航できるようになった。日本航空の2倍以上となる発着枠を獲得した全日空はロンドンやパリなどドル箱路線の拡充で攻勢に出た。
都心に近い羽田の利便性が増せば成田発着便の利用客が離れる。一計を案じた国交省は今春から羽田の昼間時間帯に欧州便やアジア便を新設した場合、同じ国へ飛ぶ成田路線を維持するよう就航国と航空会社に求めた。
縛りには航空法での裏付けはなく、法的拘束力はない。それでも許認可権限を握る国交省が路線維持を強く求めたため、航空関係者は「半ば義務づけられた暗黙のルール」と受け止めている。
問題の発端は全日空の羽田―ロンドン線就航にある。同社は同時に成田―ロンドン線を運休したが、共同運航のヴァージン航空が成田―ロンドン線を維持したため、成田縛りには触れなかった。
だがヴァージン航空が路線廃止に転じたため、成田縛りに従えば全日空は羽田―ロンドン線を運航できなくなるはず。かねて国交省の運用を疑問視してきた英当局は「全日空の収益路線を盾に縛りの解除を求めてきた」(国交省幹部)のだ。
航空会社に不満
表だって声を上げない航空会社も不満を募らせている。成田路線を残しながら羽田の増枠で提供座席が増えれば、競争力に劣る成田発着便の採算は悪化するからだ。
東京(羽田・成田)―パリ線は2月まで1日5便だったが3月以降は7便まで増えた。利用者の選択肢は広がったが、ある専門家は大手航空会社の赤字額を年間数十億円と試算。搭乗率が50%台で低迷する会社もある。
ヴァージン航空が撤退を決めたのも厳しい収支状況が一因とされ、関係者は「これ以外にも水面下で成田発着便の減便や撤退を模索する動きがある」と打ち明ける。
ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は羽田の発着枠を1日1便余らせている。権利を行使すれば成田―ロンドン線の存続を求められ、経営の手足を縛られるからだ。日本大学の加藤一誠教授は「国民の財産ともいえる発着枠が使われないのは利用者利便の観点から問題だ」と指摘する。
縛りを見直すにしても難題が残る。歯止めがなくなればBAは成田―ロンドン線を羽田へ移す可能性があり、ロンドンに飛ぶ成田発着便がなくなってしまう。地元議員や周辺自治体の反発を招くのは必至で、国交省は難しい立場に立たされる。
さらに国交省は2020年の東京五輪までに羽田の発着枠を年4万回弱増やす方針だ。五輪後には5本目となる滑走路の新設計画も動き出す。「羽田=国内線」「成田=国際線」という垣根は一層低くなる。
「首都圏の需要は羽田だけではさばききれない」。国交省幹部は強調するが、国際化が進む羽田を前に成田はどんな役割を担うのか。航空行政は根本的な問いを突きつけられている。
(渡辺淳)
[日経新聞10月2日朝刊P.2]
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