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ノバルティス事件「高血圧村」の生態と罪に地検のメスが入らない理由
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39175
2014年05月08日(木) 伊藤 博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス
東京地検特捜部が、2月19日と20日の両日、薬事法違反(誇大広告)で家宅捜索を行ったノバルティス事件は、押収した資料の分析などを経て、ゴールデン・ウィーク明け後から捜査を本格化、関係者の事情聴取を始める見通しとなった。
■地検特捜部の捜査はまたしても立件に「慎重」
世界有数の製薬会社・ノバルティスファーマは、降圧剤ディオバンの臨床試験販売に際し、データを改ざん、それをもとにした論文で「他の降圧剤より、脳卒中や狭心症を防ぐ効果が高い」と、「偽りの効果」を謳った疑いがかけられている。
既に、臨床試験を行った5大学のうち4大学までがデータ改ざんの事実を認めて謝罪した。データ操作に関わっていたノバルティスの元社員(事件発覚後の昨年5月に退任)が、身分を隠して「大阪市立大学非常勤講師」の肩書で試験に参加したことも判明。立件は容易に思われるが、実際のところハードルは高いという。
まず、当該の元社員が、データ改ざんの事実を否定、「アドバイスをしていただけ」と、主張していること。また、たとえ意図的なデータ操作が立証できても、元社員やその上層部と広告担当部署との“共謀”に踏み込むのが難しい。
薬事法違反の誇大広告は2年以下の懲役か200万円以下の罰金。法人を罰する「両罰規定」も設けられているが、適用には個人(社員)の立件が前提で、報道の盛り上がりに比べて捜査現場は慎重だという。
それでも、ノバルティス事件が提起した問題は大きく、事件の行方はともかく、事件を引き起こした「腐敗の構図」は、徹底解明のうえで改革すべきだろう。
■高血圧学会ぐるみの構造的癒着
事件の病巣は、「降圧」という血液を下げることを目的にしたクスリを製造する製薬会社と、その販売促進に協力する大学医学部(研究者)との癒着にある。
しかも、それはディオバンの臨床試験を行った東京慈恵会医大、京都府立医大などとノバルティス、といった個別の関係ではなく、製薬会社と、大学医学部の医局を率いる有力教授が所属する日本高血圧学会との構造的癒着関係といっていい。
年間売上高1000億円を超えるメガヒット商品のディオバンだけに、ノバルティスは医師向け医療・医学雑誌などに、対談形式で記事と見紛う構成のディオバン推奨広告を打ち続けた。
そこに登場するのは、日本高血圧学会の理事長や理事、そして高血圧ガイドラインの作成委員たち。彼らが、口を揃えてディオバンを推奨するのだから売り上げにも拍車がかかった。
もちろん学会にも、臨床研究適正評価教育機構の桑島巌理事長のように、問題発覚前からディオバン臨床試験の信ぴょう性について問題提起していた医師はいるが少数派。大半は、製薬会社と運命共同体となって果実を受け取ってきた。
彼らは概ね、大学医学部医局の頂点にいて権力を持ち、人事を握って医局員を掌握、医師の派遣などを通じて傘下病院を支配する。製薬会社は、その権力に擦り寄り、潤沢な奨学寄付金を与えて関係を強固にし、臨床試験の結果、販売促進に有利な論文を期待する。
それがノバルティス事件の深層で、データ解析をノバルティス社員に依頼、そのためにデータが歪められ、不正論文が生まれ、誇大広告につながったというのは、結果論に過ぎない。
■循環器系のエース医師が率いる千葉大は「抵抗」
今回、薬事法違反の捜査なので、大学教授や研究者たちの罪が問われることはないが、製薬会社と教授らは共通認識のもとで売れるクスリを作り、教授らは表の奨学寄付金の他に、講演料、論文執筆料、座談会出席料、お車代など様々な名目で金銭を受け取り、日常の接待供応も受けているのだから、贈収賄罪を疑ってもおかしなかった。
そうならなかったのは、京都府立医大、千葉大など4大学が準公務員の国公立大学で罪に問えるものの、東京慈恵会医大という私大が含まれ、国公立大だけの摘発は「公平性を欠く」という検察の判断からだった。
犯罪の重さがわかっているだけに、ノバルティス事件は高血圧村に衝撃をもたらした。彼らは、問題の波及を恐れ、沈静化に務めた。千葉大の攻防がそれを物語る。
千葉大医学部でディオバンの臨床試験を行った時、研究責任者を務めたのは、現在、東京大学で循環器系の教授を務め、医局を率いる小室一成氏である。東大医学部出身で、自他ともに認める循環器系のエース。
ディオバン問題が発覚した時、日本高血圧学会の「臨床試験に関わる第三者委員会」は、「未だ細部は確認中」といった注釈をつけながらも、「(千葉大の臨床試験に)特段の不正なデータ操作は見つかっていない」と、発表した。
いかにも拙速だった。記者会見を開いての発表は7月1日だったが、その後、京都府立医大、東京慈恵会医大、滋賀医大が、相次いでデータ操作を公表、謝罪した。が、千葉大はそれでも見解を変えなかった。昨年12月17日、「意図的なデータ操作はなかった」とする中間報告を発表している。
■国民の健康を人質に儲ける癒着への罰則は強化せよ!
しかし、今年に入って厚労省がノバルティスを刑事告発、それを受けて報道が過熱。さらに、ノバルティスに白血病治療薬のデータ改ざん、武田薬品の降圧剤に関する不正論文も指摘されるなどデータ改ざん、論文不正の横行が判明。その上、3月末、千葉大が依頼していた第三者機関が、「多くのデータ不一致があり不適切」と報告、万事休した。
輪をかけるように、4月中旬、研究チームの医師のひとりが、「データをノバルティス元社員に丸投げした」と告白。千葉大は、4月25日、謝罪会見を行い、論文撤回を公言。高血圧村のエース・小室東大教授の経歴に大きな傷がついた。
もちろん医師のメンツなどどうでもいい。問われているのは、製薬会社と大学医学部が、結託して成人病患者を増やし、偽りの効能を謳って、高額のクスリを売りつける癒着の構造である。
打つべきは、誇大広告の背後にある構造であり、その構造を改めないなら、国民の健康を犠牲にしているという意味で、両者には誇大広告にとどまらない、もっと大きな罰則が必要なのである。
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