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1月4日11時38分配信 Business Media 誠
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100104-00000012-zdn_mkt-bus_all
ケーブルカーの多くは山の中にある。だからケーブルカーに乗ることは、四季折々の風景や眺望が約束されたも同然だ。ケーブルカーと聞いただけでワクワクする。
丹沢山系の大山にあるケーブルカーからは、相模湾を見下ろせる。紅葉の時期は沿線の名所でライトアップも実施され、遠くに夜景も楽しめる。東京都心から電車とバスで1時間半の近さだが、時間に余裕を持って出かけたい。なぜなら……?
●ケーブルカーを楽しむなら、足腰が元気なうちに!
東京・新宿から小田急の快速急行で54分の伊勢原駅。南口は大型ショッピングセンターもあって都会的だが、北口はのどかな雰囲気だ。
ここから神奈川中央バス「大山ケーブル行」に揺られること約30分、バスの終点はもう丹沢大山国定公園の中だ。大山には登山客もたくさん訪れるが、ケーブルカーで眺望を楽しむのが目的なら、昼過ぎに到着するつもりでのんびり出かけてもいい。今回は夕暮れ時を狙ったので、都心で昼食をとってから出かけた。
大山ケーブルカーで出かけるにあたって、注意をいくつか。女性はハイヒールやサンダルではなく、スニーカーなど歩きやすい靴を履くこと。登山靴までは不要だが、かなり歩くことになる。もう1つ。足腰が元気なときに行こう。登山しなくても眺望の良いところへ連れて行ってくれるのがケーブルカーだが、大山ケーブルの場合はそうでもない。ケーブルカーに乗るまでが大変なのだ。
なにしろ「大山ケーブル」バス停から「大山ケーブル駅」までは約550メートルの上り坂。坂というより、ほとんどが階段になっている。ここは「こま参道」と呼ばれており、沿道にはお土産屋さんや豆腐料理の店が並んでいる。ケーブルカーを目指して直行すると息が切れる。沿道のお店を冷やかしながら、のんびり歩くといい。上りのお客に商品を勧める店員さんはいない。荷物が多いと大変だと知っているからだ。「帰りに寄っていってね」と笑顔で見送られつつ駅へ向かった。
大山は標高1251.7m。別名を雨降り山と言って、地元の農民からは雨乞いの神様とされていたそうである。大山は関東平野から西側にあり、昔も今も天候は西から変わっていく。つまり、大山が雨雲に隠れたら降雨の前兆となるわけだ。山頂からは縄文時代の祭事用の土器が出土しているという。その後、山頂には阿夫利神社が造られた。阿夫利の名は雨降りが転じたとのこと。祭神は山の神様「大山祗大神(おおやまづみのかみ)」と、「大雷神(おおいかづちのかみ)」「高オカミノ神(たかおがみのかみ)」。「大山祗大神」はイザナギとイザナミの子だという。「大山祗大神」は軍神でもあったそうで、鎌倉幕府の源頼朝をはじめ、多くの武将が信仰したという。「大雷神」は天狗の姿という話もある。
これら3体の神様が揃って、人々の海の幸、山の幸を生み出し、商売にも御利益があるとされた。江戸時代には、大山詣では庶民の信仰と娯楽の対象となって、関東各地に大山詣でをするための組織「大山講」が形成されていく。江戸時代から明治にかけて、関東の庶民にはメジャーな観光地だったというわけだ。古典落語に「大山詣り」という演目がある。大山は博打にも御利益があるとして、暢気な庶民が遊山に行くという噺(はなし)だ。CDを買うなら五代目古今亭志ん生がオススメ。当時の貨幣価値や断髪の重大さを独自に補足した名作と言われている。
●なんと29年も運休していたケーブルカー
庶民に大人気の大山詣でのために、道中を楽にしようと建設された鉄道がケーブルカーだった。開業は1931(昭和6)年で、当時は大山鋼索鉄道という会社が運行していた。ところが開業から13年目に国から廃止を命じられてしまう。第二次世界大戦が始まり、不急不要線と認定されたからだ。「大山祗大神」は軍神でもあったはずだが、江戸時代から続いてきた娯楽色がいけなかったらしい。現在のケーブルカーは廃止から29年後の1965(昭和40)年に復活した。高度経済成長によって企業の慰安旅行が増えた時期である。
運営会社の大山観光電鉄は小田急電鉄の系列で、バスの神奈川中央交通も出資している。そんな経緯からか、小田急では「丹沢・大山フリーパス」を販売している。AキップとBキップの2種類があって、小田急線と神奈川中央バスの一部区間と大山ケーブルが乗り放題となる。AキップとBキップの違いは大山ケーブルが含まれるか否か。Aキップなら大山ケーブルも乗り放題だ。小田急線各駅からの往復運賃もセットになっていて、新宿からのAキップは2140円だ。
大山ケーブルは路線距離800メートル、高低差は278メートル。大山ケーブル駅を出たケーブルカーは、トンネルを通り抜けてカーブした線路を行く。曲線区間のケーブルの誘導というと難しい技術のような気がするけれど、しっかりした足取りでグイグイ上る。ケーブルカーのすれ違い地点は駅になっている。大山寺駅といい、その名の通り大山寺の最寄り駅だ。
大山寺の次が終点の阿夫利神社駅。大山ケーブル駅から阿夫利神社駅までの所要時間は約6分だ。山を登っていく気分で上を見ても楽しいが、下を見ながら登ると、手前の森の向こうに相模湾の風景が広がっていく。この動きはとても立体的で、自分が高みに上っていくんだ、と実感させてくれる。
●日の短い時期なら夜景も楽しめる
大山ケーブルカーの駅は2008年10月に改名された。かつてはふもとが「追分」駅、途中駅が「不動前」駅、上の駅が「下社」駅だった。今の駅名はとても分かりやすいけれど、昔の駅名もいい雰囲気だ。ちなみに下社駅の由来は、この駅付近の神社が阿夫利神社の下社だから。阿夫利神社は大山の山頂に本社があって、ケーブルカーの駅付近に下社がある。下社から本社までは登山道で、所要時間の目安は90分とのこと。さすがにそこまでは遠慮申し上げて、下社でお参りして景色を楽しむとしよう。秋は下社の紅葉も見事だ。そして境内からは遠く相模湾を一望できる。江ノ島や鎌倉が見えるから、なるほど、源頼朝が信仰したわけであると納得。晴れて空気が澄んでいれば、東京の高層ビル群も見えるという。
大山ケーブルカーの最終便は、上下とも平日が16:30発、休日が17:00発。神奈川県は10月中旬から1月中旬まで、日没が17:00以前になる。この時期に行くと、昼間の眺望と夕刻からの夜景を眺められるはず。また、紅葉がピークを迎える頃は、大山神社と大山阿夫利神社の紅葉もライトアップされる。この時期は大山ケーブルカーも夜間延長運転を実施するほか、小田急電鉄も週末に臨時特急を走らせる。2009年は11月21日から29日だった。今年のカレンダーを入手したら、11月半ば頃に「大山観光電鉄の紅葉情報をチェック」とメモしておこう。
なお、大山ケーブルカーは大晦日から元旦にかけては深夜運行を実施する。この日は阿夫利神社への初詣と初日の出を見る人で賑わうそうだ。
【杉山淳一】
●今回の電車賃
大山ケーブル:大山ケーブル駅〜阿夫利神社駅 片道は450円、往復は850円。大山寺駅で途中下車可。
神奈川中央バス:伊勢原駅〜大山ケーブル駅 片道300円。
小田急「丹沢・大山フリーパス Aキップ」を使うと、丹沢周辺の神奈川中央バス、小田急線本厚木〜渋沢間、大山ケーブルが乗り放題になる。
小田急線各駅からの往復きっぷもセット。新宿から2140円、町田から1710円、藤沢から1970円。2日間有効なので、近隣の温泉宿泊と組み合わせて使える。